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錆びた廃工場の中、静寂が深く胸を締めつける。朽ち果てた壁の向こう、ぽつんと佇む巨大な冷凍庫の前に、ナツギは足を止めた。


「これが、僕だけの宝箱だ――誰にも触れさせない」


その声には、甘くもどこか冷たく、狂おしいまでの独占欲が混ざっていた。

ゆっくりと扉を開けると、冷気が一気に吐息を凍らせ、空気を鋭く切り裂く。


ハルトの身体を抱き上げる。重さも、冷たさも、今は何も感じなかった。

ただ、壊れてしまった君を、誰にも奪われずに閉じ込められることが、嬉しかった。


「ここにいれば、ずっと、ずっと――僕だけのものだ」


寝かせた彼の手を、まるで生きているかのようにしっかりと握りしめる。

鮮血の匂いと冷気の匂いが入り混じる中で、ナツギの瞳は凍りついた決意で輝いていた。


「生きているときは、僕を遠ざけたくて――でも、死んでしまえば、永遠に離れられない」


扉を閉めるその瞬間、ナツギの声は囁きとなり、冷凍庫に吸い込まれていった。


「これで、君は永遠に僕の宝物だ。触ることも、奪うことも、壊すこともできない。そうだろ?」


冷たい鉄の扉の向こうに、誰も知らない“僕たちだけの世界”が広がっている。

それは狂気の牢獄であり、愛の終着点だった。

夏の終わり、冷たい箱の中で

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