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奏
36
19
Ru_らだち☆_
95
あまおう
76
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こんにちは!ポテサラです
短編を書きます。
⚠️この物語、下書きの時に間違えて投稿してしまい、その時に見てくださった方、申し訳ありません。恐らくその時に見たものとは変わっており、途中だった為、変なところで途切れていたと思うのでもう一度見て頂けたらと思います。(._.⚠️
・ご本人様関係ありません。
・センシティブ表現はありません。
・創作上の妄想あり。
・スパイのパロディです。
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政府非公認。
それが俺たちの所属する組織を一言で表すなら一番近い言葉だと思う。国から正式に存在を認められているわけでもなければ、当然、一般人がその存在を知ることもない。表の世界では解決できない問題を裏側から片付けている。
情報収集、潜入、護衛、機密情報の回収、時には人の救出や人の暗殺。
依頼が来れば、どんな仕事だろうと引き受ける。
その代わり俺たちには、普通の人間が当たり前に持っているものがほとんどない。
自分の本当の名前、戸籍、当たり前の生活、そして命の保証。失敗すれば死ぬ。それがこの世界だ。
そんな場所に俺は長いこといる。別に、特別な理由があったわけじゃない。気づいたらここにいた。組織にスカウトされ、気づいたら任務をこなしていて。気づいたら、それなりに腕を買われていた。だから今日も、いつも通り任務に向かっていた。
「……面倒だなぁ」
今日に限ってはいつも以上に面倒だった。
俺は敵組織が使用している施設の壁に背を預け、廊下の様子を窺っていた。
『rd、聞こえてる?』
俺の上司が無線で聞いてきたのでめんどくさいと思いつつ返答する。
「聞こえてるよ」
『現在位置は?』
「2階。東側の廊下」
『警備は?』
「……右に2人」
視線の先に一定の間隔で巡回している警備員が2人。足音、視線、巡回のタイミングの全部を確認する。
『そのまま待機。あと三十秒で応援が─』
「いや、行ける」
『は?』
「今なら抜けられる」
『ちょ、待──』
俺は通信を切った。怒られるだろうな。
まあ、いつものことだ。俺は壁から離れ、音を立てずに廊下を進む。警備員がこちらを向くが、その瞬間にはもう俺は死角へ入り込んでいた。足音を消して呼吸を整えるえ扉の前で立ち止まり、端末を取り出しロックを解除し扉が開いた。
「……あった」
今回の目的は敵組織が保管している機密データを取ることだ。必要なデータだけを抜き取り、端末を閉じた。
『rd』
「はいはい~?」
『勝手に動くなって言ったよな?』
「言ってたね」
『じゃあなんで動いた』
「こっちの方が早かったから」
『そういう問題じゃない!』
「結果オーライじゃん」
『お前の結果オーライは信用できないんだよ!』
「ひどいなぁ」
通信の向こうから、深いため息が聞こえるが俺は笑いながら部屋を出た。そのまま施設を脱出した。
任務は成功。ただし…
「rd」
「はい」
帰還して十分後。俺は上司の前で正座させられていた。
「お前、途中で予定にない場所へ行っただろ」
「……行ってないよ?」
「監視カメラに映ってる」
「…………」
「何か言え」
「すみませんでした」
「今回の任務は成功した。それは認める」
「でしょ?」
「だが、お前は毎回勝手な行動をする」
「結果オーライじゃん」
「そういう問題じゃない」
「でも成功したよ?」
「お前は本当に……」
上司が頭を抱える。怒られるのは慣れている。むしろ、ここまで怒られているのに処分されないことの方が不思議なくらいだ。
「まぁまぁ」
「まあまあじゃない」
「次から気をつけます」
「前も聞いた」
「じゃあ次の次から」
「反省する気あるか?」
「あります」
「目を見て言え」
「あります」
「……はぁ」
上司がため息をつく。
これでも、この組織ではそれなりに評価されている。実力だけなら上から数えた方が早い。
……らしい。
自分ではよく分からないけど。
ただ、問題児だという自覚はある。
「それと」
「ん?」
上司が手元のファイルを一冊取り出す。
嫌な予感がしたので逃げようとしたが流石に今日は怒られるのに疲れたので大人しく聞こう。
「今日から、お前の班に新人を入れる」
「…………え?聞いてない」
「今言ったからな」
「そういう問題じゃないんだけど」
「新人…」
「そう」
「俺が面倒見るの?」
「そう」
「なんで?」
「実力があるから」
「俺に?」
「お前以外に誰がいる」
「もっと適任いるでしょ」
「いない」
「いるって」
「いない」
「……」
「……」
「絶対?」
「絶対」
俺は机に突っ伏した。
「新人の面倒とか無理……」
「お前、自分が新人だった頃を思い出せ」
「思い出したくない」
「だろうな」
「横暴だ!!」
「お前にだけは言われたくない」
上司が呆れたように言う。
「とにかく、今日からだ。ちょうど来ている」
「今日から!?」
「そう」
「えっと…心の準備が~」
「必要ない」
「鬼だ……」
「失礼な奴だな」
上司が扉へ向かう。
「入れ」
扉が開いた。
「失礼します」
入ってきたのは、一人の青年だった。
年齢は俺より少し年下ぐらいかな?
