テラーノベル
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パッハ・ニラ・ボースクエには絵本の場所はなかったこと
しかし、パッハ・ニラ・ボースクエには絵本の作者が住んでいたこと
そしてその絵本の場所は別の世階(せかい)にあるということがわかり
一旦ムアニエル地帯に戻った愛、ダイン、ヲノの3人。
「おぉ〜。なんか懐かしい」
ダインがムアニエル地帯の景色を眺めながら言う。
「たしかに」
「ヲノは城に当分戻ってないから、ひさしぶりに帰ったらめちゃくちゃ懐かしいんじゃねぇか?」
と笑いながら言うダインの尻(ケツ)を蹴るヲノ。
「いった!」
ダインはムスコル。お尻の筋肉ももちろん鋼鉄。
「バカかよ」
と笑うダイン。
「声デケェって言おうとしたのに」
「あ、そっか。すまんすまん」
気づくの遅ぇよ
と思うヲノ。空はオレンジ色に染まり、もうすぐ夜。
夜まで自宅に帰ったりして時間を潰した3人。営業を終えた武器屋のおっちゃんことキャブを突撃した。
「おっちゃん」
背後から急にダインに声をかけられてビクッっとする武器屋のおっちゃん。
「ビックリしたぁ〜」
と言いながら振り返る。
「ダインか。いつの間に帰ったんだ」
「今日。ついさっき」
「そっか。で?どうだった」
「ってのをこれから報告しようと思って。とりあえず」
ということで場所をいつもの居酒屋へ移した。
「とりあえず、おかえり、乾杯」
「ただいま乾杯っ!」
「ただいま。乾杯」
私はただいまって言っていいのだろうか
と思いながらペコッっと頭を下げて
「乾杯」
と言う愛。4人で乾杯をした。
「んで?どうだった水人機械之都(みずときかいのみやこ)は」
「うん。ま、柊さんのお母さんに挨拶しに行って、妹さんにも会ってきた」
「そうか」
「で、よろしくされた」
「頼まれたってわけか。責任重大だな」
という武器屋のおっちゃん。
「で、柊さんが水人機械之都はないって言うから
それを信じてパッハ・ニラ・ボースクエにも行ってきたんよ」
「おぉ。そうだったのか」
「そうそう。今日の朝行って昼過ぎに出て、夕方に帰ってきたって感じ」
「なるほどな?…ってことは」
頷くダイン。
「なかった。っていうかある様子ではなかった」
「そうか」
「というか地元の人に聞いて回ったのよ。でも誰も知らないって言っててさ」
「で、あの絵本の作者さんのお孫さんがいるって教えていただいたんです」
「ほお」
「で、お孫さんに話をお聞きしたんですね?」
「うん。…ん?作者本人は?」
「あ、…。もう」
と言いづらそうにする愛の様子を見て
「あぁ…。すまんすまん。続けてくれ」
と気まずそうに謝りながら続きを促す武器屋のおっちゃん。
「で、お孫さんに聞いたらお婆様が作者さんらしくて
お孫さんがお婆様に聞いたことがあったらしいんです。あの絵の場所を」
「ほお?」
「そしたら「この界層(かいそう)にはない。別の世階にある」って言われたらしくて」
「ほおほお」
なぜか、どこか嬉しそうにする武器屋のおっちゃん。
「でな?存在することは確定したし、別の世界(世階)があることも確定した。
ただ行き方が全くわからんってことで、報告がてら帰ってきたって感じ」
「なるほどな?」
武器屋のおっちゃんが大きな木のジョッキのお酒を飲んでから太い腕を組む。そして目を瞑る。
愛はジッっと武器屋のおっちゃんを見て、ダインはお肉を食べながら武器屋のおっちゃんを見て
ヲノは普通サイズのジョッキでお酒を飲んで武器屋のおっちゃんを見る。
3人とも武器屋のおっちゃんが有益な情報を言ってくれると期待していたが
「うん。頑張れ」
と言うだけだった。
「は?」
と言うダインに
「…」
無言のヲノ。
…なるほど
と思う愛。
「なんかいい話聞けるかと思って期待したのに」
「いや知らねぇよ。知ってたら若気の至りで行ってるわ」
と笑う武器屋のおっちゃん。
「ま、おっちゃんはそーゆータイプだわな。…はあぁ〜…。情報ゼロか」
「根気よく探すしかないな」
「だなぁ〜…」
と言いながら肉を食べるダイン。
「…あ。そうだ」
と武器屋のおっちゃんがヲノを見る。
「ん?」
「おめえさんとこの主催で、変なイベントやるらしいぞ?」
と小声で言ってから店内のポスターを太い親指で指す武器屋のおっちゃん。
ヲノが店内の壁に貼られたポスターを目を細めて見る。その様子を見かねて
「なあ!あのポスターって予備あっか?」
と店員に聞く武器屋のおっちゃん。
「あれ?あるよぉ〜」
ということで
「ほい」
店員さんが持ってきてくれた。
「さんきゅ」
テーブルの真ん中に置かれたポスター。そこには
テクニックかパワーか。経験か若さか
50000Worth(ワース)を賭けた人生逆転の決闘。開催
