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誰か助けて……
「お願い、本当にやめて下さい。大きな声出しますよ!」
「ここで叫んでも広すぎて無理じゃない? 大人しく僕に抱かれろよ。社長と別れたばっかりで寂しいんだろ? 僕が満たしてあげるから」
本当にもう耐えられない。
佐藤君の時みたいに、柊君に助けてもらいたい。
柊君なら、きっと専務から私を守ってくれただろう。
でも、もう、そんなことは期待しちゃいけない。
その時、たまたまポケットに入れてたスマートフォンが鳴った。
必死でそれを取り出し、何とか着信ボタンを押した。
「助けて!」
そして、短く場所を伝えた。
専務はマズいと思ったのか、私の手からそれを奪い取った。
誰の着信だったか、一瞬だったからわからなかった。
誰でもいいから、お願い……早く来て。
「柚葉ちゃん、いい加減にしないと……。僕を怒らせたら怖いよ」
「専務、お願いです。私のことはもう構わないで」
「こんなに好きなのに? お前を僕の物にして、いっぱい可愛がってあげるよ」
専務まで……
みんな、恋愛観おかしいよ。
もう……わからない。
「柚葉!!」
その時、勢いよく部屋に入ってきたのは、樹さんと真奈だった。
「お前! 柚葉に何してるんだ!!」
私は専務から離れて、真奈にしがみついた。
この2人が来てくれて、私は一気に安心した。
「樹君。僕は何もしてないよ。柚葉ちゃんが僕の言うことを聞かないから、ちょっと叱ってただけだよ
「柚葉、こんなにも怖がってるじゃないですか!」
真奈が怒ってくれた。
「柚葉ちゃん、何もないよね。僕は、君に何もしてない。変に事件にでもされたら、この会社のイメージが悪くなるし、社長にも迷惑をかけるよ」
「お前! 何を言ってる!」
樹さんが、専務に掴みかかった。
「いいの、樹君? 君まで僕を殴って逮捕されたら。お兄さんの会社がどうなるか……」
「クズだね」
真奈が言った。
「好きなように言えばいい。柚葉ちゃん、僕は君みたいな低俗な女を相手にするわけないだろ? 勘違いは止めてくれ」
「早く出て行け!」
樹さんが怒鳴った。
「樹君、君に1つ忠告しておくよ。アメリカでは成功したか知らないが、日本はそう甘くない。君みたいな男に、この会社の社長を務めるのは無理だ」
「社長は柊だ。俺が社長になることはない。そして、お前もな」
樹さんは、先に私と真奈を部屋から出して、自分も出た。
ドアを閉める瞬間、怒鳴り声と共に、専務が強く机を叩く音が聞こえた。
「真奈、ごめんね。私、私……」
まだ震えがおさまらない。
「謝らなくていいよ。柚葉が専務と出ていったのがチラッと見えて、すぐ戻らないから心配になって電話したんだ」
「そっか……。ありがとう、本当にありがとう」
「社長室に樹さんがいたから、一緒にきてもらったんだよ」
「樹さん、すみませんでした。本当にありがとうございます」
「いや、柚葉に怪我がなくて良かった」
「大丈夫です。本当に何もなかったので。でも、軽率だったと思います。仕事のことだと思って深く考えずに着いてきてしまったので……」
「仕方ないよ。専務に呼ばれたら誰だって仕事だと思うよ。柚葉は悪くないから。悪いのはあいつだよ」
「……私、本当に……バカだよね。自分が嫌になる」
2人は、それ以上何も聞かなかった。
私は、専務のいるこの会社からすぐに逃げたいと思った。
プロジェクトも年末までには終わる。
本当に、あと少し、あと少しの辛抱だ。
全てが終われば……
専務はもちろん、柊君ともさよならできる。
柊君の姿を見ることはなくなるけど、それでいいんだ。
そうしなきゃ、ダメだから。