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朝起きて、いや、愛に起こされて、愛の母の手料理を食べ
「じゃ、くれぐれも気をつけるんだよ」
「うん」
「ヲノさんもダインさんも、どうか娘よろしくお願いします」
「おまかせください!命に換えてもお守りします!」
と胸をズンッっと叩くダイン。ペコッっと頭を下げるヲノ。柊家を後にした3人。
そして水人機械之都(ミズトキカイノミヤコ)の街を練り歩く。
昨夜柊家に来た、ダインと顔見知りのNeutral Keeper(ニュートラル キーパー)の2人
中芽(なかめ)律人(りつと)とジョゼ・ノウン・チカを探す。するとおそらく巡回の途中でお団子を買って食べて
ジョゼに見つかって、羽(手)で叩(はた)かれている律人を発見した。
「っぶね!おい、串が刺さったらどうすんだよ!」
とジョゼに叫ぶ律人。
「したら自分の同期のNK(Neutral Keeperの略称)に治療頼むんで大丈夫です」
「大丈夫なわけねぇだろ。ここ水人機械之都!うち(ムアニエル地帯)帰ったときにはもう終わってるわ」
「ご愁傷様です」
「まだ逝ってねぇよ」
「おいっすー律人くん」
とダインが話しかける。
「おぉ〜ダインさん!おはざっす!」
と言うとまたジョゼが羽(手)で叩く。
「おはようございますでしょ。ダインさん、おはようございます」
「ジョゼさんもおはよー」
叩かれた頭を摩りながら
「細けぇんだよなぁ〜…」
と呟きながらお団子を食べる律人。
「お団子食べてたんだね」
「そっす!」
と口の中に入ったまま喋る律人に
「食べてから喋ってください」
と言うジョゼ。
「いあ、食べえああ喋ってまーす(今、食べてから喋ってまーす)」
と「へへーん」顔で言う律人に
「今口の中にあるものを食べ終えてから喋ってください」
と語気強めに訂正して言うジョゼ。そして口の中にあるもの食べ終えてから
「え。歯と舌も?」
と言う律人に
「あぁ…。今リアルに殺意湧いた」
と猛禽類特有の鋭い視線を律人に向けるジョゼ。
「じょっ、冗談ですやんかぁ〜」
あまりの圧に軽く敬語になる律人。そして話題を逸らすように
「まっ、まあ、たまに地元に来たときくらい食べないと」
とお団子の刺さっている串をくるくる回しながらダインに言う。
「そっか。律人くんはここ(水人機械之都)出身か」
「にゅふぉんひんえすああ(ニッポンジンですから)」
団子を食べながら言う律人。
「鳥頭なんですか?」
と鳥の頭をしたジョゼに言われて
「ふぉめんなさい(ごめんなさい)」
と謝る律人。
「で、どうかされたんですか?」
とジョゼがダインに聞く。
「あー。そうそう。ジョゼさんに聞きたくて」
「私に?はい」
「あの、これからパッハ・ニラ・ボースクエに行こうと思うんだけど」
「あ、そうなんですか」
「そうそう。ジョゼさん地元だよね?」
「はい。NKになるまで過ごしました。ま、最近は帰れてないんですけどね」
「その、パッハ・ニラ・ボースクエについて軽く事前情報を欲しくて」
「あ、いいですよ。私で知ってることでよければ」
ということで5人で喫茶店に入ってコーヒーや紅茶などを飲みながら
ジョゼからパッハ・ニラ・ボースクエについての話を聞くことにした。
「なにが聞きたいんですか?」
「なに。そうだなぁ〜…。どんなとこ?」
「どんなとこ…。そうですねぇ〜…。ま、いいところです」
「ま、地元だもんね」
「そうですね。地元だから贔屓目があるのは間違いないですね。
んん〜…。とにかく自然に囲まれたところですね」
「自然に囲まれてる?」
「はい。島のほとんどが木々で覆われてます」
「そうなんだ?」
「はい。うち(パッハ・ニラ・ボースクエ)にはニャルニラと私たち鳥人が住んでいるので
基本的にはニャルニラと鳥人が過ごしやすい環境になってます」
「なるほど」
「私たち鳥人は木の上に家を持ち、ニャルニラは木の中に家を持つ
1本の木に鳥人とニャルニラが共住しているという感じなんです」
とジョゼが言うと
「あそこ(パッハ・ニラ・ボースクエ)のNKは大変だよなぁ〜。
見回りで家に行くとき、わざわざ木の上行かないと行けないんだから」
