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#溺愛
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「ごめん、ひとりで大丈夫だった?」
お腹の調子が悪いと化粧室へ行っていたもう一人の受付担当・西木さんが帰って来て、ようやく胸を撫でおろす。
「うん。私もお腹痛くなってきちゃった。ちょっと変わってもらってもいい?」
「いいよ」
「凄く格好いい人がきたんだけど。なんかちょっと怖くて……」
「えっ、本当? 見たかった!」
西木さんは“格好いい人”のところだけに食いついてくる。私は苦笑して彼女と交代した。
「今上がっていったばっかりだから、帰りに見られるよ。じゃ、ごめん。ちょっと行ってくるね」
受付のカウンター下に置いておいたポーチをもって、化粧室へと向かった。
ロビー階には、入ってきてすぐのところに受付があり、一番奥にエレベーターがある。
向かって右奥に、ソファや机が並ぶ来客用の談話スペースがあり、簡単な要件ならば、担当者がここまで降りてきて、済ませられるようになっている。
逆に言うとロビー階には事業系の部署は入っておらず、あまりひと気がない。
だから化粧室はいつも空いていて、私たち受付にとっては便利なのだ。
ピカピカに磨かれた洗面台に手をつき、ガラスに映る自分の姿を見つめた。
奥二重にアイラインを入れることで目周りをくっきりと見せ、できるだけ大人っぽくなるようにメイクと髪形を整えている。
特別綺麗だと思われることはないだろうけど、制服をきっかりと着込むことで、受付嬢として清潔感は保っているはずだ。
総務部庶務課で庶務業務を担当していた私が、受付に移動したのは今年になってからで、そろそろ三ヶ月になる。
あまり人と話すのが好きじゃないのに、受付へと志望したのにはきっかけがあったわけだけど……。
「……別に、おかしいところはなかったよね」
敢えて言うなら名札はちょっと曲がっていたかもしれない。
でもそこまで細かいことを、来客に指摘されることはないと思う。
安全ピンを止めなおして、気を取り直して戻ると、西木さんがふたりの男性客を相手にてんやわんやになっていた。
コメント
1件
第4話、読み終わりました!受付嬢の内面ってあまりスポットが当たらないので新鮮でした。「人と話すのが好きじゃないのに受付を志望したきっかけ」という一文が気になって仕方ないです。西木さんの「格好いい人」発言も絶妙なタイミングですね。まだまだ物語の入口だと思うので、この先どう転がっていくのか楽しみです。