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「リオ、あそこを見てみろ。あれがギデオン様の城だ」

体調が回復した翌|早朝《そうちょう》に宿を出て、ギデオンの馬に乗せられ半日進んだ。

休憩を挟みながらとはいえ、体調がまだ戻りきっていないために、リオが眠気に耐えきれず頭を揺らせていると、隣からアトラスに声をかけられた。

半分寝ぼけてアトラスが指差した先を見る。

リオが眠気と戦っている間に大きな街に入っており、様々な大きさの家が規則正しく建ち並ぶ奥に城が見えた。リオが今まで見た中でも、一二を争う大きさだ。

そこでリオの目がしっかりと覚めた。

え?城?なんで?

リオはパチクリと|瞬《まばた》きをし、隣のアトラスを見て後ろのギデオンを見た。


「なんだ」

「あれ、お城だよね」

「そうだな」

「あの大きさからして領主の城だよね」

「ああ」

「あ、そっか。ギデオンの家は、お城の手前にある、あの白い建物?」

「違う。あの城が俺の家だ」

「はあ?」


ギデオンは何を言ってるのか。話が通じないな。あ、そっか。領主に仕える騎士としてあの城に住んでるから、俺の家だと言ってるんだな。そうかそうか。ギデオンは領主直属の騎士なんだな。だから位が高くて…。

鞄の中のアンの頭を撫でながら考えていたリオの耳に、ある言葉が飛び込んできた。


「あ、狼領主様だ」

「こら!…領主様、おかえりなさいませ」


七、八歳くらいの男の子がギデオンを指差し、母親らしき女が、慌てて男の子の口を塞いで頭を下げている。

リオは、もう一度ギデオンの顔を見た。大きな目を更に大きく開いて。

ギデオンがリオを見下ろし「なんだ」と冷たく言う。


「あの…もしかしてなんだけど、狼領主って」

「俺のことだ」

「ひうっ!」


リオは世にも情けない声を出して固まった。そして今までの数々の失礼な態度を思い返す。

嘘だろ…。俺、すごく失礼なこと、してきてないか?しかも敬語無しで話してる…。逃げたい、今すぐ逃げたい。ちょっと身分の高いその辺の騎士だと思ってたのに、領主だなんて聞いてない!最初からそう名乗ってくれてたなら、仕事の話も承諾しなかったのに!

どうしよう…とリオは悩む。

今、ここで馬から飛び降りて逃げるのは無理だ。だってギデオンが、リオの腹をしっかりと抱いているから。それならばやっぱり働くのを辞めたいと言う?それも無理だ。しっかりと契約書に署名をさせられている。契約を破ることは違法だ。今度こそ捕まる。それにそもそも、リオが契約を破ることをしたくない。

とりあえず城に着いたら、ギデオンの方から契約を白紙にしてくれるよう頼んでみよう。

そう心に決めて、リオはアンを抱きしめて深い溜息をついた。


狼領主は俺を抱いて眠りたい

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