と、「あぁ〜パッハ・ニラ・ボースクエじゃなくてよかった」というように身を軽く震わせて言う律人。
「…ま。そうですね。大変だと思います」
「ちなみになんだけどさ」
「はい」
ダインが愛を見る。愛はダインが言おう、そしてしようとしていることが読めたので
紙を取り出してテーブルに乗せる。
「こんなとこパッハ・ニラ・ボースクエにあったりするかな?」
と言うダイン。その愛が出した紙というのは
愛が求める不思議な葉があるとされる場所が描かれた絵本の1ページの絵を、愛が模写したものだった。
ジョゼはそれを見て、律人も覗き見て
「…いやぁ〜…。わかんないですね」
と言うジョゼ。
「なんすか?これ?」
と言う律人。
「ちょっと探し物をしててね?ここにあるらしいんだけど」
「へぇ〜」
「私もパッハ・ニラ・ボースクエを隅から隅まで知ってるわけではないので」
と言うジョゼ。
「飛べるのに?」
と言う律人。
「飛んだからって隅から隅まで知れるわけないです」
「それもそうか」
「ちなみにマナトリアって、どんな感じ?」
「どんな感じ。…そうですねぇ〜…。だいたい地面の中にいますね」
「地面の中?」
「はい。うち(パッハ・ニラ・ボースクエ)のAlma Limpiador(アルマ リンピアドール)は
言わずもがなニャルニラと鳥人なんですね?ってなると地上、空は私たちが割と有利なエリアなんですよ」
「ま、知り尽くしてるだろうからね?」
「知り尽くしてはないですけどー。ま、ニャルニラは素早さ、そして跳躍力
そして爪を駆使して木など、ある程度高い場所まで登れますし
私たち(鳥人)は飛んでしまえば、飛べないマナトリアにしてみたら攻撃もできないですから」
「たしかにね?」
「ってなると生息域は土の中ってことになるんです」
「なるほど」
その後マナトリアについて軽く聞いた。
「ま、でも私も地元離れてから相当経っちゃってますし
実際に行って地元民に聞いてみたほうがいいかもです」
「うん。わかった。ありがとうね2人とも」
と言うダインに
「いえ」
と言うジョゼに
「お安い御用ですよ」
と言う律人。そんな律人に
あなたはなにもやってないでしょ
と思うジョゼ。そんなジョゼの気持ちが読めた愛はクスッっと笑う。
そしてお店を出た5人。そして5人で船着場へと移動する。
「んじゃ、ちょっと今から行ってくるわ」
「はい。お気をつけて」
「いってらっしゃーい」
と手を振る律人とジョゼ。船に乗り、船が動き出し、律人とジョゼに手を振る3人。
手を振り続けて、3人が割と小さくなってから手を下ろす律人。
「よかったんですか?」
と律人に聞くジョゼ。
「なにがー?」
「いや、ルノーさんにはここ(水人機械之都)に来たあの3人の様子を
確認してきてくれって言われただけですけど
パッハ・ニラ・ボースクエに行くってのを止めなくてもよかったのかなと思って」
「止める必要あんのかなー?てか、それこそ確認してきてくれーって言われただけだし
変にかき回して怒られるのも嫌だし」
「ま、それもそうですけど…。追いかけるとか」
「ま、追いかけろって言われたらいけばいいっ…しょ…。んん〜っ!」
っと伸びをする律人。
「さっ。けーるかー(帰るかー)」
「ですね」
「じゃ」
と言ってジョゼに「しゃがんで」というジェスチャーをする律人。
「は?乗せませんよ?」
「えー。またオレだけ船ー?」
「当たり前です。セクハラで上に報告してもいいんですからね」
「へいへーい」
飛び立つジョゼ。
「…オレ船苦手なんだよ…」
と言いながら船に乗り込む律人。
「お。見えてきたぞ」
ダインが太い人差し指で指指す。愛もヲノもそちらを向く。
「おぉ〜」
「鬱蒼としてますね」
木々に囲まれた島が近づいてくる。島の上空には鳥人たちが飛んでおり
船が船着場につくと、体が機械でできているマキナという種族のNeutral Keeperが
持ち物などの検査をしてきた。
「ようこそ、パッハ・ニラ・ボースクエへ」
と言われて塀で囲まれた道を進み、門を潜る。
すると首が痛くなるほど見上げないと天辺が見えないほどの木々が茂ったエリアが目の前に広がっていた。
愛、ダイン、ヲノの3人からしたら、まるで異世界に来たようだった。
木にニャルニラが登っていたり、上空の枝から枝に鳥人が歩いていたり
