「桜綾妃、失礼します。」
「わざわざ足を運んでいただいて…。今日はごゆっくりどうぞ。」
入れ替わり初日の緊張感と、帝という圧で体が縮みそうだ。
帝はかなりの美丈夫で、眼鏡とくるんと毛先がカールした髪が特徴的だ。帝と言うにしてはかなり謙虚で落ち着いていそう。
「ありがとうございます。改めて顔を合わせるのは初ですが、何卒。私は沐宇と申します。」
「沐宇様…いえ、帝。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「…沐宇と呼んでいいですよ。」
帝は柔らかい笑みを浮かべる。美しくて思わず見入ってしまうような眩しい顔につい本心が出てしまいそう。
「いえ、ですが失礼に当たります…。」
「私がいい、それがいいのです。…無理にとは言いません。」
「いえ、ではそう呼ばせていただきます。」
「ありがとうございます。」
「…ところで、何かお好きなものはありますか?侍女に準備してもらおうかと。」
「いえ、私はあまり食べるのが得意ではなく…。お話だけだと荷が重いですか?」
「…正直、お目にかかるのが初で。緊張しています。」
「そうですか、それは。私と同じです。」
「そうなのですか?」
「私の兄…以前の帝は怖い物知らずで。私はその真反対にすごく臆病で人見知りで。親も社交的な兄を可愛がっていたものですから。人と話す機会があまりなく…。」
「…そうだったのですね。沐宇様と重ねるのは無礼な気もしますが…。私も似た感じです。」
「…?」
「私の母は凄く美しくて。私があまり優れた容姿で生まれてこなかったことを恨んでいるらしく…幼い頃は外に出させてもらえなかった程です。」
帝があまりにも寄り添ってくれていて、つい自分のことを話してしまう。だめなのに。
「そうだったんですね。何か似ています。貴妃のところに伺うのが帝となって最初の訪問でしたので、そのように似たところがあって、少し安心した気がします。」
「それは何よりです。沐宇様で私も良かった、そう思っています。」
「ありがとうございます。…何か疲れているように見えますが大丈夫ですか?」
「あっ、私は大丈夫です。沐宇様もお疲れではないですか?」
「私は、体力的には自身がある方なので、全然このくらい。」
俺も自信あるけれども。女性になりきるのはやはり難しい。自分の事をつい言ってしまいそうになる。
「それでしたら、よかったです。」
「…初めてお会いしたばかりなのですが、寝具お借りしても…?」
「はい、どうぞ。」
やはり疲れているではないか。…ここで寝るのか?帝が。
「…桜綾妃は?」
「…?」
「もしかして、ご存じない…?」
「はい?」
「…桜綾妃、こちらへ。」
「はい、ご一緒させていただきます。」
添い寝だろうか?
「…そういうことではないのですが…。」
「?」
もうだめだ。訳が分からない…。
「少し失礼します。」
テンパっている俺を見て、わかっていないと悟ったのだろう。俺を膝下から掬い上げた。
「へっ?」
「手荒で申し訳ない。」
少し余裕がなさそうな、緊張した面持ちで俺をベッドに下ろす。その上から、帝が見下ろしている。
「…?」
「妃、失礼いたします。」
NEXT1000
コメ返遅れます!
あと週末は浮上できる人です✌
コメント
4件
わー帝きましたー‼︎初夜ですねこれはありがたい!w わかってない妃が可愛すぎだし、早速手荒な帝ありがとうございます
帝がmf君なの神過ぎる!!! 続きが楽しみです! これからも頑張ってください! 応援してます!!