太宰の目が失明してから二週間が経った。
二週間経って大変だと思う事が一つある。
それは【幻覚痛】
幻覚痛の所為で夜寝れていない状態が続いているのが現状だった。
首領から痛み止めを処方されているが効果は出ていない。太宰は薬への耐性が付いているから効きずらいとの事だった。
幾ら太宰でも、苦しんでいる姿を見るのは心が痛んだ。
太宰「う”ッ」
中也「大丈夫か?」
太宰「い”た”い”ッ」
中也「薬の量増やすか?」
太宰「どうせ、効かな”いからい”い」
俺はいつも見守る事しか出来なかった。
太宰「中也”ッ痛い”」
太宰「痛いよぉ”」
中也「大丈夫、大丈夫だから」
太宰「う”ぅッ」
中也「…..」
本当に自分は無力だと思う。
苦しんでる太宰を見て何も出来ない。
太宰「ごめん”、いつも”」
中也「気にすんな」
中也「俺こそごめん、何も出来なくて」
太宰「中也”は悪くないよ」
これがいつもの会話だ。
首領はこの状況を知らない訳ではなかった。しかし、打つ手がなかった。
太宰は最少年幹部だ。
それなりに功績もあるし成績も残してる。
それに人より優れた頭脳。
首領が太宰を使わない事など
あり得なかった。
俺の【汚辱】だって
太宰が居ないと使えない。
結局、俺の異能は太宰が居なければ
只のポンコツな異能だ。
首領はいつでも最適解を求めている。
その首領の最適解には
いつも太宰と俺が居た。
でも、幾ら何でも失明したばかりの太宰を
任務に行かせる事など出来ない。
その為、現幹部の三人を
フル活用している状態だ。
太宰は失明もそうだが、
精神的にやられていた。
あの病室で太宰は俺に
「取り敢えずは歩けるようにする」と
笑顔で言った。
でも、現実はそう甘くない。
何十分、何時間、何日
練習を続けても一向に歩ける気配は無い。
それに加えて夜の幻覚痛。
太宰の精神は擦り減っていった。
俺や首領が毎日見舞いをしているが
日に日に笑顔が見られなくなっていった。
そんな時に神様は不幸を振り撒く。
太宰の友人の織田作之助が死んだ。
ある任務で死んだそうだ。
織田作之助と太宰の関係を
知っていた俺は太宰に何と伝えたら良いか
わからなかった。
いつものように病室に見舞いに行く。
太宰の顔に笑顔は無い。
笑顔以前に感情が無い。
俺は勇気を振り絞って伝えた。
中也「太宰」
太宰「何?」
中也「あの、さ」
中也「織田作之助が、死んだ」
太宰「…えッ?」
俺は多分、一生あの顔を忘れる事はない。
あの絶望に満ちた顔を。
今にも泣き出しそうな顔を。
太宰「嘘、だよね?」
中也「…..」
太宰「ねぇッ!」
中也「…..」
太宰「…出て行って」
中也「ッ」
太宰「部屋から出て行ってッ!」
中也「わか、た」
病室から出た俺は病室の前の扉に座った。
部屋の中から泣き声が聞こえる。
…俺は結局、何も出来やしないのだ。
織田作之助の死から一週間後の事だった。
ビル全体の電気が停電した。
取り敢えず首領の安全を確保した後、
太宰の居る病室へ向かった。
扉を開けると冷たい空気が体に触れた。
其処に太宰の姿は無かった。
その日から太宰は消息を絶った。
後になってわかった事だが
停電の原因は
【何者】かによる電線の切断だった。
俺にはその犯人が直ぐに思い浮かんだ。
犯人は、
【太宰】だ。
色々、疑問は浮かんだ。
太宰はどうやって電線を切断したのか。
太宰はどうやって歩いたのか。
太宰はどうやってビルから脱出したのか。
太宰が消息を絶った理由は。
太宰は何処に居るのか。
疑問は尽きない。
でも、彼奴の様子がおかしくなったのは
織田作之助の死の後からだ。
病室に手がかりがないかと思い
太宰の病室へ向かった。
ベットの下を覗く。
何も無い。
枕の下を見る。
何も無い。
机の中を見る。
何も無い。
棚の引き出しを見る。
…其処には一枚の紙と一つの花があった。
手紙にはいつもの彼奴の字より
少しばかり崩れた字が書いてあった。
『中也へ
中也ならこの手紙を見つけてくれると思っていたよ。急に居なくなってしまい、すまないと思っている。
でもね僕、やりたい事が見つかったんだ。こんな僕でも出来るかもしれない事。まぁ、自殺するって言うのも良かったんだけどね。だけど、織田作がね僕に言ったんだ。
【救う側になれ、その方が幾分か素敵だ】とね。だから僕は人を救う側になってみるよ。出来るかわからないけどね。
君には今まで伝えられなかった事を伝えるよ。
失明して君が初めて僕の見舞いに来た日を覚えているかい?
