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大きな紙に描いた魔法陣が光った。

プルートがエリスを守るように抱き抱え、エリスは目を丸くしていた。

召喚されたのは細身の男だった。赤いワイシャツに黒のベスト、鼻から口にかけてを覆うガスマスク。白い尻尾と片方欠けた角があるから、おそらく人間ではないだろう。

男は呆然としている二人を見て言った。


「私に何の用だ?」


エリスは質問に答えなかった。その代わりにプルートの方を見て、


「すげえーー!おかあさんのへやにあったくろまじゅつのほん、ほんとーにつかえたな!」


と嬉しそうに叫んだ。泥酔しているのか、呂律が回っていない。プルートはエリスと男を交互に見ながら、困惑した表情をしている。

男はため息をついてもう一度質問した。


「私に何の用だ。」


ようやくエリスは男の方を見た。


「ごめんなー!きょーみあったから!とくになんのようもないぞーーー!」


男は唖然とした。


「本当に何の用もないのか?」

「おう!」

「…お前は?」


男はプルートの方を見て言った。


「今すぐ帰れ」

「え!やだ!もっとこいつとあそぼ!な!」

「エリス…」


要求を遮ったエリスを、プルートは呆れたように見つめた。男はその場に座り込み、少しだけ滞在するそぶりを見せた。


「なーなーおまえなまえは?」

「ギャレット。」

「おまえってあくま?」

「少し違う。魔人。」

「ともだちになろー!」

「遠慮させてもらう。」

「:(」


立て続けに質問を投げかけるエリスとそれに答えるギャレットを横目に、プルートはもしもの時を想定して台所から包丁を持ち出してきた。


「おれえりす!こっちはあにきのぷるーと!よろしく!」

「よろしく、人間。」

「…」


プルートは軽く会釈して、不審そうにギャレットを睨んでいた。


「なあなあ、まじんってなにするの?」

「そうだな、召喚した人間の願いを叶えたりするんだ。」

「へえーあらじんとまほうのらんぷみたい!じゃあうぃすきーかってきてーーーー!」

「良いだろう。ただし代償は払ってもらう。」

「だいしょう?」


プルートはすぐにエリスを守れるよう身構えた。


「そう。例えばお前の要求だと…そうだな、酒の半分を貰おう。」


プルートはひとまず落ち着いた。


「えーーーー?!だめ!ぜったいだめ!」

「なら要求は聞けないな。」

「えーーー」


エリスは頬を膨らませ、不服そうにフローリングを叩いている。


「…代償は要求の内容によって変わるのか?」


ずっと黙っていたプルートが口を開いた。ギャレットは彼の方をちらと見て、頷いた。


「変わる。例えば人殺しの依頼だと依頼主の寿命を半分もらう。金だったら人の心。恋や友情の依頼なら思い出とかだ。」

「…」

「ひとのこころ?」

「文字通りだ。」



しばらくエリスとギャレットが話した後、痺れを切らしたようにプルートは言った。


「エリス、もう良いだろ」


プルートはエリスをギャレットから離すと、帰れという念を込めた視線をギャレットに送った。

対するギャレットは一つため息をついて魔法陣の上に立ち、消えた。


「ばいばーい」

「はあ…」


プルートは立ち上がり、台所へ包丁を戻しに行った。


「あにきーなんでほーちょーもってんのー?」

「護身用だ」

「そっかー」

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