テラーノベル
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5人で浴衣で写真撮影のため、普段来ない田舎田町に来ていた。
朝から各々浴衣に着替えメイクも済ませ、まずは小川の近くで写真撮影。
田舎の町らしく、上を見上げても何もない。
朝の日の光で輝く小川は綺麗で心が洗われる。
5人でくっついたり少し離れたり、色々な構図で撮影が進む。
もう長年一緒にやってきて、何となくの立ち位置も、表情の作り方もわかっている。
たまにふざける人物もいるが、スタッフ含めた皆で笑い合い和やかに進んだ。
次の撮影までの合間、小石を避けながら歩いていた仁人は、
それでも持ち前の運動神経により躓き、結果足首にシップを張ってもらうことにした。
幸い外での撮影は既に終えており、次は宿の中での撮影に移る。
宿と言っても縁側のある純和風の一軒家のようだった。
スタッフに案内してもらって先に部屋へと移動させてもらう。
畳敷きですべての扉は障子となっており、真ん中に机がちょこんと置かれている。
先ほどまで撮影していた小川はすぐ近くにあり、縁側越しにその姿が見えた。
仁人はふっと息をつき、障子にもたれ掛かって外の景色を眺めた。
空気は澄んで空は青い。
風は穏やかで優しく頬を撫でる。
仁人は今のうちに新鮮な空気を取り込んでおきたい衝動に駆られ、目を瞑って深呼吸をした。
神経が研ぎ澄まされるような感覚。
足首の痛みさえなければ完璧なんだけど…このギャップも悪くないか。
改めて目をあけてみんなの様子をうかがう。
スタッフは機材をまとめ次の撮影の準備を、
メンバーは小川の中を覗き込んだり小石を集めて笑いながらスマホで写真を撮っていた。
まるで学生みたいだな、と心の中で呟きふっと笑みが漏れる。
しかし、仁人はふとそこに勇人の姿がない事に気づく。
ーどこ行ったんだ?
もう少し見えるように身を乗り出した瞬間、後ろから声がした。
「おい、大丈夫か」
ぴくっと反応した身体は反射的に後ろを向いていた。
「…勇人、いつから居たの」
「お前が外を見始めた時から」
つまりほぼ最初から居たのか。
後を付いて来てたのか?
何となく最初から見られていた恥ずかしさで顔を背け、また外を見た。
綺麗な石を発見したのか、最年少が小さな石を掲げてこちらに手を振っている。
思わず笑うと、後ろでも同じく笑う気配がする。
「学生みたいだな」
まったく同じことを考えているようで、ついに声を出して笑ってしまう。
「いや、ほんと。清々しくて見てて癒される」
「ほんとかよ」
言い合いながら勇人も縁側まで来ると仁人の隣に座った。
お互い浴衣を着ているため、崩さないようにと動きが少しぎこちない。
勇人は仁人の濃いブラウンの浴衣を見やった。
「…似合ってんじゃん、その色」
髪と同系色の浴衣はしっかりと馴染んでいて、だからこそ白い肌がより際立っていた。
じろじろと見られているような気恥ずかしさと、褒められた嬉しさが交わる。
仁人は恥ずかしさで顔は見れず、少しだけ視線を相手の方へ向けて答えた。
「…勇人も、いいんじゃない、それ…」
そっけなく聞こえる言葉だが、耳とほっぺがほんのり色づいており、精一杯の照れ隠しということがすぐにわかる。
「ありがと」
照れ屋の言葉を素直に受け取り、勇人は満足げに笑った。
その瞬間、カシャっと聞きなれた音が二人の耳に届いた。
「っ、え、なに?」
二人同時に後ろを振り返ると、いたずらな顔をした年下3人組。
「はやちゃんと仁ちゃんの浴衣姿げっと~」
ひひ、と聞こえてきそうな舜太の笑み。
そしてスマホを覗き込む柔太朗と太智。
「お、この構図めっちゃええね」
「なんか雰囲気あるね」
キャッキャと楽しそうな会話が広げられる中、舜太は何気なしにふと呟いた。
「…なんか、大人の色気ってこういうことなんかなぁ」
「ぶっ…ああ、まぁ分からんでもない」
一瞬笑った太智だったが、改めてスマホの写真を見ると、なるほどとうなずく。
そこに柔太朗も「そうだね」と肯定した。
勇人と仁人はどう反応してよいか分かりかねて思わずお互い目を見合わせた。
その様子でさえ、3人にはドラマのワンシーンのように映った。
二人には二人の空気感がある。
信頼関係とか、戦友とか、いろんな表現はできそうだが、全て当てはまってしまうし全て違うような気もする。
「…ほら、もう準備できてるって」
バタバタと忙しなく動くスタッフに助けられ、仁人は撤収の合図を送った。
「足大丈夫?立てる?」
「うん、軽く捻っただけだし」
自然と差し出される手に自らの手を添えて立ち上がる。
違和感はない。自然な流れだ。
スタッフの一人がメンバーの名前を呼ぶ。
いそいそと別部屋に集まる姿を横目で見ながら柔太朗がつぶやいた。
「…自然すぎて、違和感だっつーの」
誰にも聞こえないくらいの声。無意識に口角は上がっていた。
いつまで今の状態が続くのだろうかと考えてみたが、むしろ今の方が心地良いのでいつまででもいいかもしれない。
その時が来れば、彼らなりに前に進むだろうし。
柔太朗も4人の後について、いそいそとその場を後にした。
end
コメント
1件
浴衣姿の二人の距離感、すごく好きです。仁人くんが照れ隠しでそっけなく返すところ、耳が赤くなってるのが目に見えるようでした。後輩たちに「大人の色気」って言われて、二人で見合わせちゃうのも可愛い。小川と障子の情景も綺麗で、柔太朗くんの最後の独り言がじんわり効いてます。
#ご本人様には関係ありません
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