テラーノベル
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教科書が戻って来て、二宮くんに教科書を見せてもらうことは当然なくなった。
元の席に戻るのかなと思っていたが、二宮くんは相変わらず私の隣に座っている。
きっと、私を嫌う女子を私の隣に戻すことを懸念したのだろう。二宮くんだって、私のこと嫌いなくせに。
『何やってんだろ』と後悔しながらも、根が優しい二宮くんは、どうしても私を見放すことが出来なかったのだろう。
だけど、会話は格段に減った。そもそもそんなに仲良くお喋りする間柄ではなかったけれど、【教科書を見せてもらう】という、二宮くんの傍にいられる大義名分がなくなった今、お互いがお互いに用事がないのだ。
このまま、二宮くんとの会話減少に比例して、私の恋心も擦り減って消滅する様願う。
———–恋心は嵩を減らすことなく、時間は流れて。気が付けば、文化祭の時期になっていた。
催し物を何にするのかでクラスは盛り上がっているのに、当然私はその中には入って行けない。
自分のクラスのことなのに、ただただその様子を自分の席で頬杖をつきながら傍観していた。
多数決で決まったのはメイドカフェ。結果、ありきたりな感じで落ち着いた、ウチのクラス。男子も女子もミニスカートを履いて接客するらしい。……二宮くんもミニ履くんだ。それは、ちょっと見てみたい。
催し物が決まると、次はタイムテーブルを決め出すクラスメイトたち。
誰がどの時間帯を持ちまわるのか。『この時間は彼氏といたい』『この時間帯は彼女のクラスに行くから無理だ』等、案外簡単に決まらない様子。
やっと決まったタイムテーブルを見に行くと、私の名前が書かれていなかった。私は、このクラスの人間ではないということなのだろう。
「ねぇ、冴木の名前、ドコにもなくね?」
二宮くんも気付いた様で、タイムテーブルが書かれた紙を持って私に話しかけてきた。
「……そうだね」
「オイ。ちょっ……」
クラス委員に向かって挙げかけた二宮くんの腕を、慌てて引っ張り下げた。
「何だよ」
『何邪魔してんだよ』とでも言いたげな視線を私に向ける二宮くん。
「イヤイヤイヤイヤ。そっちこそ何なんだよ。手を挙げて何を発言しようとしたの?」
「いくら何でもコレはないだろ。学校行事をハブるっておかしいだろうが」
二宮くんの『やっぱりね』な返事に苦笑いが零れる。 安定してるな、二宮くん。安定の真面目さと優しさ。
「別にいいんだって。どうしても参加したいってわけじゃないし。私がいない方がみんなが楽しめるなら、その方がいいと思うし。私だって、シカトされてる状態で文化祭なんかとても楽しめないし。これでいいの。だから、二宮くんの優しさはちょっとお節介かも。……でも、アリガトネ。気付いてくれて」
数少ない二宮くんとの会話の内容が、こんな悲しい話題というのが、何とも切ない。
「冴木、文化祭来ないつもり?」
二宮くんが、可哀想なコでも見る様な淋しげな目で私を見た。
「行くよ。二宮くんがミニ履いてる姿見たいし、二宮弟のクラスも覗いてみたいし」
「弟のクラスにも行くんだ」
「ヤリマンだからね」
二宮くんの口から言われる前に、自ら言ってしまう。 二宮弟のクラスに行っても行かなくても、どうせ私は二宮くんに嫌われたままなのだから。 「…………」
二宮くんは、肯定も否定もせず無言で私の傍を離れ、メイド服の採寸をしに行ってしまった。
———–その日のお昼休み。普段と変わらず、準備室でひとりお弁当を食していると、お昼寝をすべく、いつも通りの時間に二宮くんが準備室にやって来た。
教室での会話が減ったからといって、準備室でお喋りをするというわけでもない。だって、二宮くんの目的はあくまで【昼寝】なのだから。
普段通り、適当な席に座っては、上半身を机に預けて眠る二宮くん。二宮くんの睡眠を妨げぬ様、静かにお弁当を食べ続ける。
お母さんの手作り弁当をキレイに全部平らげ、お弁当に蓋をしていると、