葉がついた枝が揺れたと思ったら、上空から鳥人が家に戻ってきていたり
マキナとニッポンジンの組み合わせや
ムスコルとニッポンジンの組み合わせのNeutral Keeperが挨拶しながら見回りをしていたり。
「すげぇ」
思わず呟くヲノ。
「ほんと。すごいですね」
と話していると
「おぉ〜?その類い希なる体型は、さてはあなたもムスコルですね?」
とNeutral Keeperの人が話しかけてきた。
「おぉ〜。こんにちは」
大きな手でガッチリ握手をするダインとムスコルのNeutral Keeper。
「こんにちは。今日はどうされたんですか」
「いや、実は探しー物?をしていまして」
「探し物?我々でお役に立てるなら」
ということで愛が、愛が求める不思議な葉があるとされる場所が描かれた絵本の1ページの絵を
愛が模写した絵が描かれた紙を出してNeutral Keeperの2人に見せて説明した。
「…。知ってるか?」
とムスコルのNeutral KeeperがニッポンジンのNeutral Keeperに聞く。
「…いやぁ〜…。わっかんないっすねぇ〜」
「そうですか。地元の人に聞いてみようってことで来たんです」
「なるほどですね。だったら、ちょっとわかりづらいと思うんですが
蔓(つる)がアーチ状になってる部分から商店街になってるので、そこの居酒屋なんかに行けば
ここ(パッハ・ニラ・ボースクエ)にずっと住んでいるおっちゃんやおばちゃんから
有益な話が聞けるかもしれないです」
とムスコルのNeutral Keeperが言う。愛、ダイン、ヲノは周囲を見回す。
「あ、ちなみにここはなんでもないエリアです」
愛、ダイン、ヲノの
じゃあここはなに?
という気持ちを感じ取り、ニッポンジンのNeutral Keeperが言う。
「なんでもないエリア?」
「はい。なんていうんでしょうか。主に鳥人の皆さんがお使いになる通路になってる部分ですかね」
と見上げるニッポンジンのNeutral Keeper。3人も上を見上げる。
「鳥人の皆さんもずっと飛んでたらさすがに疲れるらしいですし
上から見て誰の家か。とかわかりづらいらしくて。
なので基本的に、木の太めの枝が商業エリア、居住エリアを繋ぐような通路の役割になっていて
ニャルニラの皆さんは本来木の中に家持つんですが、ここのように、別の島から来た方がよく通るような場所は
どうしてもお家にはできないので、なんでもないエリアになってしまうんですよね」
「なるほど」
「じゃあ、あそこは〜…」
と愛が指指す。
「あぁ。あそこは別の島から来た方がお泊まりになれる、…民宿?なんていうんですか?」
とニッポンジンのNeutral KeeperがムスコルのNeutral Keeperに聞く。
「…ホテルってほど綺麗じゃねぇし、旅館ってほどでもねぇしな」
「ですよね」
「…ま、民宿でいいんじゃねぇか?」
「民宿です」
「なるほど」
「皆さんももしお泊まりになることになれば。ではお気をつけて楽しんでください」
と言いニッポンジンのNeutral Keeperが頭を下げる。
ムスコルのNeutral Keeperも頭を下げて2人で去っていく。
「さっ。情報収集だ」
ということで教えてもらった蔓のアーチを探し、商業街に入った。
そして居酒屋さんや定食屋さん、カフェ、武器屋さんや加工場など、様々なところに話を聞いて回った。
絵を見せて説明して
「知らないなぁ〜…」
と言われ、「どこどこのなになにさんなら知ってるかも」と言われて
そこに行って、そのなになにさんに聞いても
「知らないなぁ〜…」
と言われ、「どこどこのなになにさんなら知ってるかも」と言われて
そこに行って、そのなになにさんに聞いてーというのを繰り返した。
「…。みんな知らない知らないだな…」
と首を回しながら言うダイン。3人は一旦休憩ということで喫茶店に入った。
「やっぱり自分の足で探すしかないんでしょうか」
と言う愛。
「そうかもなぁ〜…。聞くよりも早いのかもな」
と話していると、喫茶店のニャルニラのマスターがお店が空(す)いていたので
「探し物ですか?」
と話しかけてきた。
「そうなんですよ」
とダインが言った後
「これなんですけどね?」
と愛が絵を見せる。
