テラーノベル
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コトネは相変わらず、メイド服に身を包み使用人と仲良く過ごしていた。
ベルトランとの結婚が決まったので、この国についての勉強をしながら。
唯一、事情を知っている国王は、一度とはいえ聖女を身に降臨させたコトネを称え、聖女代理として王太子ベルトランとの結婚を国民に認めさせた。
難色を示したのは神殿だけだ。とはいえ、エステルを崇め、あんな形で本物の聖女を失った神殿に、もう力は無い。
偏った思想の神殿に手を出させないよう、法改正にも動き出した。
だが、万が一にもコトネを利用することがあれば、ベルトランは容赦はしないだろうと、国王には分かっている。
ベルトランにとって大切なのは、コトネとクリスティナと鷹だけ。国など滅んでも構わないと言い切ったのだ。
国王は、嫌と言うほどそれを見せつけられたのだ、コトネの知らぬ間に。
亡き妃の性格と優秀さを受け継いだベルトラン。どういう訳か魅了にも全くかからず、自分より良き王になるだろうと国王は密かに思っている。弱々しかった息子の面影は一切無くなっていた。
当のベルトランは、なぜ指輪……神はこんな自分を選んだのかと未だに理解できないでいるが。コトネの笑顔を守れるなら、そんなことはどうでも良かった。
その後――。
コトネは聖女の力があったとしても、救えるのは会えた運ある人間だけだと言い、病院の充実が必要だと訴えた。
そんなコトネを支えることがベルトランの望みであり、幸せだった。
◇
指輪を運んだ鷹は、宮殿の庭を自由に飛ぶ。
庭でお茶をしながらベルトランは幼い頃の話をした。
残念ながら琴音は知らない過去だ。クリスティナが覚えていたかは分からない。
それでも二人を出逢わせてくれたから、今こうして琴音がいる。
鷹と、鷹を優しく眺めるベルトランが愛おしい。
「ところで、この鷹の名前って何ですか?」
ベルトランに尋ねると、一瞬、言葉を詰まらせた。
「………クリス……だ」
「えっと、もしかして」
クリスティナを想って付けた名前。
「クリスティナは初恋だったが、俺が愛しているのは今目の前に居るコトネだからな」
「……知っています」
二人で顔を赤らめると、クリスは祝福するように高い声で鳴いた。
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