「冴木、頼みがあるんだけど」
食べ終わるのを待っていたかの様に、二宮くんが喋り出した。
「寝てなかったんだ。頼みって何?」
「コレ、作って」
二宮くんが立ち上がり、私の方に寄ってきては、作って欲しいというソレを私の前に置いた。
「私、お裁縫得意じゃないよ。ていうか下手くそだよ。不器用だし。それに、二宮くんの衣装を作りたい子、いっぱいいるだろうから、他のコに頼んだらどうかな?」
二宮くんが私の目の前に置いたソレは、メイド服の型だった。
「お前、どうせ文化祭に参加しないんだろ。超ヒマじゃん。てか、自分だけ超絶楽しちゃってんじゃん。それってズルくね?」
二宮くんが「いいから作りなさい。生地は明日配られるらしいから、明日渡す」と強引にメイド服の型を私に押し付けた。
素直に優しさを見せない二宮くんに、薄っすら笑ってしまう。
「……何笑ってんだよ、冴木」
「本当は、邪魔者扱いされて文化祭に出られない私を不憫に思ったからでしょ。何らかの形で参加させてあげようって思ったからでしょ?」
二宮くんに「分かってますがな」と笑うと、
「お前、どんだけポジティブなんだよ。全然違うしな。何で俺が冴木にそんな気遣いをする必要があるんだよ」
二宮くんが呆れながら否定した。
絶対に違わない。全然違うとなると、【ただ単に私を扱き使ってやりたいだけ】ってことになってしまう。だから、どんなに否定されようが【二宮くんの優しさなんだ】と思いたいんだ。
嫌われていると分かっているのに、どうしても認められないほど、私は今も二宮くんが好きで好きで仕方がないんだ。
————-翌日のお昼休み、準備室でお弁当を食べていると、二宮くんが宣言通りメイド服の生地を片手にやって来た。
「じゃあ、よろしく」
と私の目の前にソレを置く二宮くん。
とりあえず、生地を広げてみる。
二宮くんは、結構身長が高い。生地の大きさから言って、失敗出来ない。
私、大丈夫なのだろうか。引くほど不器用なのに。
「冴木、母親に手伝ってもらおうとか思ってないよな? それは俺が心苦しいから、まじやめろよな。上手に出来なくても、自分の力で作れよな」
二宮くんが、私の頭を一瞬過ぎった案を見透かした。
ていうか、何だよ、その言い方。作ってもらう立場のくせに。
「……分かってるよ」
それでも、二宮くんが着てくれると思うと嬉しくて、精一杯頑張って作り上げようと思った。
どうせ文化祭準備に参加出来ない私は、その時間に家庭科室に行って、せっせと二宮くんのメイド服を縫った。
みんなが忙しく動く文化祭準備に加わらないのは、申し訳ないと思う。だけど、私がいたところで、私に仕事は回って来ないだろう。だって、いないことになっているのだから。
それに、その方が里奈もみんなも楽しく作業出来るだろうから。
だから、私にはみんなより断然時間がある。その時間を使って、二宮くんのメイド服を丁寧に綺麗に作ろう。……という気持ちも気合もあるのだけれど。
どうにもこうにも不器用な私は、マンガみたいに、コントみたいに、学習能力なく何度も針を指に刺してしまう。 ギャグか。と言わんばかりに色んな指に絆創膏を巻きつける。
二宮くんは、こんな私が作ったメイド服で本当に良いのだろうか。
四苦八苦しながら作ったメイド服は、文化祭前日になんとか出来上がった。
どんだけ時間かかってるんだ、自分。
そんな渾身の作品を、お昼休みに準備室で二宮くんに手渡す。
「……ゴメン。あんまり上手には出来ていないんだけど……」
遠慮がちにソレを差し出すと、
「……うん。まぁ……そうだね」
二宮くんが見事な苦笑いを浮かべた。
「この、下手くそが‼」と罵らないのは、二宮くんの優しさだろう。
正直、小学生並……イヤ、小学生以下の出来栄えだ。
「……ホントにゴメン」
「でもまぁ、努力はしっかり見えるから。親の手を借りずに、ちゃんと全部自分でやってくれたんだな。ありがとう。よく頑張りました」
