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親父やおふくろからの連絡は全て無視をした。
マンションの保証人はじいさんだから引越し先のことは伝えていないが、本気で探せば俺の居場所なんかすぐにわかるはずだから、探す気はないんだろう。
何かあればじいさんを通して連絡が来るだろうし、まだ俺には親父に向き合う勇気もなかった。
あいつが甲斐商事に関わってくることがあれば許せないし親父に心底絶望しているが、どうしても最後の一歩を踏み込むことが出来ないでいる。
親父の子供であると
親父から愛されたいという未練が
俺を苦しめる。
二人で揃え、作り上げて行った部屋は二人の世界になり、両親との関係が冷えれば冷えるほど瞳にのめり込んでいった。
瞳と一緒にいたあの大学時代が俺にとって1番幸せな時だった。
瞳は菓子メーカーの内定をもらい、俺は留学をするという名目で1年間、ニューヨークを起点にしてアメリカとヨーロッパにある甲斐商事の取引先を尋ねながら勉強をした。
二歳違いのあいつ、そして親父を蹴落とすために急いで力をつけたかった。
一年後の再会を楽しみにそれぞれの生活に入り時差の関係もあり、メッセージでのやり取りをしていたが、俺も忙しく瞳も新しい環境に苦戦していた。
以前に大学受験と恋愛を同時進行することができず気がついたら彼には新しい彼女がいたという話を聞いたことがあったが、仕事を覚えることに必死で余裕が無くなっているようで1年間はお互いのするべきことを優先することにした。
それでも、二人の絆が途切れることはないと思ったから。
それでも時折メッセージのやり取りをしていたが、そのうちメッセージが来なくなっていた。
忙しいのだろうと単純に思っていたが、一年が経ち帰国の報告をしたがリアクションが無く帰国をしてからも瞳に連絡をしたがつながらなかった。
そんな時、おふくろがマンションにやって来てどこかの老舗の娘とかいうのをお見合い相手として話を持ってきた。
学生時代には一度も来たことのなかったマンションだが場所は調べて分かっていたようだ。
俺が見合いを断ると瞳の話をしはじめた。
「学生のお遊びは終わったのよ、あのお嬢さんもそろそろ現実を見て終わらせちょうだいと言ったら500万円を提示されたわ、浅ましいわよね」
「そんなわけないだろ」
おふくろが何を言っているのかわからなかった、誰かほかの女と勘違いしているのかとも思ったが、おふくろの言葉に打ちのめされる。
「500万円受け取ったわよ、結局その程度だったのよ。格差があればそういうことになる。だからきちんとしたお嬢さんと付き合いなさい」
それでも、その言葉を信じられず瞳の実家に会いにいくと、瞳の父親に金で片のついた話だと聞いて絶望した。
結局は瞳も俺を金で売ることができる程度にしか思っていなかった。
昔、遊んだ女たちもおふくろも、そして瞳も、もう女を信じることも愛することもないと思った。
それから復讐でもするように一晩だけの女を見つけて抱いた。
仕事で疲れたときも悩んだ時もそれを吐き出すためにBARに行き、声をかけてきた女と一晩だけ共にしていた。
普通に荒れていた。
そんな時、同窓生だという女が現れた。
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