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夏の終わり、冷たい箱の中で

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夏の終わり、冷たい箱の中で

6 - 冷たい場所で、まだ生きてる

♥

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2025年08月28日

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街は変わっていなかった。

だけど、ナツギの心はずっと遠くに置き忘れられている気がした。


25歳になったナツギは、静かなオフィスの一角で書類をめくっていた。

机の向こうから、ふと懐かしい声が聞こえる。


「ナツギくん……覚えてる?」


振り返ると、そこにはサヤカが立っていた。

長い髪は少しだけ光を帯び、控えめな笑顔はあの頃と変わらず優しい。


「サヤカ……ずいぶん変わらないね」


「そう? でも、私、ずっとナツギくんのことを見てたよ。中学生の頃から」


その言葉にナツギはわずかに息を飲んだ。

長い年月、気づかないふりをしていた想いが、胸の奥で疼く。


「君は……ずっと、僕のことを?」


「うん。だから……もう一度、話したくて」







再会してから、サヤカの中で何かが静かに狂い始めていた。

ナツギは変わらなかった。

優しくて、静かで、どこか寂しそうな目をしていた。

それが、サヤカにはたまらなかった。


「好きだ」と思ったのは、もうずっと昔のことだった。

中学の頃、教室の片隅で静かに本を読んでいたその横顔を見たときから、

ずっと——ずっと、胸の奥に仕舞っていた想い。


でも、再会して気づいてしまった。


彼の“中”には、誰かがいる。


もういないはずの“誰か”。

その名前を口にしなくても、彼の沈黙はすべてを語っていた。


気になって仕方がなかった。

ナツギが何を見て、何を抱えて、なぜあんなにも静かに生きているのか。


──知りたい、って思っただけだった。

ほんの少し。

ナツギのこと、もっと知りたい。

それだけの気持ちだったのに。





仕事終わり、サヤカは彼のあとをつけた。

駅で、路地で、誰にも気づかれないように。


ある夜、彼が街外れのフェンスを越えて廃工場に入っていく姿を見た。

なぜ、こんな場所に……?


壊れかけた扉を押し開け、埃の舞う空間を息を殺して進む。


その先にあったのは、錆びついた巨大な——冷凍庫。


中を見たわけではない。

けれど、ナツギの表情がすべてを語っていた。

そこを見つめる瞳は、異常なほどに優しかった。

まるで、誰かを愛しているかのように。


彼がその扉に触れながら、ぽつりと呟いた言葉が耳に焼きついている。


「今日も……大丈夫だったよ、ハルト」


──ハルト。


その名前を聞いた瞬間、全身がぞわりと泡立った。

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