二宮くんが「痛々しい手しちゃって」と呆れながら私の頭を撫でた。
ハッキリ言って、限りなく失敗に近いものを作ってしまったけれど、頑張って良かったなと思った。
「明日、二宮くんの出番は何時?」
こんなに頑張って作ったんだ。このメイド服を着ている二宮くんを一目だけでも見たい。
「1番最初の時間帯。9:00~11:00。あんまりお客さんが来なさそうな時間にしてもらったわ。接客ダルイし」
二宮くんが「あー。めんどくせー」と後頭部をガシガシ掻いた。
参加出来ない私からすると、その面倒臭さは羨ましかったりするのだけれど。
「冴木は? 明日、どうすんの?」
「もちろん、こっそり二宮くんのメイド姿見に行くよ‼」
「そうじゃなくて。てか、こっそりて。自分のクラスなんだから堂々と見にくればいいだろうが」
二宮くんはそう言うけれど、そう思っている人間は、きっとクラスで二宮くんだけだ。
「折角みんなが楽しんでいる時に、私が行って嫌な空気にしたくない。ちゃんと弁えますがな、私だって」
やるせなくて、私もまた頭をポリポリ掻いてみせた。
「で? その後は? 帰るの?」
二宮くんが、私のやるせなさをスルーした。 逆に清々しい。
「イヤ……。あんまり早く帰ると、親が変に勘繰りそうじゃん。『ウチのコ、友達いないのかしら』的な。まぁ、いないんだけど。無駄な心配かけたくないし、私も見栄張りたいから帰りはしない。二宮弟のクラスをサっと眺めたら、ココでまったりしてようかな。1人で回ってもつまんないし」
明日の自分の予定、言ってて悲しくなった。高校時代の思い出になるだろう文化祭が、こんな惨めなものになるとは……。
「……ふーん」
二宮くんの返事は『ふーん』だけだった。
自分から聞いておいて、然して興味がなかったらしい。 まぁ、そうだろうよ。
————そして、文化祭当日。 ワイワイ楽しそうに準備をする教室を通り過ぎ、準備室へ。二宮くんの出番の時間を待つ。
準備室の外から、日常にはない喧騒が聞こえてきて、ちょっと胸が高鳴り、また沈んだ。
……私もこの喧騒の中にいたかったな。無意識に溜息が漏れる。
楽しそうな時間の中にいると、自分の孤独が浮き彫りになって、やけに辛い。
耳にイヤホンを差し込んで周りの音を遮断し、じっと時計を見つめては、なかなか過ぎてくれない時間に少し苛立った。
好きな歌を何曲か聴いて、少しだけ気分が上がったところで時計に目をやると、9:00を過ぎていた。 別に急いでないし、誰かが私を待っているワケでもないので、ゆっくり準備室を出て教室に向かう。
廊下には、他校の制服のコたちや、卒業生を思われる人たちがたくさん居て、凄く賑やかだった。
盛り上がれない自分が場違いに感じて、何か居心地が悪い。
楽しげな人々の間を縫って教室に着くと、扉の向こうにメイド服を着た二宮くんがいた。
……あんな下手くそなメイド服、ちゃんと着てくれたんだ。てか、脚が思いの他綺麗。
メイド服を意外に着こなせてしまっている二宮くんに心の中で笑いつつ、教室を通り過ぎようとした時、二宮くんと目が合った。
「冴木‼ 入っていかないのかよ」
私の方に駆け寄ってくる二宮くん。
「うん。二宮くんのメイド服姿見たかっただけだし。お客さんとして入るのも、何か気まずいし。ていうか、ミニが似合いすぎだよ、二宮くん」
二宮くんのスラっとした長い脚に視線を落とすと、
「あんま見んなっつーの」
と、二宮くんが女のコみたいに両手でスカートを押さえた。
「女子か」
思わずツッコミを入れて笑っていると、
「やっぱ、冴木も無理矢理参加させれば良かった。ズルイだろ、俺を笑っておいて、自分はメイド服着ないとか。冴木のメイド姿も見たかったわ」
二宮くんが、嫌味を言っている様で、私が参加出来なくて残念だったとも取れる言い方をしながら、ふてくされた顔をして見せた。
まぁ、ただ単に『お前も同じ思いをしろよ』って言いたいだけなのだろうけど。
「……今から弟のクラスに行くの?」
