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数分後、准と涼は加東のいるリビングへ戻った。気まずさは最高潮に達しているものの、加東の前では努めて平静を装った。

飲み物を啜る音が虚しく響く。そんな中、加東は小首を傾げて言った。


「何かなぁ。俺、涼君と会ったことある気がすんだよね」

「は、はい!?」


カップをテーブルに置き終わった涼は裏返った声を上げた。明らかに動揺してしまっているが、加東はそんな彼を興味深そうに見つめている。

「うん、やっぱしそんな気がしてきた。でもどこで会ったのか思い出せないんだよねぇ」

「いや、多分人違いですよ。俺は加東さんとお会いしたの、今日が初めてなんで。ね、准さん?」

「あ、あぁ……俺もそう思いますよ。涼の職場は遠いから会う機会なんてないと思います」

准は真面目に考えるフリをして、内心申し訳なく思った。

彼の言うとおり、既に一回会っている。……女装した涼と。

あの時はばっちりメイクしていたけど、やっぱり面影は残る。涼は少し印象的な顔立ちの美人だ。加東の頭の冴え具合でバレる可能性は大いにある。

「そうか……だよね、ごめん。やっぱ俺の気のせいかもしんない」

しかし加東は困ったように頭を掻いて天井を仰いだ。どうやらバレずに済みそうだ。

まぁ今となっては別にバレても良かったんだけど……。

と思ったのが顔に出ていたのか、横から涼に睨まれた。それは軽くスルーし、咳払いする。

「そういえば加東さん、なにかお話があるんでしたよね」

「あ、そうだね。うーんと……」

加東は少しだけ後ろにもたれかかると、涼を一瞥した。また、その視線に気付いた涼がサッと立ち上がる。


「なにか大事なお話みたいですね。ちょっと俺、お酒買いにコンビニ行ってきます。おふたりとも、まだ飲み足りないでしょ?」

「あぁ……そうだな、それなら俺が」

「大丈夫ですよ、俺が買ってきますからゆっくりお話しててください。じゃ、行ってきます!」


止める暇もなく、涼は上着を持って出て行ってしまった。

「……っ」

追いかけようとして立ち上がる。しかし客人の加東をひとり残すわけにもいかず、ぐっと踏みとどまった。


嫌だな。今あいつから目を離したくないんだけど……。

不安になる。ちゃんとここに戻ってくるだろうか。

独りにさせたくないのに────。


「おーい、准くん?

「は、はいっ!」


背後から名前を呼ばれ、肩を叩かれる。反射的に姿勢を正した。


ファナティック・フレンド

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