黒っぽい髪で落ち着いた服装をしている。そして鋭い目をしているので怖い。
新人にしては堂々としている。
「今日から配属になりました。kyoです」
「……kyo?」
「はい」
「変わった名前だね」
「よく言われます」
そいつはそう言って、軽く頭を下げた。
そして顔を上げ、目が合った。
「…………」
あいつ、俺の顔をじろじろ見てくるんですけど。やめてね?そんな見なくても良くない?俺の顔になにかついてるのかな…。任務中に食べたカレーパンかな…。
「……?」
俺が首を傾げると、そいつはすぐに目を逸らした。
「よろしくお願いします、先輩」
「あ、うん。よろしく」
上司が口を開く。
「こいつの実力については資料を読めば分かる。訓練成績も悪くない」
「へぇ」
「明日から実戦にも出す予定だ」
「新人なのに?」
「だからお前につける」
「俺が教育係なの、まだ納得してないんだけど」
「諦めろ」
「横暴だ」
「お前にだけは言われたくない」
さっきと同じやり取りをし、俺はため息をつきながら、kyoを見る。
「じゃ、とりあえずよろしく」
「はい」
「俺、厳しいからね」
「……そうは見えませんけど」
「え?」
「なんでもないです」
「今なんか言った?」
「言ってません」
「絶対言っただろ」
「気のせいです」
……。
こいつ、新人のくせに
「生意気だなぁ」
「よく言われます」
「褒めてないよ?」
「知ってます」
思わず笑ってしまった。
「……まあ、いいや」
なんとなく。こいつとは、やっていけそうな気がした。
──翌日。
俺たちは訓練室にいた。
「じゃ、まずは基本から」
「はい」
kyoが頷く。
「この仕事で一番大事なのは?」
「情報?」
「正解」
「……意外ですね」
「何が?」
「先輩、もっと力とか言うのかと思ってました」
「俺そんな脳筋に見える?」
「少し」
「おい」
kyoが笑う。
「情報がなければ動けない。相手のことを知らずに突っ込むのはただの馬鹿だから」
「じゃあ先輩は?」
「俺?」
「情報なしで突っ込んだこと、ないんですか?」
「……」
「あるんですね」
「ないよ?」
「今の間はなんですか」
「気のせいだよ」
「…」
「便利な言葉だね☆」
kyoは呆れたように笑った。
その後も俺たちは訓練を続けた。
銃の扱い、潜入時の動き、相手との距離、状況判断を一通り教えていく。
そして
「じゃ、最後に模擬戦やろうか」
「俺とですか?」
「そう」
「手加減してくれます?」
「もちろん」
「……」
「何?」
「その言葉、信用していいんですか?」
「失礼だな」
「だって先輩ですし」
「どういう意味?」
「そのままの意味です」
「…じゃあ、始めようか」
「……!」
kyoは予想よりずっと速かった。
俺が一歩下がる。kyoは間髪入れずに距離を詰める。新人とは思えない。
「お前……」
「なんですか?」
「本当に新人?」
「そうですよ」
「嘘つけ」
「本当です」
笑っているという事は余裕がある。
なので俺は少しだけ真剣になった。
その瞬間、kyoの動きが変わった。
こちらの動きを読んでいる。
「……」
kyoの一撃を避ける。そして、俺がkyoの腕を取った。
「終わり」
「……参りました」
「ちゃんと…」
「ん?」
「先輩手加減してましたね」
「最初に言ったじゃん、新人相手に本気出すほど大人気なくないから」
「次は本気でお願いします」
「嫌だよ」
「なんでですか」
「疲れる」
「……」
「何その顔」
「先輩って、思ってたより適当ですね」
「よく言われる」
「それ、褒め言葉じゃないですよ」
「知ってる」
俺らは笑った。それから、何度か訓練を重ねた。kyoは思った以上に優秀だった。
一度教えたことは、ほとんど忘れない。
状況判断も早く、俺の指示を理解するのが異様に早かった。
「右」
「分かってます」
「まだ言い終わってないんだけど」
「右に二人ですよね」
「……」
「違いました?」
「合ってる」
「よかった」
そんなことが何度もあった。
ある日の訓練後。
「先輩」
「ん?」
「帰らないんですか?」
「あ、帰る帰る」
俺は立ち上がる。
「飯でも食ってく?」
「いいんですか?」
「新人歓迎会ってことで」
「奢りですか?」
「……割り勘」
「先輩なのに?」
「新人のくせに図々しいな」
「冗談です」
「本当に?」