二宮くんの二宮弟に対する憎しみは根深い。
二宮弟に関する話になるだけで、二宮くんの眉間には深い溝が出来る。
「行くよ。ヤリマンですから」
だけど、私は二宮弟が嫌いではないワケで。
「開き直って『ヤリマン』乱用するし」
二宮くんが細い目をして私を見た。
「どうせ言うつもりだったくせに」
「……まぁね」
二宮くん、認めるし。何だよ。やっぱりかよ。
「二宮くん、接客しに戻りなよ」
二宮くんを持ち場に行かせようとすると、
「クラスの出し物に参加もしない冴木に言われたくないわ」
二宮くんに意地悪を言われた。 参加しないんじゃないのに。参加出来ないんだ。私だって、本当はみんなと一緒に楽しみたかったんだ。 きゅうっとスカートを強く握り締め、
「……私、もう行くね。接客頑張って」
二宮くんがなかなか持ち場に行こうとしないので、自分が移動することに。
「……何で俺の言うことなんか、いちいち真に受けんだよ」
スカートを掴んでいた私の手を「皺になるぞ」とそっと下ろすと、「あぁー。もう」と襟足を掻き毟りながら、二宮くんはやっと持ち場に戻って行った。
……そんなの、好きだからに決まってるだろうが。ばか二宮。
二宮くんと別れ、二宮弟の教室に向かう。
1年生の教室がある階。去年まで歩いていた廊下がやけに懐かしい。
二宮弟のクラスに近づくと、微妙な感じの歌声が聞こえてきた。 二宮弟のクラスの壁には【カラオケ大会】と書かれた紙が貼られていて、中を覗くとクソつまらなそうな表情で、二宮弟がデンモクを使いながら曲を入れていた。
とりあえず、観客席の後ろの方に行って、大会の模様を眺めることに。
そこそこ上手い人もいた。原曲の形を留めていないヤツもいた。マイク、ちゃんと入ってんの? ってくらいウイスパーな声の方もいて。歌に自信があるわけでもなく、ただ歌が歌いたい人たちで行われるカラオケ大会は、さっぱり盛り上がらなかった。
でも、観客はちゃんといた。……と言っても、自分の曲順待ちの出演者がほとんどらしく、純粋な観客は、もしかしたら私だけかもしれない。
それくらい、面白くも何ともない、二宮弟のクラス。そりゃあ、二宮弟もあんな顔になるわな。隠すこともしようとせず、大きな口を開けては欠伸をし出した二宮弟が、観客席に座っている私を見つけて駆け寄って来た。
「冴木、こんなクソみたいな出し物を見に来るって、どんだけ暇なん」
余程つまらないのか、二宮弟の悪態が酷い。
「まぁ、暇なことは間違いないんだけど。何でこんな出し物にしちゃったのよ、二宮弟のクラス」
「適当に決めたに決まってんじゃん。そしたらこの有り様だよ。早く交代のヤツ来ないかな。まじでしんどいわ」
今度はでっかい溜息まで漏らし出す二宮弟。
「どんまい」 としか言えない。
「他人事だしなー、冴木」
と私に白い目を向けたかと思ったら、何かを思いついたかの様に右眉をピクっと動かしては、ニヤリと二宮弟が笑いだした。
「冴木も歌いなよ。どうせ暇なんでしょ」
二宮弟が私の右手首をグイーっと引っ張った。
「勘弁してよ。何で私が知らない人たちの前で歌声を披露しなきゃいけないんだよ。歌手じゃないんだっつーの‼」
振り解こうとするも、左手首までガッチリ掴まれてしまった。
「いいじゃん、いいじゃん‼ 冴木の歌声聞いてみたいじゃん‼」
「イーヤーだ‼ 二宮弟が歌えばいいでしょうが‼」
「じゃあ、一緒に歌う? 何歌おっか?」
「ひとりで歌ってよ‼ 私を巻き込むな‼」
観客席で二宮弟と揉めていると、
「手を離しなさい」
頭上で低い声がした。
「あ、兄ちゃん」
二宮弟が、パっと私の手を開放した。かと思えば、その手首を今度は二宮くんが握って、私を教室から引っ張り出した。
「え? え?」
突然現れた二宮くんに驚く私を他所に、そのまま歩き出す二宮くん。
「あ、あの……さっき、ありがとう。おかげで歌わずに済んだよ」
手を引っ張られながら、二宮くんの背中に向かってお礼を言うと、
「アイツのクラスになんか行くから、ああいうことになるんだよ」
