※4月1日に投稿された📄の歌ってみたを元ネタに書いています。
※るむふぉが遊女、基本は 受け側になりますが場合によっては攻めにもなります。
※名前や口調は変えていませんので時代背景と合わない場合があります。
※捏造設定が多く含まれます。
※人によっては不快と思われる表現があります。ご注意ください。
楼閣の奥まった場所にある浴場から奏斗の優しげな声だけが響く。話し相手の少年の声はお湯の音にすぐ掻き消されてしまっていた。
「君さぁ、雪駄も着物もボロかったじゃん。買いに行くからすきな色教えて。あっ、一緒に行けばいっか?」
「あの…、俺、あんまり……っ」
「え?なに?」
もはや会話になっておらず、奏斗が独り言ちているだけになっていた。
その間にもわしゃわしゃと石鹸で体を洗われ、少年の体はじきに綺麗になっていった。生まれて初めての石鹸と柔らかい手拭いに戸惑いながらも少年はふわふわした泡に包まれた。
明るい陽の光が開けたままの障子戸からうざったいぐらい射し込む。
アキラは重い瞼を開け、布団から這い出ると何やら一階が騒がしいことに気づく。
「朝から何なの…。」
禿を呼びつけ、布団を片付けさせ朝の支度を始めると廊下を走る音が近くまで来た。
「アキラ!おはよ!なぁ、今朝来た奴聞いたか?!」
「……えっ…」
「あっ…!?わりぃ!!」
ぱーんっと景気よく戸を開け放ったのはこれまた珍しい紫の髪をもつ、雲雀だった。
ところが、その明るい声と顔は肌着姿のアキラを見て、一瞬にして真っ赤になった。アキラもまさか戸を開けられるとは思っておらず無防備なままその場に立ち尽くした。
しかし、直後、アキラの甲高い悲鳴が楼閣へ響き渡った。
「……で?私が着替え中でも見せたかった者って何ですか?」
「悪かったって!……そうそう、今朝新しく入った奴がさ、すげーって話で!」
へぇ、とまだ眠たい目を瞬かせながらアキラは雲雀の話を聞いた。新しいこと、興味のあることについて話す雲雀はきらきらとして、橙色の輝く花のようだった。
この笑顔を見る度に心が洗われていくような心地がして、ずっと見ていたいと願ってしまう。遊女と若衆との間に関係ができてしまえば二度と会えなくなることなどアキラはわかりきっていたので決して口にはしない。
「んでさぁ、髪の色が……アキラ、大丈 夫か?まだ眠ぃ?」
「えっ、あぁ…そうなんですね。」
ぼうっと呆けてしまったアキラの顔を心配そうに覗き込む雲雀、その距離の近さにたじろぐ。
雲雀が安心したようにふっと微笑むとアキラの胸の奥底が甘酸っぱく締め付けられる。こんな気持ち、どこかへ行ってしまえと願えば願うほど捨てきれないものであった。
「…そんな、見ないで、…」
風呂上がりでまだ湯気が立つ黒髪”だった”少年を奏斗はまじまじと見る。ぎゅっと身を硬くした少年はかわいそうなほど俯いた。
「きれーな髪してたんだね。顔も可愛いじゃんね、セラフ。」
ようやく奏斗の視線が少年、セラフから逸れ、石榴の油がすっかり落ちた桜色と丹色の髪を優しく撫でる。 急に頭の上に手が来たことに少年は怯むが叩かれる訳でないことが分かると身を任せた。
「でもぉ、この頭で買い物行くと目立つからちょっと頭巾しよっか。」
こくこくと黙って頷き、奏斗の言われたままに着替えを済ませ、出掛ける支度を始めるセラフ。姐さんからのお下がりの着物、下駄と頭巾を借りて、朝来たばかりの玄関を出る。
なんだか街が違うように見えて、セラフは人知れず高揚していた。隣を歩く奏斗はそんなセラフが慣れない人混みに流されないよう気を揉んだ。
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