と大きく書かれていた。
「なんだこれ」
「メモトゲ主催って書いてあるだろ」
「…ほんとだ」
「どうやら対人戦らしい。腕試しで出てみてもいいんじゃねぇか?」
「腕試し?」
「あぁ。オレもダインもヲノも柊さんも、今まで生きてきて、別の界層の片鱗すら見たことがなかった。
だから今まで通りのことをしてもダメなんじゃないか。ってな?」
「なるほど?」
「そうだ。だからなにか特別なことをやってみる。ってのもいいんじゃないか。ってな」
「なるほど!おっちゃんにしては頭良い!」
「にしてはってなんだ、にしてはって」
「すまんすまん」
「…あぁ…」
と納得しながらも
「…急になんだ?」
とポスターをまじまじと見るヲノ。ということで出場メンバーを紙に書いてメモトゲ家に送ることにした。
賞金が大金ということだけあって、ムアニエル地帯のほとんどと言っていいヒトが
チームを組んでメモトゲ家にチーム申請をしていた。しかし、さすがに全チームが闘うとなると、相当な時間
そして相当な怪我人が出るということで、応募の中からの抽選という形になった。
倍率は相当なものなので、4人とも無理だろうなと思っていたのだが
愛、ダイン、ヲノの3人のチームが選ばれた。と後日ダインの家にメモトゲ家から手紙が届いたのだ。
その日から決闘に向けて、愛、ダイン、ヲノの3人で話し合ったり
実際にマナトリアを相手にチームワークを高めたりした。
愛が自分に攻撃が来ても致命傷を負わないように、防御力を上げる魔法を自分にかけ
仮に致命的な攻撃を受けても、瀕死に至らないような魔法もかけ
ダインとヲノにも防御力と攻撃力を上げる魔法をかける。
しかし、魔法もバンバンかけられるわけではないので
まずは自分にかけて、それからダインとヲノの防御力を上げる。
魔法をかけるタイミングも重要で、効果時間が切れた瞬間に攻撃を喰らってしまうときも
攻撃力が上がっていれば、その一撃で倒せたのに。ということも少なくない。さらに魔法の種類も多岐に渡る。
斬撃系の攻撃からの防御力を大きく上げるもの、打撃系の攻撃からの防御力を大きく上げるもの
魔法攻撃からの防御力を大きく上げるもの
跳躍力を上げるもの、スピードを上げるもの、攻撃を受けても怯まないものなどなど。
それらをかけるタイミング、チームワークを練習した。
そして来たる当日。ムアニエル地帯のほとんどの人が、コリセオムというドーム型の会場に集まっていた。
会場に集まった観客たちは、自分たちの出場権を奪ったやつらを見に
そして少しでも自分たちより弱いと見なせばブーイングする気満々で来ていた。
決闘をするヒトたちは各自控室に通され、部屋には対戦相手が書かれたトーナメント表が置いてあった。
出場するチームはそれぞれチーム名を考えていた。
愛、ダイン、ヲノはチーム名は決めなくてもいいと思っていたが
ヲノという名前で怪しまれると思ったため、それぞれの頭文字を取って「DAW」というチーム名にした。
舞台では次々とチームが闘い、ドアがノックされ、いよいよ出番となった。
「さあ。長かった第1回戦もいよいよ終盤です」
と会場中にアナウンスが響き渡る。
「まずはDAWの登場だ!」
と言われて舞台に進む愛、ダイン、ヲノの3人。
「DAWに相対するのはぁ〜?…兄弟で頂を目指す、ノイテン兄弟だ!」
と言われて反対側に現れたのは、青い髪をした、おそらくヲノと同じベーサーの2人。
「なお、ノイテン兄弟が2人のため、DAWには3人のうち2人が出場となり
1人は入退場口の門の外にいていただくことになります」
ということで3人で話し合った結果、ダインとヲノが出場することにして
愛は門の外で観戦することになった。ノイテン兄弟には
「出場枠5人までなのに2人とかふざけてんのか!」
「オレらと変われ!」
などと罵声が浴びせられていた。ノイテン兄弟は会場を見回し
「予選落ちが騒いでんじゃねぇ」
と中指を立てて、会場中からブーイングを浴びていた。
「ま。オレたちも3人なんだけどな」
と小声で言うヲノ。
「ま、会場は向こうからしたらアウェーだ。
…つってもオレも対ヒトはあんまやったことねぇから不安だけどな」
「ここまで来たら引くに引けねぇ。まずはあの2人を倒す」
「しゃー!行くか!」
ダインが地面に置いたハンマーを肩に担ぐ。
この世界ではマナトリアというモンスターにより命を落とすことはあっても
ヒト同士で命を取ることはできない。
憎悪、嫉妬、怨念などにより支配され、理性、ヒトとしての心を失ったマナトリアは
ヒトの命を奪うのに抵抗がないため、トドメをさせてしまうが
ヒトは、どれだけ相手への憎悪があっても
まだ心のどこかに相手への情があるため、トドメまではさせないのだ。
「デカブツに、フードで顔が見えねぇ死神か」
