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ポルトガル代表は、素早くボールをセンターに戻した。まもなく笛が吹かれて、マルセロがすぐさま快走を始めた。

だが、ピッ、ピピー。程なくしてホイッスルが鳴り響き、試合終了。ホワイトフォードの決勝進出が決まった。

中央での整列が終わり、両チームのメンバーはコートの端に来た。ベンチ側を向いての礼の後に、ホワイトフォードの選手は一列になってポルトガルの選手へと歩み寄っていく。一人一人と握手を交わすためだった。

二番目に並ぶエドが、先頭のマルセロとぐっと握手をする。

「今回は、ポルトガル代表としては惜敗だ。ま、俺自身は、まっったく負けた気はしてないけどな。最後のエドのシュートは、まぐれみたいなもんだ。次は、決めさせねえよ」

マルセロは、不機嫌そのものといった様子で言い切った。

エドは、にかっとマルセロに笑い掛けた。

「またやろうぜ、マルセロ。そん時に、最後のゴールがまぐれじゃあないって、たーっぷり思い知らせてやるよ。せーぜー楽しみにしてな!」

「良くぞほざいた。次は、俺のマークが二枚だろうが三枚だろうがぶち抜いて、完膚なきまでに圧勝してやる」

マルセロの力が弱まり、エドは次に並ぶ選手との握手の番を迎える。

エドは、笑顔で手を差し出した。しかし、マルセロの後ろの3番は、当然のようにエドを無視した。エドの身体は瞬時に固まる。

以降もエドは、握手を拒否され続けた。

「……貴様ら」と、憤怒の形相のマルセロの、爆発寸前の声が辺りに響く。

「良いよ、マルセロ。ナウラ族、ブラジル、ポルトガル、イギリスとホワイトフォード。どんな扱いを受けても、俺の、自分のルーツを誇りに思う気持ちはへこたれない。だから全然、へっちゃらだよ」

エドが、諦めたようにも優しげにも聞こえる声音で呟いた。「エド」と、マルセロは神妙な調子で言葉を返す。

「今までほんとにありがとな、マルセロ。大人になったらお金を貯めて、またそっちに遊びに行くよ」

「──おう、待ってるぜ」と、沈んだ面持ちのマルセロは納得のいかない口振りで、ぼそりと呟いた。

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