「…この場所を探しているということですか?」
「そうですね」
「心当たりありますか?」
「いやぁ〜?…すいません」
と申し訳なさそうな顔をする喫茶店のマスター。
「そうですか…」
と絵を見る愛。
「そもそもの話、あの絵本の話が本当の話してなのかも怪しくなってくるけどな」
と言うダイン。
「…私は信じてます」
ダインの言葉に、信じてきたものが揺らぎそうになるが
「信じている」という言葉を口に出すことで、落ち着かせる愛。
「絵本の絵なんですか?その絵」
とマスターが言う。
「あ、はい。絵本の絵を描き写したもので」
「もう一度見せてもらってもいいですか?」
とマスターが言うので、もう一度紙をマスターに渡す愛。その絵を見ながら
「絵本のタイトルって」
と聞くマスター。
「「きみとまた」ってタイトルです」
と愛が言うと、マスターは頷きながら
「なるほど。その絵か」
と呟き、愛に
「ありがとうございます」
と紙を返すマスター。
「その絵本の作者さんのご子息の方ならここ(パッハ・ニラ・ボースクエ)に住んでますよ」
と言うマスターに
「「ほんとですか!?」」
と言いながら立ち上がる愛とダイン。
マスターから住所を聞いて、3人でその絵本の作者のご子息がいるという家へ向かった。ドアをノックすると
「はい」
とニャルニラの青年が出てきた。
「あ、こんにちは。はじめまして。私(わたくし)柊愛と申します。えぇ〜っと」
と玄関先で事情を説明する。
「あ、そうなんですね。…ま、じゃ、そのマスターの喫茶店で待っててもらえますか?行きますので」
ということだったので、絵本の作者のことを教えてくれたマスターがいる喫茶店に戻り
待っていると、着替えて小綺麗にしたさっきのニャルニラのヒトが来た。
「お待たせしました」
「いえ」
「これのことですよね?」
とそのニャルニラのヒトは絵本をテーブルに出した。
「そうです。この最初のほうのページの」
「はい。ここですよね?」
とニャルニラのヒトがページを捲り、愛が模写した絵と同じ絵が描かれているページを開いた。
「ここについてのこと、なにか知りませんか?」
愛が聞く。
「…。これ描いたの、さっきも言ったんですけど、うちの祖母なんですね?」
「はい」
「もちろん自分も祖母にこの話を小さい頃読んでもらいました。
それで自分が大きくなって、その絵本のことについて自分も聞いたことがあったんです。
自分もこれが本当の話なのか、本当だとしたらどこにあるのかってのを知りたくて。
ただ…。自分が大きくなったときには祖母ももう歳で
記憶が曖昧になってるのか、「どこにあるの?」って聞いてもよくわからないことを言うんですよ。
「この界層(かいそい)にはない。別の世階(せかい)の、並大抵の気持ちのヒトでは辿り着けない場所にある。
根気よく探しなさい」って」
絵本を見ながら、首を軽く傾げそう言うニャルニラのヒトを前に、愛、ダイン、ヲノの3人は確信した。
この世界層にはないんだ
と。そしてもう1つ確信した。
別の世界層は本当にあるんだ
ということを。
「あの。お祖母様は。お会いできませんか」
と愛が言う。するとニャルニラのヒトの顔が少し変わったのを見て、心が読めた愛。
「すいません。嫌なことをお聞きしてしまって…」
と言う愛。ニャルニラのヒトは一瞬不思議そうな顔をしたが
「あ、ニッポンジンの方ですよね?そっかそっか。…。ま、そうなんです。なのですいません」
とニッポンジンが読心術を使えることをわかっていたので納得した。
「いえ。こちらこそすいません」
ということで絵本の作者のご子息のニャルニラのヒトにお礼を言って、ニャルニラのヒトは帰っていった。
「…さぁ〜て。どうするか。だな」
喫茶店に残った3人。
「ですね…」
「ただこの世界層にはないことはわかった」
コクコク頷く愛。
「それは大きな収穫だ」
コクコク頷く愛。
「でも、別の界層に行くにはどうすればいいのか、オレたちは、まっっ……たくわからないってことが問題だ」
「そうですね」
しばらく沈黙に包まれる3人。
「…とりあえずおっちゃんに報告に戻る?」
口を開いたのはヲノだった。
「そうだな」
「そうですね」
ということで3人は喫茶店を出て船着場へ向かい、船に乗り、ムアニエル地帯に向かった。