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※4月1日に投稿された📄の歌ってみたを元ネタに書いています。
※るむふぉが遊女、基本は 受け側になりますが場合によっては攻めにもなります。
※名前など固有名詞は変えていませんので時代背景と合わない場合があります。
※捏造設定が多く含まれます。
※他、人によっては不快と思われる表現があります。ご注意ください。
東京、江戸一番の歓楽街、吉原。
ここでは見目麗しい遊女が一晩の夢を見せてくれる。今晩も乱れ咲く花々は客を夢へと誘う。
格子状になった障子紙を透かして、月光が部屋へと降り注ぐ。
湿る空気の中にあっ、あっ、と吐息が漏れ、豪奢な着物が乱れていく。
聖来は艷やかな黒髪を床からあげ、ふくよかな背中へとその身を添わせた。わざと自身の胸が当たるように。
「今宵も良くありんした、旦那さま。」
その行動、言葉に気を良くした高位と思しき男は小判を数枚、聖来の手へと握らせ部屋を出ていった。
聖来は椿の油を手に取り、乱された髪を整え始めた。
この髪の毛がきれいだと褒めて、よく触れてくる客が増えている。自身の髪も、爪の先でさえも大事な売り物なのだ、手入れに余念はない。
すると、とことこと近くの廊下を歩く音がした。
「やぁ、アキラ。上々だねぇ〜」
江戸では物珍しい金の髪をした、この店の若き楼主、奏斗が戸から顔を覗かせた。
「奏斗…。まさか見ていたんですか?趣味の悪い……」
「偶然通りかかっただけだよ、今日は新しい子が来るからね。」
お前もそろそろだから、と言いながら奏斗は忙しなさそうに早足で去っていった。本当にただ様子を見に来ただけだったのだろう。
ため息をつき、聖来ーーアキラは髪の毛の手入れに戻り、ほんの少し物思いに耽った。
幼い頃、両親に連れてこられてから何回も抱かれたくもない相手に抱かれ、欲しくもない物で喜ばなければいけなかった。
叩かれたことも顔を引っ掻かれたこともあった、髪を切られたこともあった。
いつまでこんな夜が続くのだろうか。
そんなことを考えると鬱々とした気分へ引きずり込まれてしまう。
「……誰か連れ出してくれればいいのに…」
障子戸を開け、煌々とする満月へぽつりと零してみる。返事はなく、ただ冷たい月光が生温い部屋を満たした。
「……。」
銀13匁ばかりで連れられてきた少年は楼主である奏斗を怯えた様子で見ており、奏斗が視線を合わせようとすると居心地が悪そうに逸らした。
切りっぱなしの黒髪を不格好に伸ばし、着物の裾はほつれて、見るからにみすぼらしい。
「いらっしゃい。今日からここが君の家になるから。…にしても、……」
奏斗は軽く屈み込み、長い前髪に覆われた顔を覗き込んだ。
光を失った紅い瞳が右へと逃げる。何を言われるかわかっている顔だった。
彼が思っている言葉をかけてやってもいいが、それでは面白くない。その背を軽く叩きながら奏斗は言った。
「お前、綺麗だね。」
「…え……?俺が…?」
「うん。…まずは〜、お風呂入ろっか。服も着替えよ」
何でもなくそう告げ、黒髪の少年の手を取って、風呂場へと連れて行った。抵抗もなくただ黙って後ろをついて来る様はひな鳥のようだった。
廊下を歩く途中、繋いだ手を何度もぎゅっと握り返してくるのがいじらしくて、離すに離せなくなってしまった奏斗はそのまま自身も風呂へと入ることにした。