「半分くらい」
「お前なぁ……まぁ奢るけどね?」
2人で訓練室を出て廊下を歩きながらくだらない話をする。そしていつもの定食屋さんに行った。
• • •
初任務から、数日が経った。
あの日から、俺とkyoは以前よりも一緒にいる時間が増えた。理由は単純。俺が教育係だから。……ということになっている。
「先輩」
「んー?」
「これ、どこに置けばいいですか?」
「そこ」
「ここ?」
「そう」
「分かりました」
kyoが資料を棚に戻す。
俺は机に座ったまま、別の書類に目を通していた。
「先輩」
「今度は何?」
「この資料、日付がおかしくないですか?」
「……え?」
kyoから書類を受け取って確認する。
「……本当だ」
「ですよね」
「よく気づいたね」
「見れば分かります」
「俺には分からなかったんだけど」
「先輩、ちゃんと見てました?」
「見てたよ」
「じゃあなんで気づかないんですか」
「細かいこと気にしない性格だから」
「スパイとして致命的じゃないですか?」
「お前、最近俺への当たり強くない?」
「気のせいです」
「それ昨日も聞いた」
「便利な言葉なんでしょ?」
「……覚えたな」
kyoが笑った。最近、こういう会話が増えた。最初はただの新人だったが、今では少し生意気な後輩だと認識している。
「そういえば」
俺はふと思い出す。
「今日、昼飯どうする?」
「食べます、お腹空いてるので」
「何食べたい?」
「先輩が奢ってくれるなら何でも」
「なんで俺が奢る前提なの?」
「先輩だから」
「その理屈嫌いだなぁ」
「じゃあ割り勘で」
「……何食べる?」
こうしていると普通の先輩後輩と何も変わらない。ここがスパイ組織だなんて、忘れてしまいそうになる。
まあ実際には、そんな平和な場所じゃないんだけど。
──昼休み。
俺たちは食堂の端に座っていた。
「先輩」
「ん?」
「これ美味しいですよ」
「どれ?」
「これ」
「一口ちょうだい」
「嫌です」
「なんで?」
「自分で買ってください」
「ケチ」
「先輩が図々しいんですよ」
「後輩って先輩に優しくするものじゃないの?」
「そんな決まりありません」
「冷たいなぁ」
「はいはい」
そう言いながら、kyoは自分の皿から一口分だけ俺の方へ寄せた。
「……くれるんじゃん」
「うるさいです」
「優しい」
「違います」
「優しい後輩だなぁ」
「食べないなら返してください」
「食べる」
俺は笑いながらそれを口に入れた。
こんな時間が心地いい。任務中は命のやり取りをする。でも、こういう場所ではくだらない話をしている。その差がなんとなく好きだった。
「先輩」
「ん?」
「スパイって、ずっとこんな感じなんですか?」
「こんな感じって?」
「任務したり、訓練したり、飯食ったり」
「まあね」
「もっとこう……映画みたいな感じかと思ってました」
「映画?」
「秘密基地があって、毎日危険な任務して」
「そんな毎日命懸けだったら疲れるよ」
「先輩は疲れなさそうですけど」
「俺だって疲れる」
「嘘っぽい」
「ひどい」
そんな日が何日も続いた。訓練をして、資料を整理して、たまに任務へ出て。任務から帰れば、くだらない話をする。気づけば、kyoがこの場所にいることが当たり前になっていた。
──ある日の夜。
俺は一人で訓練室にいた。誰もいない静かな部屋で俺は銃を置き、深くため息を着いた。
「……疲れた」
そのまま椅子に座って目を閉じる。
「先輩?」
「……ん?」
扉のところにkyoが立っていた。
「先輩まだいたんですか」
「そっちこそ」
「忘れ物です」
「何?」
「これ」
kyoが何かを持っている。よく見ると俺が昼間置きっぱなしにしていた資料だった。
「あー……」
俺は立ち上がる。
「ありがと」
「どういたしまして」
kyoは帰ろうとする。
「……待って」
「はい?」
「ちょっと付き合って」
「何にですか?」
「もう一回だけ訓練」
「今からですか?」
「うん」
「先輩、疲れてるんじゃないですか?」
「だからこそ」
「……分かりました」
最近は、少し分かるようになってきた。
こいつが次にどこへ動くのか。何を考えているのか。ほんの少しだけだけど。
「……そこ」
俺がkyoの腕を取る。
「くそ…っ」
kyoは体制を崩してしまうが俺が腕を引っ張り体を支えた。
「はい、俺の勝ち」
