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ギデオンは本当に領主様だった。いや、本人からそう聞いたし疑いようがないのだけど。もしかして聞き間違いかもしれないと|微《かす》かに思っていたから。でも城に着いて、疑心は確定に変わった。 城の大きな門の前で馬の足が止まると、門番がギデオンに向かって最敬礼をして門扉を開けた。よく教育されているらしく、ギデオンの前に座ったリオに気づいても、失礼な態度を取らない。

皆が通り過ぎるまで目を伏せ続ける門番に、リオは迷いつつぺこりと頭を下げて、心を落ち着かせるためにアンの頭を撫でた。

アンは物珍しそうに、キョロキョロと首を巡らせて周りを見ている。

好奇心旺盛で本当に可愛いと、リオは気持ちを和ませる。そして一度息を吐き出すと、ギデオンを振り仰いだ。

リオの視線に気づいたギデオンは、一瞬だけリオを見て「なんだ」と言って前を見る。


「あのさ、俺、馬を降りるよ」

「なぜ?もうすぐ正面玄関に着く」

「いやでも、俺は使用人だろ?領主様の馬に乗せてもらってるの、マズくない?」

「リオは使用人ではない。側近のようなものだと話しただろう」

「側近でもギデオンに仕えるのに変わりないじゃん。その俺がギデオンに乗せてもらってるのって失礼だろ。だから降りる」

「ふむ、では命令だ。玄関に着くまで乗っていろ」

「……」


リオは口を閉じて前を向く。

話が通じない。頑固だ。見た目通りに頑固だ。見た目は怖くとも本当は優しくて良い人だと思い始めていたけど、頑固で人の話を聞かない人は苦手だ。

仕方がない。ここで|揉《も》めると目立つ。とりあえずは中に入ろう。そして落ち着いてこれからのことを…俺では役に立てないから解雇してほしいと頼もう。

リオの不安な気持ちを感じたのか、アンがリオの手をぺろぺろと舐めている。

リオは「大丈夫だよ」と囁き、堅牢そうな城を見上げた。

正面玄関へと続く磨きあげられた石畳の手前で馬を降りた。

アトラスとロジェがそれぞれ二頭ずつ手綱を引いて離れていく。

リオが離れていく二人に目を向けていると、重厚な扉が開き、中から全身黒い服に身を包んだ黒髪の男が現れた。

男はギデオンに向かって「お帰りなさいませ」と丁寧に頭を下げる。

ギデオンが一歩前に出て無表情に頷いた。


「ゲイル、変わりはなかったか」

「はい」

「ふむ。後ろにいるこの者は俺個人が雇った。失礼のないよう、接せよ。皆にもそう伝えよ」

「…ギデオン様が直々に…ですか?」


顔を上げた男の|琥珀《こはく》色の目が、リオに向けられる。

ギデオンと同じ歳くらいの男。

ギデオンよりは優しい顔つきなのに、なぜかリオは怖いと感じた。思わずケリーの後ろに隠れたくなったが、耐えた。そしていつもの人懐こい笑顔を浮かべながら頭を下げた。



狼領主は俺を抱いて眠りたい

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