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2話目
浮奇さんは靴を脱いで、家に入った。
玄関には、靴箱の上に鏡がかかってて、反対側には、コート掛けがあった。
浮奇さんはコートをかけて、俺にハンガーを1つ渡した。
「廊下をずっとまっすぐ行けばリビングがあるから、待ってるね」
そう言ってくれた。
ハンガーにコートをかけていると少しの違和感に気付いた。
スマホだった。ポケットに入れたまま忘れていた。
少し躊躇った。靴を脱ぐのを。
無意識に視線は足元へ落ちる。
不思議に思った。サイズの違う靴が3足あったから。
1つは、浮奇さん、もう一つはファルガーさんのものだろう。
ここには何人の人が住んでいるのだろう?
何となく良くない気がして、その先は考えなかった。
俺はゆっくり靴を脱いで、そっと揃えた。
浮奇さんは、1番奥にいると言っていた。けど、玄関から1番近くの部屋からは灯りが零れていた。
廊下は少し長く、部屋が沢山あった。ぶり返す疑問。一体何人住んでいるだろう。
玄関の横には階段もあったし、もし、2階もこうなら、全てが生活スペースなのだろうか…
少し進むと浮奇さんの声が聞こえた。
俺の頬が少し緩んだ気がした。
そのままリビングには入れなくて、良くないと分かっていながらも浮奇さんとファルガーさんの会話を聞いていた。
どこを切り取ってもその会話は暖かく、お互いへの好意で溢れていた。
緩んだ頬を戻すことが出来ないままでいると、俺の名前が出てきて、反射的にドアを開けた。
「あ、」
何も考えずに開けてしまって、思わず声が出る。
「ココアとミルク、どっちが好きだい?」
ファルガーさんがキッチンから声をかけてくれた。
「あぁ…ミルク…の方が好き…」
「こっちおいで、ここ座っていいよ」
浮奇さんが優しく招いてくれる。
座って、ミルクをもらって、何を話したらいいかわかんなかったけど、流れてく会話に身を委ねて、頷きながら暖かい夜を過ごした。
何時間経った分からない。時間を気にしなくてもいいくらい暖かった。
「そろそろ寝るか」
ファルガーさんの声で、浮奇さんと俺は席を立つ。
浮奇さんは歯ブラシとかパジャマとか全て新しいものを俺に与えてくれた。
案内してくれたリビングの隣の部屋もすごく綺麗に整えられてた。
この家は、いつでも人が来てもいい準備がしてある。
誰かに『ここにいていい』と言ってほしかった。
次の朝、誰かの生活音で目が覚めた。
そっと部屋を出て、リビングに行くと、見知らぬ男の人がいた。
「よく眠れたかい?」
低音の深い声。
「はい、おかげさまで…」
困惑している横から、ファルガーさんと浮奇さんが起きて来た。
「おはよう、ヴォックス」
「おはよう」
2人とは顔見知りのようだ。
「おはよう、浮奇、ふーちゃん」
キッチンに立つ彼を見て、2人は不安そうな声を出す。
「今日はヴォックスが朝食作るのかい?」
「君が作ると嫌な予感がするよ?」
「大丈夫さ、きっと美味しい食事になるよ」
不安そうな2人を置いて、彼はせっせと食事の用意を始めた。