「ちょっと先輩…近いです」
「あぁ、ごめん…」
「はぁ…いつになったら勝てんだろ」
「これで本気出してないのは強すぎ…」
「まー経験の差ってやつかな^^」
「…」
「昔からスパイなんですか?」
唐突の質問に俺は少しだけ驚いた。
「……なんで?」
「なんとなくです」
昔から。そう聞かれることはあまりなく、不思議に思ったが部屋に戻りながら話す。
「まあ、長いよ」
「どれくらい?」
「……結構」
「曖昧ですね」
「うん、あまり昔話をするのは得意じゃなくてね」
kyoはそれ以上聞かなかった。
「じゃあ」
「ん?」
「いつか、話してくださいよ」
「何を?」
「先輩の昔の話」
「……」
「駄目ですか?」
「うーん…そのうちね」
「約束ですよ」
「うん」
俺はぶっきらぼうに返した。
rd side――――――――――
それから何ヶ月もたった。
その日は、珍しく任務がなかった。朝から資料整理をして、昼過ぎには訓練をして。夕方にはやることがなくなった。
「暇だなぁ……」
「仕事してください」
「したよ」
「まだ資料残ってますけど」
「明日の俺がやる」
「今日の俺は?」
「帰る」
「先輩、本当に自由ですね」
「褒め言葉?」
「全然違います」
「そっかぁ」
kyoが呆れたように息を吐く。俺は椅子に深くもたれかかった。窓の外を見るともう日が落ち始めている。夕焼けが建物の隙間から差し込んで、床をオレンジ色に染めていた。
「……今日はもう部屋に戻るか」
「そうですね」
kyoも立ち上がり2人で廊下を歩いていた。
「先輩」
「ん?」
「ちょっと聞きたいことあるんですけど」
「何?」
「前に言ってたじゃないですか」
「何を?」
「昔の話」
「あー……」
いつか、話してくださいよ。
そのうちね。
約束ですよ。
そんなやり取りをした。
「覚えてたんだ」
「覚えてますよ」
「律儀だねぇ」
「先輩が忘れてるだけです」
「まあ、そうだけど」
「そんなに聞きたい?」
「はい」
「……そっか」
「じゃあ、飯でも食いながら話す?」
「いいですよ」
「奢らないけど」
「そこは奢ってくださいよ」
「やだ」
「ケチ」
「新人が先輩に言う言葉じゃない」
「じゃあ先輩が奢ってください」
「結局そこに戻るの?」
ふたりで食堂へ向かう。時間が遅かったから、人はほとんどいなかった。適当に食事を注文して、いつものように向かい合わせに座る。
「それで?」
「何から聞けばいいですか?」
「知らないよ」
「先輩の話なのに?」
「俺、自分の昔話するの苦手なんだよね」
「じゃあ俺が質問します」
「どうぞ」
「何でスパイになったんですか?」
「……」
俺は窓の外を見た。辺りはすっかり暗くなっている。昔のことなんて、普段は思い出さない。思い出す必要もないと思っていた。でも。目の前にいる後輩は、黙って俺の返事を待っている。
「俺さ、探している人が居るんだ」
「……探している人?」
「うん」
俺は箸を置く。
「それまでは何も考えずにスパイやってたんだけどね笑」
「スパイに入った時は理由なんてなかった」
俺は重い話など好きではない。重い空気も好きではない。だから場を和まそうと少し笑うが、kyoは笑わなかった。ただ静かに聞いている。
「昔、任務中にとある少年を助けた」
ここから先は、俺のずっと昔の話。
「その子は身寄りがなかったので、俺は引き取って、大きくなるまで世話をしようとした」
「……」
「最初はさ、本当に何も考えてなかったんだよ」
任務の途中で助けた。それだけだった。
自分でも、どうしてあの時助けたのか分からない。でも…
「その子、すごく変な子でさ」
「変な子?」
「うん。最初は警戒してたんだけど、少しずつ慣れてきて」
「俺が帰ってくると、玄関まで走ってくるんだよ」
「……へぇ」
「俺が遅いと、玄関でずっと待ってるし」
「子供っぽいですね」
「子供だからね」
「そいつは幼いながら、俺の活動に興味があったのか、現場に行きたいとか言い始めてな?」
「連れていったんですか?」
「一回だけ」
「一回だけ?」
「うん」
俺は苦笑する。
「危なかったから、もう二度と連れていかなかったけどな」
「……そんなに危険だったんですか?」
「まあね」
その時のことを思い出す。小さな背中で、自分の後ろをついてくる足音が聞こえてくる。何も知らないくせに、目だけは輝いていた。