「1回戦はよゆーか」
ノイテン兄弟が武器構える。1人はショテルと呼ばれる湾曲した細い、短めの剣で
ショテルは湾曲した内側が刃になっている変わった武器だ。
そして右手にはケペシュと呼ばれる、これまた変わった剣を持っている。そう、2刀流だ。
そしてもう1人はシャムシールという、なだらかに曲がった、細長い剣を持っている。
「なんか不思議な武器持ってんな」
「もしかしたら厄介な相手かもな」
魔法が使える愛がいないとなると、純粋な力の勝負。
ノイテン兄弟の2刀流のほうが、姿勢を低くして走って向かってきた。
「死神の首、いただきっ」
右手のケペシュという剣を振るってきた。ヲノはバックステップで避けたが
左手に、逆手で持ったショテルという武器をヲノの足に引っ掛けた。そして手前に引く。
「うっ」
ヲノはバランスを崩して仰向けに倒れた。
「まずは1人」
右手に持ったケペシュを逆手に持ち替え、ヲノに突き刺そうとしたところ
ドオォ〜ン。という音がしてノイテン兄弟の2刀流のほうが壁に向かって吹っ飛ぶ。
ダインが横からハンマーで攻撃してヲノを助けたのだ。
「…助かった。さんきゅ」
「おうよ」
「よそ見乙」
ノイテン兄弟のシャムシールを持ったほうが、ダインの背後から迫っていた。
ヲノはそれを察して、ダインのハンマーに飛び乗り、そこからダインの肩に飛び乗って空中に飛び上がった。
ヲノはノイテン兄弟に向かってブレードを振り下ろした。
ノイテン兄弟は前に転がり、ヲノの攻撃を避けた。しかし目の前には
「よお」
ダインがいた。ダインはハンマーを振り上げ
「すまんな。恨みはねぇが闘いだからな」
と言いながらハンマーを振り下ろした。振り下ろす瞬間、ノイテン兄弟のもう1人がスッっと入り込んできた。
地面が大きく凹む。会場が静まり返る。砂埃の中、ダインがハンマーを上げる。
するとノイテン兄弟の1人が、もう1人を守るようにしていた。
「…。兄ちゃん?兄ちゃん!」
守られたほうのノイテン兄弟の1人が、自分に覆い被さっていたノイテン兄弟の1人を揺さぶる。
「兄ちゃん!」
「…ダイヘリル…。悪い…。オレはもう、…闘えそうにない…」
「ごめん。オレが悪いんだ。兄ちゃんが走り出したときに合わせるべきだった…」
「…ダイヘリルのせいじゃない…。兄弟だからチームワークがいいって、驕ってたな…」
「ふっ」っと笑う兄。
「おおっとぉ〜?ノイテン兄弟の1人が戦闘不能状態のようだ。さあ、闘いはどうなるんだ?」
とアナウンスが流れる。するとダインはハンマーを置いてノイテン兄弟の兄を抱える。
「もういいだろ?」
と弟のほうに言うダイン。ノイテン兄弟の弟は悔しさ噛み締めていたが、噛み締めていた力をふっっと抜き
「…あぁ…」
と負け認めた。
「おおぉ〜?どうやら勝敗が決したようです!
ノイテン兄弟の1人が戦闘不能状態に陥ったことにより、DAWの勝利となったようです!
ということで勝者ぁ〜…DAW!」
というアナウンスに、会場が「おぉ〜!」っと盛り上がる。中には
「ヘタレ!」
「逝くまで闘えよ」
「オレでも勝てたな」
という声がノイテン兄弟に浴びせられていた。
悔しさに拳を握りしめるノイテン兄弟の弟に、ヲノは手を伸ばした。
「ありがとう」
ノイテン兄弟の弟は握っていた拳の力を緩め、ヲノが伸ばした手に手を伸ばし、握手を交わした。ダインも
「伸び代しかねぇな」
と笑いながら声をかけた。そんなこんなでノイテン兄弟の兄を抱えたダインと
ヲノとノイテン兄弟の弟は、愛の待つ入退場口から出ていった。
Neutral Keeperの医療部門のヒトが来て、ノイテン兄弟の兄を担架で運んで行った。
ノイテン兄弟の弟もそれについていった。
「まずは初戦突破だ」
と愛に言うダイン。
「ですね。お疲れ様です」
「おう」
「ヲノさんもお疲れ様です」
「あ、ありがとうございます」
控室に戻る3人。その後も試合は行われ、しばらくすると
「さて!これでトーナメント1回戦はすべて終わりました。これから2回戦を行います!
2回戦を突破すれば明日の準々決勝に駒を進めることができます。
そして準々決勝と同時に行われる準決勝を勝ち抜けば
いよいよその次の日に行われる決勝へと駒を進めることができるのです!
さて!初代トーナメント優勝者、そして50,000Worthは誰の手に!?」
というアナウンスが聞こえてきた。
「さて。2回戦。次は柊さんも出れるといいな」
と言うダイン。
「まあ…。でも対人は怖いですよ」
「でもせっかくチームワークの練習したんだし」
「まあそれもそうですね?」
と愛とダインが話す中、ヲノは右足に痛みを覚えていた。
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