第3話
(頭が痛い)
そう思いながら、目を開けた。 目の前には知らない天井が広がっている。
(ここどこだっけ?)
何があったのか、眠ってしまう前の記憶を思い出そうとした。
(っ、確かあの時ハンカチを押さえつけられて。)
思い出して、私は血の気が引いた。
(もしかしてあの人の家?)
私は恐る恐る体を起こした。男性の姿は見えなかったが、このオシャレで、こんな状況じゃなきゃずっといたくなるような部屋は、おそらくあの男性の部屋だろう。
(とにかく、ここがどこか知りたい)
そう思い、私はベットの横にある窓の外を見ようとした。その時、
「おはよう。起きた?」
私は、また血の気が引いた。
ゆっくり振り返るとそこには、私の腕をひき、ハンカチを押さえつけた男性がいた。
「ひっ、こないで!!」
「おやおや、そんなに怖がらなくてもいいのに。」
そう言って、私の方に来ようとしている。
私は必死に、できる限り壁に体を近づけて言った。
「あなた、誰?」
「ん?まだ、言ってなかったっけ?
僕はね、西羅四郎。244(にしし)って呼んで良いよ。」
「244さん………」
(244………どこかで聞いた事あるような………)
でも、思い出せない。
244さんは、ベットに右膝を乗せた 。私と244さんの距離が近くなる。
「ひっ、嫌、嫌!!」
怯える私を見ながらも、244さんは笑っている。そして、私の頬に手をあてた。
「うん。やっぱり可愛いね。」
そう言って、244さんは私の瞼に軽く唇をあてた。
一瞬のことで、何が起きたのか理解に苦しんだ。だけど、理解したとたん私の顔は真っ赤になった。
(やだっ、もしかして今キスされた?)
「ふふっ」
244さんはベットから離れて扉に向かった。
「お腹空いたでしょ?夕食を用意したんだ。リビングにおいでよ。」
私たちがデパートを出た時はまだ、明るかったのに、今窓の外は真っ暗だ。部屋にあった時計を見ると、20:10となっていた。
時間を把握したとたんお腹が空いてきた。何か食べたい。
(………でも、この人のご飯を食べるのは………危なそうだし。)
私が悩んでいると、
「どうしたの?来ないの?」
「は、はい!行きます。」
(クソっ、あまりに怖い剣幕で言うから、つい口走ってしまった。)
自分で自分のことを呪いながら、私は244さんについて行った。
リビングについて、テーブルの上にある食事を見て驚いた。
(ご、豪華すぎる。今までこんな豪華な食事見たことない………)
私が驚いていると、244さんが椅子を引いてくれた。
「どうぞ」
「は、はあ。ありがとうございます。」
そう言って、大人しく座った。今、恐ろしく怖い状況で私の心臓はドクドクしている。こんな状況で喉に食事が通るだろうか。 そんなことを考えていたら、244さんも私の前に席に座った。
「どうぞ、お食べください。」
244さんはニコッと笑った。
「ははは、いただきます………」
正直、すごく怖い。もしかしたら食事に毒でも入っているんじゃないだろうか。そんなことを考えていた。実際、244さんも食事に手をつけずに私の方をじっと見ている。でも、いまさら食べないなんてことをしたら、どんな怖い目に会うか………
(しかたない。いけ!食べるのよ杏奈!)
そう思い、目の前にあった肉のソテー?をフォークで口に入れた。
「お、美味しい………」
素直な感想だった。本当に美味しかった。
「そう、それは良かった。」
そう言って244さんも食べだした。
食事を進めながら、私は言った。
「あの、244さん」
「ん?何だい?何かあった?」
いやいや、この状況聞きたいことしかないだろう。
「あの、ここは244さんのおうち?」
「そうだよ。」
「あの、なんで私をここに連れてきたの?」
244さんは人参を口に入れて、しばらくして言った。
「さっきも言っただろう。君が可愛いかったからさ。」
「いや、それだけで、連れて帰る人なんて居ないでしょう。」
「えっ?そうなの?」
244さんは本当に驚いたのか驚いていないのか分からない顔をしている。
「はい。普通は………」
「ふふ。そうだね。じゃあ、僕は普通じゃないんだろう。」
(いや、当たり前やないかい!知っとるは!
)
危ない危ない、本当にツッコミそうだった。
「あの、いつ帰っていいんでしょうか?」
ピクっと244さんが反応した。
「いつね………君は帰れると思う?」
「………いえ、思いません。」
正直な気持ちだった。正直に帰れると思っていない。
「ふふ、正解。帰すつもりは無いよ。」
「………でも、母やえり、友達が探していると思います。もしかしたら、警察に連絡しているかも。」
少し脅したつもりだった。244さんがどんな反応をするのか知りたかった。
「警察ね、動いているかもね。もしかしたら、みんなで君のことを探し回っているかも。」
244さんは表情を崩すことなく言った。
「そうしたら、困るのは244さんですよ?
捕まっちゃいますから。」
「安心して、それだけはないから。」
そう言いきった、
(いや、安心出来るかいな!!)
危ない危ない、また、ツッコんでしまいそうだった。
「杏奈ちゃんが欲しい物は何でも買ってあげるから、言ってね。これから、ここで暮らすことになるのに、杏奈ちゃんのものはまだ何も無いからさ。」
「ははっ………って、何で私の名前を??」
「月島杏奈ちゃんでしょ?そして、さっきのお友達は松島絵梨花ちゃん。君のお母さんは、月島美由紀さん。お父さんは宮崎辰次さんでも、ご両親離婚してるから、一緒に住んでなんよね、それから………」
それから、祖父母の名前、両親の職業、私が通っている高校などなど、色々私の個人情報を言ってきた。ここにきて、ようやく思った。もしかしたら、この人は裏社会の人かもしれない。
(ヤクザとか?まさかね。)
食事を終えて、244さんがお風呂に入るように言った。正直入りたくなかったが、臭いままではいやなので、入ることにした。
244さんの家のお風呂は広かった。お借りしたシャンプーやリンスは高級そうで、石鹸すらも高級品に見えた。浴場はまるで泳げそうなほど広くて、足を真っ直ぐに伸ばしてはいった。
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