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nmmn注意
ご本人様には関係ありません
nmmnという言葉がわからない方は見ないでください。
誤字脱字あるかもしれないです。
微橙青
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放課後の校舎は、昼間の賑やかさが嘘みたいに静かだった。
窓は、今朝からずっと降っている雨で濡れており、
そのためか、教室内もずっとじめじめとした蒸し暑さだった。
廊下は俺以外誰もおらず、自分の足音だけが廊下に響き渡る。
いつもならすぐ帰っているところなのだが、今日は別だ。
なぜならあの子との約束があるから。
あの子はいつも授業を受けずに屋上で寝ていて、
俺に対してなかなか生意気なやつだ。
俺より身長が低く、髪の毛は水色で制服の上にパーカーを着ており
目はくりっとしていて、一見可愛らしい人だが
校則を破り、口はどちらかというと悪い方だ。
噂だけだとあまり関わりたくない人だったが、
偶然屋上に行ったときに俺はあの子に気に入られてしまったのだ。
なぜ俺を気に入ったのか聞いてみると、関西弁は今までそんなに見たことがないし
なにより面白いから、
という訳らしい。
俺は最初こそはぐいぐい話しかけてきて、苦手意識を持っていたが
段々と話していくうちに、共通の趣味や話題がどんどん広がっていって
苦手から友達へと変わっていった。
そんなあの子と一週間に一度屋上で絶対会う、
という約束をした。
今日はその約束の日。
あの子は大事な話があるから、今日だけは絶対に来てほしい
と先週言っていたのだ。
俺は約束は守るタイプなので、
今日はホームルームが終わるとすぐさま教室をでて
早歩きで屋上へと向かう。
階段は一段を飛ばしてつぎつぎ登っていく。
すると少し錆びており、銀色っぽい古臭い扉が見えてくる。
ドアノブを持ち、そっと前へと押すと、水色の髪が視界にうつる。
「ころちゃん!おまたせ。」
俺がそうあの子に呼びかける。
すると
『ジェルくん、!』
と元気に目を輝かせながら振り向くのだ。
今は雨が降っており、彼は傘もささず屋上にずっといたのだ。
「傘もささんと、ずっとまってたん?」
『そうだよ−!』
と彼は無邪気に笑いながら言う。
「傘ささへんと、風邪ひくで?」
流石に傘もささずにずっと屋上にいたとなると
風邪をひいてしまわないか、心配になる。
ころちゃんはただでさえ昔から体が弱いと言っていたのだから。
『大丈夫!僕風邪はもうひかないから、』
という。
俺はそこで彼の話している言葉に違和感に気づければよかったのだ。
「で、ころちゃん。大事な話ってなに?」
今日屋上に来て一番肝心な話を持ち出す。
『、、』
彼は少し黙り込んでから俺の顔を真っ直ぐ見つめる。
『僕さ、昔っから体弱いんだよね。』
と前話していたことを話し出す。
「それ、前も話してへんかった?」
ころちゃんは俺の言葉を無視して続ける。
『この体だからずっと入院と退院を繰り返してばっかりで、』
『お母さんとかにも迷惑かけちゃうし、なにより』
『高校生になってから、いじめられるようになった。』
彼が話した衝撃の事実に俺は言葉がうまく出なかった。
喉で何かが詰まったような、そんな感じでころちゃんに言葉をかけることができなかったのだ。
いじめ。
そんな言葉が頭でずっとぐるぐると回っている。
『ジェルくんは知らなかったでしょ?』
『僕はもうさ、辛いんだよ。』
『先生や家族に助けを求めても、”気にするな”で全部終わらせられるの、』
ころちゃんの話はとてもつらいもので
いままでどれだけ耐えてきたんだろうと、
なぜ俺は気づけなかったのだろうと考えずにはいられなかった。
『みんな僕のことは見て見ぬふりで、』
『誰も僕のことを助けてはくれなくて』
『ずっと、ずっと!僕の前にヒーローが現れることを待ってたっ、。』
『でもっ、誰も 、』
目の前のころちゃんは声を震わせながら必死に話してくれている。
目には大きな涙を浮かべて、拳は爪が食い込むほど力を込めて握りしめている。
そんな彼を見ている俺まで心がきゅっと辛くなった。
『そんな中唯一ジェルくんだけなんだよ、』
『僕にやさしく話しかけてくれたのは、友達になってくれたのはっ。』
『本当に感謝してる。ありがとう』
「ころちゃ、ん」
俺は今自分が出せる声を精一杯出そうとするも
出せたのは彼の名前だけ。
なぜ自分はこういうときにうまくできないのだろうか。
『ジェルく、』
彼は大粒の涙を屋上の床にこぼしなら最後に言う。
『さようならっ!』
ころちゃんは満面の笑みを浮かべながら屋上のフェンスに手をかけて、
登ってゆく。
俺はその背中をただ見つめることしかできなかった。
こんないくじなしの俺だけれど、俺は最後にころちゃんに言った。
「またどこかでなっ。」
俺では彼の死を止めることはできない。
そう分かってしまったからだ。
俺の言葉を聞いたころちゃんはそっと振り向いて
『すき、』
と言葉を残してふっと屋上から消えてしまった。
フェンスから下を見ると、頭から血を出したころちゃんが横たわっている。
「あ〜ぁ、」
「”今回”も失敗か、」
「ごめん、ころちゃんっ。」
俺も彼の後を追いかけるようにフェンスを登っていく。
今から落ちるというのに恐怖は全く感じられない。
また来世で会えるから。
俺はそう信じて落ちてゆく。
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最後までご観覧ありがとうございました。
少しは感動していただけると嬉しいです。
もしよければいいね、作品への感想があると幸いです。
コメント
2件
橙青も 以外と いいもんですね 👍️✨️