テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
3話目
キッチンからは度々危ない音が聞こえる。
その度に俺たちはキッチンを見るけど、彼は「心配ない」というばかりだった。
浮奇さんの横に座った俺はテーブルの椅子は4つしかないことに気付いた。
部屋は沢山あるけど、生活してるのは4人だけなのか、そう思うとちょっとホッとした。
やがて、彼がキッチンからフレンチトーストを運んだ。
目の前に置かれたそれは、すごくいい香りがした。
浮奇さんとファルガーさんは驚いていた。
「いつの間に出来るようになったの?」
得意気に浮奇さんとファルガーさんの分も運ぶ。
それを見たファルガーさんはちょっと控えめに苦笑いした。
「焦げ目が芸術的だな」
それでも、「成長してる」と彼は意気揚々としていた。
俺のはそんなことなかったけど…
一口食べると、口の中がふぁと甘くなって、溶けていくようだった。
「どうかな?」
目の前の彼が聞いてくれる。
「とっても美味しいです…!」
彼は優しく微笑んだ。
「それはよかった」
その瞬間に家の空気が変わった気がした。
俺はこの家にいていいんだと、そう思えた。
言葉はなくても3人の表情が、それをものがたっていた。
まともに朝ごはん食べたのはいつぶりだろうか、覚えてる中で1番暖かい朝だった。
「ルカ、お皿洗ってくれる?」
浮奇さんが遠慮がちに聞く。
俺はこの家に必要とされてる感じがあって、嬉しかった。
「わかった」
多分笑顔だった。意識せずともこぼれる笑み。この家に来てからの体験だった。
「じゃあ、洗濯をしておこうかな」
ファルガーさんが言う。
「コーヒーを淹れるとしようか」
彼、名前まだ聞いてなかった。
「俺は掃除しとくね」
浮奇さんも言って、みんな席を離れた。
隣には最高のフレンチトーストを作ってくれた彼がいた。
「俺はヴォックスという。君は?」
「俺はルカです、ルカカネシロ」
「ルカはしばらくここにいるんだろ?」
流れる水の音だけがキッチンに響いた。
俺はここにいていいと思えた。きっと3人もそう思ってくれてるはず。でも、言葉にしてちゃんと聞いてなかった。
不思議そうなヴォックスさんと言葉に詰まる俺、そんな時に掃除を終えた浮奇さんがリビングに戻ってきた。
「ルカ、今日予定ある?」
悩むことのない質問に心の中で感謝した。 「ないです」 「じゃあ、この後時間ちょうだい?」 俺の顔を覗き込む浮奇さんに笑顔で頷いた。 浮奇さんは食卓に座り、ヴォックスさんはコーヒーを運ぶ。ファルガーさんも戻ってきて、各々席に座る。 席は決まっているようだった。俺は浮奇さんの隣に座った。