その時に君は言ったよね。『似合わない声を出していた』と。僕にはその声がどんなものかわからないけれど、きっと泣きそうな声に聞こえたのかな?そうだとしたら多分合っているよ。失明したと伝えられた時、僕は泣きそうだった。僕は絶望していた。
…本当に君の勘は良く当たる。
あと、僕が君に『これからも相棒でいてくれる?』と聞いたのを覚えてる?
君はその質問に『当たり前』と答えてくれたよね。あれ、意外と嬉しかったのだよ?あの時も泣くのを堪えたよw
僕ね、実は自分で歩けるようになったんだ。自分が覚えている道なら。幾ら練習しても歩けるようにならないから心を病んだよ。でも、頑張って良かったと思う。
君にも沢山の迷惑を掛けたね。毎日見舞いに来るのは大変だったでしょう?森さんも毎日来ていたけど森さんより中也が来てくれる方が嬉しかった。…何か先程から僕らしく無い事言ってるね。
中也は暫くしたら幹部に昇格かな?今は準幹部だもんね。少しばかり君が幹部に昇格する姿を見たいと思ったよ。君は部下から慕われているからねぇ。幹部に昇格しても大変じゃ無いだろうね。きっと紅葉さんが喜ぶよ。
長い文になってしまったね。許してくれ給え。森さんに【ポートマフィアを辞める】と伝えておいて。まぁ森さんなら僕を捜そうとはしないと思うけど。
最後に。中也、頑張ってね。ポートマフィアとして。僕の【相棒】として。中也なら大丈夫かな。これから君は幹部として活躍していくだろう。そして森さんに認められ、部下に信頼される存在となる。これは予言だよ。僕の予言は必ず当たる。これからも準幹部、幹部として成長する事を願っているよ。
頑張れ、中也。
太宰治』
紙の上に水滴が落ちた。
それで気づいた。
自分は泣いているのだと。
此奴の初めての本音に聞こえた。
自分は何もしてあげられていないと
思い込んでいた。
でも、違った。
俺は太宰にちゃんと
【相棒】として言葉を掛けられていた事に
気付いた。
花に目を向ける。
ミモザの花。
黄色の美しい色をしている。
スンッ
甘く穏やかな匂いが鼻につく。
俺は誰にも聞こえないような声で
小さく呟いた。
_ありがとう、太宰
太宰が探偵社に入社した事が
明らかになったのはまた別のお話。
ミモザ
花言葉:友情・感謝
どうでしたか?
このお話はhappy endとなります!
but endも作ろうと考えています!
手紙の部分だけ文字数がエグいですねw
but endは
❤️1000で投稿したいと思います!
って言うか but end見たいですか…?
コメントに書いてください💦
では、バイバイ!
コメント
17件
ガチでもうほんと雲さんの作品神すぎて…どれ読んでも涙出てきます
やべぇ泣きそう
親の前で読んでていきなり泣いてしまった、、、