ーープシュッ。
缶チューハイを開ける音が、若井の部屋の静けさを破った。
「ん〜っ、やっぱり風呂上がりの一杯は最高だな。」
Tシャツに短パン、すっかりくつろいだ若井がリモコンを操作すると、テレビには深夜のバラエティ番組が映し出される。
酔った芸人たちがローションまみれの床で転げ回り、派手に滑っては大げさに転ぶ姿に、思わず大森も吹き出した。
「ははっ!なにこれ!動きおかしいでしょ!」
「だよな、もう漫画みたいじゃん。」
2人で缶を片手に声を上げて笑い転げる。
けれど次の瞬間、大森は画面に釘付けになった。
芸人の背中が豪快に滑り落ち、ローションで床がつるつると光っている。
「なぁ……ローションって、そんなにぬるぬるするもん?」
無意識に出た疑問。
言った後で自分でも変なこと聞いたなと苦笑する。
ところが隣の若井は、妙に落ち着いた声で答えた。
「……ああ。するぞ。丁度あるし。」
「……は?」
大森は缶を持ったまま振り返る。
「なんでそんなもん持ってんだよ!」
声を上げてツッコむと、若井はにやりと片方の口角を上げた。
「はは、気にすんな。ただ……色々使い道あるからな。」
「色々って……はぁ!?お前さぁ……家で何してんだよ。」
意味深な言葉。
笑おうとしたのに、声が震れてしまった。
若井の視線は妙に熱を帯びていて、冗談に見えない。
アルコールで頬が赤いのか、視線が絡んだせいで火照っているのか、自分でも分からない。
心臓が跳ねる音だけがやけに鮮明に響く。
「……な、何その顔。」
「どんな顔に見える?」
若井がゆっくり近づいてくる。
ソファの上、缶を置いた大森の手に彼の指先が触れた。
指が重なった瞬間、全身がぴくりと震える。
「酒のせいで赤いんじゃねぇのか?」
「ち、違っ……」
言いかけた唇を、若井の吐息がさらっていく。触れるか触れないかの距離で、唇が止まった。
「元貴……試してみるか?」
低い囁きに背筋が熱を帯びる。
気づけば、若井の手には無色透明のボトル。
中の液体が光に揺れ、ゆらりと艶めいている。
「や、やめろよ……冗談だろ?」
「……冗談に聞こえるか?」
睨もうとした視線が、真剣な瞳に射抜かれて動けなくなる。
部屋の空気はさっきまでの笑い声なんて跡形もなく、背徳と期待に塗り替えられていた。
そして次の瞬間。
ボトルの蓋が開き、とろりとした液体が若井の掌に落ちる音がした。
コメント
2件
次回が楽しみすぎる〜!! なんか若井がローション持ってるよって行った時に謎に指輪外れなくなったんかな?って思ったw ぜったい違うのにww大森くんが無意識に若井に聞いたのも謎にかわいい((o(。・ω・。)o))