玄関のドアが開く音で僕は目覚めた。
いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。おかえり、と一言声をかけ、桃くんの様子を伺う。
桃くんはただいま、と小さな声で返事をして、手を洗いに行ってしまった。
仕方なくテレビをつけ、ニュースを見てみる。明日の天気は晴れか。このアナウンサー可愛いな、などとどうでも良いことを考えていると、次のニュースへ移った。
通り魔について。今まで、そんなにニュースを真面目に見る方では無かったが、そのニュースだけは、なぜか興味を持った。通り魔は家の近くにいるらしい。
「青。気をつけろよ。」
後ろを振り返ると、とっくに手を洗い終わった桃くんが立っていた。わかった、と小さな声で返事をして、慌ててご飯の準備をする。
準備をしながら、桃くんの言った言葉が再生された。
「青。気をつけろよ。」
そんなこと、言われなくたって僕でもできる。
バカにされていることを再確認した僕は、少しイライラしながらご飯をよそい、ドン、と音を立てて茶碗をテーブルに置く。
ありがとな、と言ってくれたが、イライラは治らなかった。心を落ち着かせるためにお茶を持ってきて椅子に座る。
ご飯の時間だけは、二人が向き合える。いただきます、とふてくされた声で言うと、桃くんもいただきます、と小さな声で言い、食べ始めた。
しばらく無言で食べていたけど、なんとなく気まずくなり、ねえ、と一言だけ発してみた。
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