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マオという人を思い出した。
学生時代、初めてのデートで楽しかった気分を壊すメッセージを送ってきた人。
そして
凌太と付き合ってしばらくした時、里子が授業に行き私は授業がない為、中庭のベンチに一人で座って小説を読み始めた。
あの日は凌太は午後は授業が無くアルバイトに行っていた。
「こんにちわ」
読書に夢中で隣に誰かが座った事に気づかず、急に声をかけられびっくりしたことを思い出す。
「リョウの彼女よね」
初対面のその女性は私が凌太と付き合っていることは分かっているという断言的な物言いをした。
その女性の纏う雰囲気は学生のそれではなく社会人だということが容易にわかる落ち着きがあった。
ベリーショートの髪はボーイッシュというよりもむしろ大人の女性の色気を感じさせた。
「何か?」
女性は足を組むとその足に腕をついて頬杖をつきながら私を見定めるような目線を送ってから小さく鼻で笑った。
失礼な人
「リョウはあなたとのエッチで満足してる?彼はホテルに入るといきなり獣になるのよね。だからわたしが×××すると、××が×××になって凄いのよ。あっ、彼女だから知ってるわよね」
聞くに耐えない単語が並び、私は耳に見えない蓋をした。
「名前を言ってなかったよね、マオです。リョウってエッチが大好きだから一人や二人じゃ足りないし、リョウの××って最高よね。他のセフレとの接点がないからリョウのアレのことを話せる人ができて嬉しい。これからはわたしも回数を増やすから瞳ちゃんは月に1回位で大丈夫よ。だって、あなたよりわたしの方がリョウを喜ばせることができるもの」
!?名前・・・どうして知ってるんだろう。
っていうか、凌太はあの時IDをブロックしたのはポーズだけで本当は別れて無かったのだろうか?
疑問はあるし、正直怖いけど何よりもマオという人の微笑む顔がとても不気味で美人なのに気持ち悪く見える。
言い返す言葉が見つからない。
以前にもそんな事を言っていた人が居た。
隣にいる女への恐怖心と凌太への猜疑心とないまぜになって喉が渇く。
何かを発しようとしても乾ききった喉からは音が出そうもない。
「ひとみぃ〜」
声のする方を見ると友人の真美とその彼が手を振っている。慌てて立ち上がると一目散に二人の元に駆けた。
ひどい表情をしていたらしく二人に心配されたが身体中を波打つような鼓動を悟られないようにするのが難しかった。
マオの放った言葉は呪いになって凌太が好きだし一緒に居たいと思うのに一緒にいると苦しくなる。
感情とはうらはらに、まるで能面の近江女のようになにか執念めいた微笑みを思い出すと、凌太がそんな彼女と享楽にふける姿を一瞬思い浮かべて気持ちが悪くなる。
それでつい拒んでしまってから、またマオの”これからはわたしも回数を増やすから”という言葉を思い出して、焦ってしまった。
その時の凌太の”別にセックスがしたくて付き合ってるわけじゃい”の言葉に、私とはしなくてもセックスのために他の女性とも付き合っているということなのかと今まで気が付かないふりをしていた心が砕けてしまった。
私の話を聞いた凌太はマオが勤めている病院に行って話をするといっていた。
どういう話をしたのか私からは聞かなかったが、それ以降マオが私に接触してくるとはなかった。
でもあの時は、私は凌太と付き合っていたからわかるけど、って、それもおかしな話だけど今回は付き合っているわけじゃない。
凌太の付き合ってる人はいないというのは、恋人はいないけどセフレはいるということなんだろう。
正人との離婚は別に簡単な気持ちで決めたわけじゃない、心に傷が無かったわけじゃない。
それを、何も知らない凌太のセフレがSNSに流していいようなことじゃない。
ストーカーのようになったマオのように、わざわざ私をみつけて標的にすることに納得がいかないし、それ以前に恐怖を感じる。
なによりも、私が昔に凌太と付き合っていたことはどうして知っているんだろう。
名前を知らなかったほど松本ふみ子という人間を知らないのに、彼女は私を知っていることが気持ちが悪い。あの時のカラオケでの飲み会でも彼女は少し浮いていたように見える。
凌太しか知り合いがいないかのように感じた。だとしたら、凌太が自分で話をしたんだろうか?
やはり凌太とはもう距離をおいたほうがいい、学生時代のようにただ好きだということで付き合う事ができる年ではないし、私はすでに失敗している。
そう思っても心の片隅にチリリと痛みが走ったが、あえて意識をしないようにした。
香港との時差は1時間くらいだから、良心的な時間に[お休み]ラインが入る。
ただ、返事をする気になれず既読をつけずにそのままにしていると幾つかメッセージが溜まってきて帰国後に会おう的な言葉が通知画面で確認できた。
また預かり知らぬ所で傷つけられるのは嫌だ。