ブラックは銀さんとブルーが持って来た書類を確認していた。やってもやっても一向に減らない書類の山。デスクの上は書類だらけでかろうじてパソコンが置けるだけのスペースは確保しているが、逆にほんとそれだけのスペースしか確保出来ていない。
「はぁ……」
溜息を吐いてコーヒーを飲む。ホットで淹れたのだがもうとっくに冷めてしまっていた。
(……終わりませんね……)
もはや何徹目かも分からない。日付からは目を逸らして再び書類と向き合った。
「進まねぇ……」
レッドが自室で大量の書類を前に撃沈していた。それだけすまない先生がやっていた書類が多いと言う事でもあるのだが。
「兄貴、サボんなよ。“あの計画”は全員の書類が終わらないと出来ねえんだよ!」
「……ブラックが壊れるまでに終わらせられる自信あるか?」
レッドがジト目でブルーのデスクにある書類の山を見る。
「出来るか出来ないかじゃなくてやるんだよ」
「へいへい……」
レッドは再び書類と向き合う。
(“あの計画”俺は反対なんだけどな……)
もちろん口が裂けても言えないが。
カリカリカリ……カチッ
「ふぅー……やっとひと段落ついたー」
風夜がペンを置く。
「とりあえずブラックに渡すかぁ……」
寝不足でふらつきつつも書類を抱えてブラックの籠る、情報管制室に向かう。
コンコンコン。
「ブラック、入るよー?」
返事を待たずに部屋に入る。
「やほ、ブラック」
ブラックのデスクを埋め尽くす書類を見て見ぬフリをして声を掛ける。
「風夜ですか。何の用です?」
「書類」
と答える。ブラックは顔を顰めつつも
「ありがとうございます」
と言って受け取った。風夜はヒラヒラと手を振りながら部屋を出た。
「そういえばブルー君達から切れ味上昇のエンチャントを人数分作って欲しいって言われたんだけど……」
ふと“あの計画”の事が頭をよぎる。
「……まさか、ね……」
風夜はその考えを頭を振って追い払った。
自分はエンチャント術師だ。
任された仕事をするだけ。
そのエンチャントが何に使われるなんてどうでも良いし、知る必要も無い。
「こっちも忙しいんたけどな」
風夜はぐっと伸びをして再び書類とにらめっこを始めた。
「……こんな事に使う事になるなんてな……」
建国した時にみんなでおそろいで買った綺麗な装飾が施された短剣。柄の部分にはそれぞれのメンバーで違う宝石がはまっている。銀さんのそれにはダイヤモンドだ。
「思い出の品なのに……」
刃が蛍光灯の光を反射して怪しく光る。
「“血で染めるなんてな”」
その声が、重く、冷たく、床に落ちた。
コメント
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やばぁ! この小説、どうなっちゃうの〜!? ほんと、表現力も神だし、やっぱ天才☆ これからも、頑張れ!
やっぱ語彙力神だ~!! 風夜さんの書く小説好きだよ(*^.^*)