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私を助けてくれた人

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私を助けてくれた人

13 - 第13話

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2024年06月12日

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夜程苦痛な時間はないなと私は思う。



今日も、吉田さんが寝ているのをいいことに、夜中のベランダでぼーっと空を見上げる。


少し肌寒くて、でもそれが気持ちよくて。


晩酌用にって買ってもらっていた缶チューハイを、勝手に冷蔵庫から取り出してプルタブを引いた。

お酒が強い父の血が流れているからか、お酒は割りと強い方。なんだろう。ほんと血縁関係って気持ち悪いよね。


夜風に当たりながら嗜むお酒も悪くない。




「いたぁ~。もぉひな、探したじゃん、。」

「なんでよ、私なんか放っといていいよ、」

「…お酒なんて珍しいじゃん。」

「…飲みたくなって、。」

「酒癖悪い?」

「そこは父親に似なかった。」

「へぇ~。じゃあどうなるの?」

「…変わんない。ちょっと楽しくなるだけ。」

「でもひとりで飲んでたら変わんないよ?」

「好きなお酒は?」

「…まだ決めない。よく知らないから。」




ぐるぐるぐるぐる、変な方向へ思考がまわってしまうから、今日は、今日くらいは、お酒に力を借りて寝てもいいよね、。



「考え事?」

「…まぁ、」

「俺が聞いてもいいやつ?」

「…そうね、」

「じゃー聞かせてもらってもいい?」



いつの間にか、寝起き特有の掠れた声じゃなくなっていて、いつもの吉田さんになっていた。



「血の繋がりが無性に気持ち悪くて、。」

「血縁関係があるってだけでさ?」

「…あなたたちは家族ですってなるんだよ?」


「ありえないわ。気持ち悪い。」


「そーゆー家で育ってきたからさー?」

「…やっぱり、暴力的だし口悪いじゃん、?」

「…まじでないなって思うんだけど、…」

「どうしてか直せなくてさぁ?」

「…駄目だよね、。」




無理やり口角をあげる。




「口悪くてもいいんじゃない?」

「俺だってそんな綺麗な言葉遣いじゃないし」

「それに 血の繋がりなんてどうでもいいじゃん」

「だからそんなに気にしなくていいよ」




仁人くん。

彼の言葉に私は救われてきた。

彼がいたから、彼が声をかけてくれたから

私は彼の家で彼と生きれてるんだ。




「仁人くんも口悪いもんね」

「ん、ね。 」

「…え、てか名前!いつの間に?!」

「…さっき」



そう言って笑っておいた。




私は家族を殺そうとしていた。

あの人たちを刺し殺して、自分も死のうって。

それか毒を盛って無理心中。

それくらい、あの家の居心地が悪かった。




「…喧嘩がはじまる度、殺したくなってた、」

「これは虐待じゃないし、DVでもないって、」

「私の心が弱いだけだって、」

「私が悪いんだって、」

「耐えて、耐えて、耐えれてたのに、…」

「…無理になっちゃった、。」

「家族から距離置いちゃった、。」



いつの間にか缶の中は空っぽで、空に浮かぶ月も、いつの間にか空の上の方になっていた。

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