テラーノベル
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会場は洒落たイタリアンレストランの貸切スペース。
立食形式とはいえ、所々に椅子やソファがあり、適度にくつろげる。
「まさか、ほんとに合同で懇親会やるなんて…」
すちはグラス片手に、隣のみことに目をやる。
「うん……でも、すちと一緒なら大丈夫だって思ったから」
そう、確かに思っていたのだ。
──でも。
問題は“席の配置”。
まるでわざと狙ったかのように、
みこととすちはきっちり隣同士にさせられ、さらに周囲は両職場の同僚たちで囲まれた円卓。
「えーっと……すちさん、やっぱ告白したのって大学生の頃なんですか?」
「プロポーズのタイミングってどう決めたんです?やっぱ指輪のサイズこっそり測ったとか……?」
「みことくんは嫉妬とかするタイプ??」
「“あの事件”のときの心情が知りたい〜〜〜!!」←すちの会社の女子社員たち
質問攻め。質問攻め。質問攻め。
(な、なんでこんな詰められてるの俺たち!?)
みことは完全に挙動不審になっていた。
顔も耳も真っ赤に染まり、すちの袖を握りしめる。
「……っ、む、無理やって……!」
その瞬間。
「あっ! みことくん、飲み物きれてるね〜! これおすすめだよ〜」
無邪気な笑顔で差し出されたのは、見た目は甘くて可愛いピンク色のカクテル。
(あ……これなら……)
“ジュースみたい”という見た目に釣られて、みことは一気に飲み干してしまった。
──それが、アルコール度数20%を超える超・強烈な酒だと知る由もなく。
「すち……ぃ……あったかぁい……」
みことは、すちの肩に頭を預けて、とろけた声で甘える。
「……みこちゃん、ちょっと、立てる?」
「やだぁ……すちのひざがいー……だっこして……?」
突然の抱っこ要求に、会場がざわつく。
「え、あの彼氏くん、酔ってる……?」
「さっきのやつ飲んだの!?」「え、あれやばいやつだよ!?」
すちは困惑しつつも、みことを支える腕に自然と力を込めた。
「ごめん、ちょっと飲みすぎてるから、休ませてくる」
その温かな腕に包まれながら、みことは震える声で甘えた。
「すち……だっこ、して……」
すちは優しくみことの身体を持ち上げ、周囲の視線を気にせず静かに唇を重ねた。
そのキスはただの口づけでは終わらず、すちの舌がみことの唇の間にゆっくりと入り込み、絡み合う。
みことの胸に甘く熱い息が漏れ、身体の隅々まで心地よいとろけるような感覚が広がった。
「ん……すち……」と、みことは甘い吐息を漏らし、恥ずかしさと幸福で顔をさらに赤らめる。
そんな二人の密着した姿を見つめる女性社員たちは、目が離せず、何人かは卒倒寸前で俯いた。
すちの腕に抱かれたまま、みことは恥ずかしそうに目をそらしながらも、頬を赤く染めて甘えた声で囁く。
「すち……もっと、いっぱいキスして……」
その言葉に、すちの胸はギュッと締めつけられるように熱くなった。
優しく、でも少しだけ強く、唇を重ねる。
ゆっくりと、みことの唇を舌先で撫でるように絡め、甘い息が漏れる。
みことはその感触に体を委ね、指先でそっとすちの胸を押しながら、さらにせがんだ。
「もっと……ね……すち……」
すちはそんなみことの熱に応えるように、焦らしながらも、深く深くキスを重ねていった。
その温もりに、みことの頬はさらに朱に染まり、甘く蕩けていく。
周囲の視線もすっかり忘れ、二人だけの世界に沈み込んでいった。
みことの瞳はとろんと蕩けていて、まるで甘い夢の中にいるかのようだった。
唇はまだすちの唇に触れたままで、息遣いはゆっくりと深くなっている。
すちはそんなみことの変化に気づきながらも、周囲の視線を気にしてさりげなくみことの顔を自分の胸に隠した。
「ほら、誰にも見えないから安心して」
すちは低く囁き、ぎゅっとみことを抱きしめる。
すちの胸元にすっぽり収まるみことは、まだ頬を赤らめたまま、うとうとと目を閉じ始めていた。酔いと甘えで気持ちが満たされているのか、安心したように小さく息を吐き、ふにゃりとすちの服を握る。
「……ん……すち……」
小さく名前を呼ぶその声に、すちは思わず表情を和らげ、そっとみことの髪を撫でる。
「寝ないの、って言っても……もう手遅れか」
周囲はまだ騒がしいが、そんな空気とは無縁のように、みことはすちに身を預けたまま夢の淵へと落ちていく。
「すみません、先に失礼します」
穏やかに、けれどきっぱりとそう挨拶してから、すちはみことをしっかりと抱いたまま会場を後にした。
その腕の中で、みことは微かに身じろぎしながら、すちの胸元に頬をすり寄せる。
「すちのにおい……あったかい……」
すちはその言葉に、心がやわらかく満たされるのを感じた。
「俺も、みことのぬくもりがいちばん安心するよ」
夜風が二人を撫でていく。
抱きかかえたままの温もりを確かめながら、すちは足早に、しかし愛しさを噛みしめるように、二人の帰る場所へと向かっていった。
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コメント
2件
良すぎ (·▷.)←こんな顔しそう