二宮くんが、何故か少しキレていた。
「…………」
だからと言って、謝るのも違うと思うし、機嫌の悪い二宮くんに何を言えば良いのかも分からなくて、無言で二宮くんに腕を引っ張られるがまま歩いた。
連れて来られた場所は、予想通り準備室だった。
準備室の壁に掛かっている時計を見ると11:10で、二宮くんの出番が終わったばかりだということに気付く。
「二宮くん、まだドコも回ってないでしょ? 他のクラス見に行ってきなよ。二宮くんは文化祭を満喫しておいでよ」
機嫌の悪い二宮くんに、それでも笑顔を向けるも、
「俺、文化祭とか興味ない」
と、昼寝時同様、適当な椅子に座る二宮くん。座っちゃったよ。動く気ないよ、このヒト。
不機嫌な二宮くんと、ココでどう過ごせば良いのだろう。そもそも、このヒトは何に怒っているのだろう。私に? 二宮弟に? それとも、メイドカフェで何か嫌なことでもあった? エスパーでも何でもない私に分かるハズもない。ので、聞いてみる。
「……二宮くん、何か怒ってる?」
「別に」
ハイ。お手上げ。
「…………」
無言の時間が流れる。
二宮くんと私は友達ではない為、何気ない会話をしない。だからこんな時、何を話せば良いのか分からない。
どうすれば良いのか分からないまま、とりあえず私も空いている椅子に腰をかけた。
何も喋ることもすることもないので、ポケットからスマホを取り出しては、無意味に弄る。
暇すぎて、目に付いたネットニュースに出てきた、聞いたこともない売れていないだろう芸能人の名前をググってみる。何の役にも立たない情報を、わりとしっかり調べるという、無意味な上に無駄な作業を黙々としていると、
「……帰ってゲームしよっかな」
二宮くんが暇に耐えかねて立ち上がった。
「……そっか。気をつけて帰っ……」
「冴木もする? ゲーム」
二宮くんに振りかけた手を止める。
二宮くんが私をゲームに誘っている。……と、言うことは、二宮くんの家に誘われているということですよね? でも、男の家に簡単に上がる女を、二宮くんはあんまり好きじゃないはず。だけど、二宮くんは私を『ヤリマン』と呼んだりする。コイツなら簡単にヤれるだろうってこと?
……確かに私、『二宮くんならいい』って言ったしなぁ。イヤでも待って。二宮くん、友達にすらなりたくない程、私を嫌ってるし、本当にただゲームがしたいだけなんじゃ……。
色んな角度からさまざまな思考を彷徨わせていると、
「対戦相手いないとつまんない。相手してよ、冴木」
私の考えすぎかもしれない。二宮くんはひとりでやるより、2人でより楽しくゲームがしたいだけなのかもしれない。
「……私、ゲームしない人だから、やり方分かんない」
「俺、説明書捨てない人だから、見ながらやれば大丈夫」
二宮くんが「行こう。冴木」と私の二の腕を掴んで、立つ様に促した。
「……ゲームがしたいんだよね?」
立ち上がりながら二宮くんに最終確認。
「他に何すんだよ。ヤリマンが」
「ゲームのみです。スイマセン」
二宮くんに、私とどうこうなりたいなどという気持ちは微塵もなかった。……そりゃ、そうだ。
二宮くんは曲がったことが嫌いな性格だ。好きなわけでもない、友達以下の私とそんなことをしたいわけがない。
軽い女に見られたくないくせに、そういう対象にすらなれないことが悲しい。
恋というのは本当に厄介だ。
成就しない恋をし続けることほど、タチの悪いものはない。
コメント
1件
第9話読み終わったよ〜!もうね、二宮くんのツンデレっぷりがエモすぎて胸がギュッてなった😭💕 メイド服作るシーン、指に針刺しまくってる姿が目に浮かんで、頑張れって応援したくなったよ!しかも二宮弟のクラスから助けに来る二宮くん、嫉妬…?って思うとドキドキが止まらないんだけど!!最後のゲームに誘うとこ、本当にただゲームしたいだけなのかな…それとも…?って続きが気になりすぎるよ〜!次の話、めっちゃ楽しみにしてるからね🌸