テラーノベル
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お昼すぎ、万魔殿の部屋で一人の少女が本を読みサボっていた。
イロハ「はぁ…涼しい。こんな暑い中外で見回り何て出来る訳ないじゃないですか…虎丸にエアコン付いてないんですから…」
今どこに居るんだとマコト議長からのメールを無視し優雅にクーラーの効いた部屋で寝転がっていた。
イロハ「..げ、アイスもう無くなってる….そうだ、先生にでも頼みましょうかね。ついでにサボりも.あ、でもあの人の事ですし..真正面から誘っても無駄ですよね..うーん..」
ただアイスを買ってくるついでに一緒にサボろうと誘っただけでは絶対にあの人はサボらない。むしろ仕事を持って来てくれるはず。それではサボる意味がないのでどうにか共犯にしたてあげようと考えていた。
イロハ「…!これは名案ですね、早速頼みますか。」
イロハは先生にとあるメールを送った。
シャーレ
クーラーが効く部屋で私は仕事をしていた。確かに快適ではあるが…量が多すぎる。
先生「…これ終わるかな…?」
ため息とリンちゃんに怒られるのは怖いなという気持ちでひたすら仕事を進めていると、モモトークが届く。
送り主 棗イロハ
件名 助けて下さい
「事情は着いたら教えます、とにかく緊急なので急いで万魔殿に来てくださ」
そのメールを見て背筋が凍り、ありとあらゆる最悪の可能性を考える。
先生「まさか見回り中に何かに巻き込まれ..いや、イロハの事だしこの暑さでそれは…まさか…この暑さのせいで倒れて..不味い、本当にっ…セナやマコトを頼らないって事は相当..エアコンが壊れたのかな…」
そこで考えるのをやめた。結論は恐らく暑さで倒れた。そう私は確信し、冷蔵庫の中のゼリー、アイス、氷袋を持って走って向かった。
数十分後
先生「イロハっっ!!大丈…..」
イロハのサボり部屋の扉を開け飛び込む。そこには倒れてもぐったりしてもいない元気なイロハが目に映った。
先生「….え?ていうか全然涼し..」
私の言葉を遮るようにイロハが話す。
イロハ「..ふふ、わざわざ心配してくれてありがとうございます、先生なら来ると思ってましたよ?さて、アイスはー..♪」
イロハが元気そうにこちらに駆け寄り、アイスの入った箱を嬉しそうに貰う。
先生「ちょちょ、待った!!えまさか…騙した!?」
イロハ「ふふ、暑い中ご苦労さまです先生。まぁお察しの通りですよ。てことで…一緒にどうです?どうせ急いできたから仕事も持って来てないでしょう?」
イロハが見透かしたように笑うが何も言えなかった。
先生「..仕事終わらなくなるから取りに帰るよ。」
イロハ「またまた。先生も薄々分かっているでしょう?今更仕事を取りに行くのはめんどくさいし外に出たくない、と。ならここで思いっきりサボって涼しくなったら帰ればいいじゃないですか。」
先生「それは..」
そう言いながらも正直図星なので何も言えなかった。
イロハ「まぁサボる分には良いでしょう?たまには仕事なんて放り投げて、生徒と休む..悪い提案ではないでしょう、先生もアイスどうです?」
先生「いやまぁ私が買ってきたんだけど..?」
自分の中でも呆れながら、仕方ないか、と少し休憩していくことにした。
先生「..あ、このアイス美味しい。」
イロハ「あ、私にもそれください。」
サボる生徒を止めずに教師が何してるんだ..と思いつつもやはり仕事の疲れだろうか。これは生徒の願い..と心の中で言い訳しながら、数時間も経ってしまった。
先生「あ、もうこんな時間..?帰らないと。」
寝そべった体を起こそうとするが私に寄りかかるイロハが中々退いてくれない。
先生「えーと、イロハ..?悪いけどそろそろ帰らないとだから..」
するとイロハが少し不機嫌そうに喋る。
イロハ「..先生は年端も行かないような女の子を一人で帰らせるんですか?先生も今、私の共犯なんですよ?