「なぜだか分からないけど、守らないと、って思えたんだ、その子をね」
「その時、気づいたんだ」
自分が何のためにこの仕事をしているのか、それまでそんなことを考えたことなんてなかった。ただ任務をこなして、命令されたことをやって、生き残るだけ。
「俺は、子供の笑顔を守りたい」
この言葉を口にした瞬間、自分でも少し恥ずかしくなった。
「子供がみんな笑っている、そんな平和な世界にしたいって」
「……」
「だから、今もこの仕事を続けてる」
「その子は?」
「……いなくなった」
「……え?」
「元々、その少年を監禁していた組織に、また見つかってしまってね」
「俺が任務で家を空けている時に、また連れ去られちゃったんだ」
「……」
「帰ってきたら、もういなかった」
それ以上のことは、あまり話したくなかった。あの日のことを。もっと早く帰っていれば。もっと警戒していれば。
もっと──
考えたところで何も変わらないのは知ってる。
「それから、ずっと探してる」
「……見つからないんですか?」
「まだ」
「何年も?」
「うん」
「手掛かりは?」
「ほとんどない」
「それでも諦めるつもりはないけどね」
kyoは黙っていたが口を開く。
「……探すの、手伝いますよ」
「え?」
「その人」
「手伝ってくれるの?」
「まぁ…聞き込みとか?色々やってみます」
「なんだかんだお前優しいよな」
「手伝いませんよ」
「ごめんごめん笑」
「もしかして…その組織って何年か前にニュースになっていた組織ですか?」
「うん」
「危険なところですよね?」
「そう」
「……こんなこと、言いたくないですけど」
「うん」
「もう、生きてないかも……ですね」
「……」
「……そうだね」
否定できなかった。あれから何年も経っている。あの組織がどんな場所なのかも知っている。だから、そんな可能性を考えたことがないわけじゃない。
「まぁ、これで俺の話はおしまい」
「さぁ、次はkyoの番だよ」
「え?」
「俺だけ話すのはフェアじゃないでしょ?」
kyoはやられた…。みたいな顔をしているが
「…そうですね」
と言い話してくれた。きっとこいつにも良心があるんだな。
「俺は昔、助けてくれた人を探しています」
「へー?お前も探している人がいるんだ…。」
「はい、すみません。俺これ以上あまり言いたくなくて…」
「大丈夫だよ、無理には聞かない」
「“ 漫画の世界 ”だったら、お互い探している人がお前だったっていうオチなんだけどさ」
「……あいにく、お前とは全然ちがう人なのを覚えているよ」
「こっちも全然ちがいますね」
「お前みたいな893っぽい性格じゃなくて」
「誰が893ですか」
「フードを深く被らないで、笑顔にこにこの可愛い子だったからさ」
「緊張すると手先をずっと動かして、すーぐ唇をかみしめて……」
「可愛かったな…」
「まぁ」
kyoが話を戻す。
「こんな先輩でもお世話になっているので、人探しに付き合います。心配しなくても大丈夫ですよ。俺がすぐ見つけてやります」
「一言余計なんだよな……」
「事実です」
「はいはい」
「じゃあ俺もお前が探している人見つけんの手伝うよ」
「……その子、俺のこと覚えてくれてるかな」
「…覚えてますよ。俺だって、助けてくれた人のことを忘れた時はないです」
俺はその言葉を聞いて安堵した。
「……そっか」
「ありがとう、kyo」
「こんなこと言えるのは久しぶりだよ」
「俺もですよ」
俺が昔助けた子は…
生きているのかどうか。
答えを知るのは、少し先の話。
――――――――――
見てくれた方が多かったら続きを出します
( .ˬ.)”
コメント
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ポテサラさん、第1話読ませていただきました! タイトルの「まだ君を知らない」が、ラストの二人の会話でじわっと効いてきましたね…。rdとkyoの距離感が少しずつ縮まっていくプロセスが本当に自然で、特に訓練後の会話のテンポが心地よかったです。kyoの「俺も探している人がいる」で一瞬空気が変わるところ、すごく好きでした。 あと、rdが昔助けた子のことを「フードを深く被らないで、笑顔にこにこの可愛い子」と話すシーン、切なくて何度も読み返しました。続きが気になります!