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艦内、自室。
扉が閉まり、
外の気配が完全に遮断された。
恒一は、
白いアタッシュケースを
デスクの上に置く。
無言でロックを外す。
——カチリ。
蓋が開いた。
中身を見て、
一瞬、思考が止まった。
「……ハロ?」
そこにあったのは、
薄い説明書と、
未組み立てのパーツ。
丸い外装。
小さな手足。
単眼センサー。
見間違えようがない。
都会のおもちゃ屋で売っている、
ごく普通の市販ハロ。
説明書の表紙にも、
見慣れたロゴ。
注意書き。
対象年齢。
どれも、
子ども向け玩具のそれだった。
「……意味、分かんねぇだろ……」
戦争の最中。
ガンダムに乗せられて。
街は壊れて。
友人は連れ去られて。
その中で、
ハロ。
特別な機能も、
隠された回路もない。
ただの玩具。
恒一は説明書をめくる。
内容も、
完全に市販品そのもの。
組み立て手順。
注意事項。
「強い衝撃を与えないでください」
思わず、
小さく息が漏れる。
「……今さら、これかよ」
ケースの底。
そこに、
一枚のメモだけがあった。
手書き。
「遅くなったけど
誕生日おめでとう」
それだけ。
誰の名前もない。
説明もない。
理由も、
意図も書かれていない。
恒一は、
椅子に腰を下ろす。
白いデスクの上に、
ハロの部品を並べる。
戦争とは無縁の形。
命を奪う力も、
守る力もない。
「……お前、
こんなとこに来るような
やつじゃないだろ」
返事はない。
当たり前だ。
まだ、
ただの部品なのだから。
それでも。
恒一は、
最初の外装を手に取った。
——意味が分からないからこそ、
作ってみるしかなかった。
このハロが、
何を変えるのか。
あるいは、
何も変えないのか。
少なくとも今は、
それを確かめる余裕だけは、
ここにあった。
白い戦艦の中で。
白いケースから出てきた、
ただのハロを前に。
恒一は、
黙々と組み立てを始めた。