先生「うぐっ…す、すぐに支度します。」
荷物をまとめ部屋を出る。外はすっかり薄暗く、昼間よりは比較的涼しくなってきていた。イロハが呟く。
イロハ「すっかり夏ですね…私は冬も夏も嫌いではあるんですが。」
イロハの言葉に呼応するように風鈴が鳴る。
先生「でも私は好きだけどね。夏の外のこの匂いってなんか…空の香り?っていうか。それに暑いから冷房とかアイスが美味しく感じるでしょ?冬も同じだよ。」
イロハはこちらを見つめこう言う。
イロハ「..まぁ今日みたいな口実でこうして先生とサボれる訳ですし。」
私は単に不思議に思いこう聞いてしまう。
先生「えっ、そう?私としてはサボるのは慣れないけど…でもイロハだってイブキと遊べるじゃん?」
イロハ「…はぁ..鈍感なクソボケ先生には呆れますね。何でこういう時だけ勘が悪くなるんでしょうか。」
先生「酷い言いようだね!?」
イロハ「ま..半分冗談ですよ。実際私も今日は..助かったので。」
イロハがそう話すとイロハの家に着いたようだ。
イロハ「あ..もう着いちゃいましたね、」
手を振り背を向け帰ろうとする私をイロハは止める。
イロハ「..もしかしたら本当に私倒れるかもしれないんですよ?それでも帰ると。」
先生「えっ..まぁイロハの家だし..大丈夫でしょ。」
イロハが再び少し不機嫌そうにこう言う。
イロハ「そう言う問題じゃないんですよ、先生。」
イロハに優しく手を掴まれて玄関に倒される。
先生「イ..イロハさん..??」
イロハ「あのですね、先生。この機会に伝えておくとしましょう。キヴォトスの生徒は皆貴方に憧れ、尊敬し、好んでいます。それは私も同じ。..ここまで言えばわかりますかね?」
冷や汗をかきながら私は言葉を絞る。
先生「…私だって、皆が嫌いなはずはないよ。でも…恋愛は駄目なんだ。誰が許そうと、生徒の皆が望もうと、皆にとって私は、頼れる大人であって欲しいから。」
そこまで言ったところでイロハが退く。
イロハ「先生ならそう言うと思いましたよ。..まぁ私も今は諦めます。今は、ですけどね。」
安堵し立ち上がるが、
イロハ「ですがそれとこれは別です。先生は私をただの生徒だと思っているんですか?..そう思わないとするなら何故..大人の立場に縛られようとするんですか?」
その言葉に私は何も言えなかった。私にとって生徒は生徒。大切な子供だ。その意味合いが生徒にとって不快な物であるなら、変えるべきなのだろうか?
先生「….イロハには敵わないね。そうだね…私は確かにイロハが好きさ。でもその意味合いが恋愛的なものかと言えば..違う。けれど特別な何かを抱いてるとは思ってるんだ。…ただ、これだけ約束して欲しい。私は自ら望んでイロハの気持ちに応える。イロハはその事に喜んでくれる..なら私も嬉しい。でも後から一度は後悔するかもしれない。それでも..私を選ぶの?」
イロハは黙る。しかしその目に迷いは無かった。
イロハ「..言いましたね?私は既に決めています。先生と今もこれからも..全力でサボると。」
それでも若干恥ずかしそうなイロハに私は根負けし、その決意に答えるように抱きしめる。
先生「イロハ、君が選んだなら私も..君を撰ぶ。この選択が間違ってるとは思わない。本当に私で良ければ、またこれからも末永く、よろしく。」
緊張の糸が切れたようにイロハは微笑み、囁く。
イロハ「嬉しいのは当たり前ですが..そうですね、この際言っておきましょう。…よろしくお願いします。」
その後もイロハの家でお互い話し、シャーレに帰れるのは夜になっていた。
後に私たちは正式に付き合い、キヴォトス中に話は広がった。…まぁその日の仕事は終わらず、翌日リンちゃんにこっぴどく叱られたのだが。それでも私は今の生活が幸せだ。
イロハ「あっ、今…お腹蹴りましたね♪」
コメント
2件
訂正 完結したつもりが作品の設定を間違えていたため、これが完結となります..誠に申し訳ありません...まぁハッピーエンド..?だけどなんかおかしい気もしてるんですよね、なんで付き合って数ヶ月の生徒と教師が(自主規制)してんだよ、という。まぁ...至らない部分もあり大変申し訳ありません、大会帰りにアイデア詰めで勢いで書いたので無理やりすぎましたね。
あれぇ?最新作だからワクワクしてみてたら なんと!完結じゃぁ無いじゃないですかぁ!と言うことはぁ?この後が有るかも?って事なんですねぇ はい、そんなことは隅に追いやりまして... 今回も最高でした。メモロビの光景が浮かびました!(イロハ持ってないけど)途中から何とな~く察していましたが…ちょっと毒の文字が見えた気が…? 先生!あんた素敵な事言った後に何○○ましてんですか! エッ駄死! 貴方の製作速度に追い付けない 長文めっちゃ失礼しました