続き
基本他のキャラ登場させません
2人の甘々な時間だけ楽しんで
第2話「二人きりの準備室」
放課後のチャイムが鳴って、校舎の中は少しずつ静かになっていく。
ゆいは鞄を肩にかけながら、ふとポケットの中のメモを見た。
『放課後、理科準備室へ。――神代類』
ゆい「……なんで理科準備室なのよ……」
嫌な予感しかしない。でも行かなきゃ、あとでまた何を仕掛けられるか分からない。
そう思って足を向けた先で――
ガチャ
扉を開けた瞬間、カーテン越しの夕焼けと、色とりどりの風船が舞った。
ゆい「わっ!?な、なにこれっ!?」
類「成功! ちゃんと反応してくれたね!」
机の上には理科器具よりも、なぜか紙吹雪とスケッチブック。
その中心で、類は嬉しそうに腕を広げていた。
類「見てくれたまえ、ゆいくん。僕の“重力無視風船マジック”だ!」
ゆい「いや名前の時点でツッコミどころ多すぎるから!!」
類「ふふ、ツッコミのテンポも素晴らしいね!」
そう言って、類は机の上から一歩近づいた。
ゆいは慌てて下がろうとするけれど、風船が足元に転がって――
ゆい「きゃっ!」
類「おっと。」
倒れかけた体を、類の腕が支えた。
距離が、近い。
まるで世界が一瞬止まったみたいに。
ゆい「……は、離してよ。」
類「そう言う割に、顔は真っ赤だよ?」
ゆい「~~っ、うるさいっ!」
彼の笑顔が、いつものふざけたものじゃなくて。
少し優しい。
心臓が、また跳ねた。
類「ねぇ、ゆいくん。君といると、本当に退屈しない。
この世界は君がいるだけで、少しだけ面白くなる気がするんだ。」
ゆい「……そんなこと、急に言わないでよ。」
類「急じゃないよ。ずっと思ってたから。」
言葉を失ったゆいの耳元で、
小さく風船が弾ける音がした。
⸻
その夜、ゆいはノートを開きながら、今日の出来事を何度も思い返した。
あの距離、あの声、あの目。
全部、忘れられそうにない。
⸻
次回、「雨の日の屋上」☂️
――傘の下で、ふたりの距離がもう一度、近づく。