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💥 第六章:強者への指導、二人の論争帰還後:緊迫の団長室
壁外調査から帰還した日の深夜。サクラが寝静まったのを確認した後、エルヴィンはリヴァイを団長室に呼び出した。
室内には、紅茶の香りではなく、張り詰めた緊張感が満ちていた。リヴァイは、サクラが使った立体機動装置のブレードをテーブルに置き、その刃を検分していた。刃こぼれ一つない、完璧な斬撃の痕。
「リヴァイ。サクラの今日の動きについて、どう思う?」エルヴィンが切り出した。
リヴァイは静かに、しかし、怒りを抑えた声で答えた。
「『どう思う』だと?…団長、あなたはあの子の才能を甘く見ていた。そして、俺もだ。あんな動き、訓練で見たこともない。あれはもはや**『才能の暴力』**だ」
リヴァイの言葉には、驚愕と同時に、自分の過剰な庇護が、彼女の力を抑えつけていたのではないかという、自己嫌悪のような感情が滲んでいた。
「甘く見ていた…その通りだ。だが、私は彼女の**『本質』**を信じていた。問題は、今後の指導方針だ」エルヴィンは、両手を組み、真剣な表情をリヴァイに向けた。
指導方針を巡る衝突
「団長、あの子の才能は、この世界で最も貴重なものだ。今後は、俺が専属で彼女の訓練を行う。彼女の機動力と斬撃の正確さは、俺が直々に指導すれば、誰も到達できない領域まで高められる」
リヴァイは、サクラを自分の手の内に置き、完璧な兵士に育て上げようと提案した。彼の指導は厳しくも正確で、サクラの力を最大限に引き出すだろう。
しかし、エルヴィンは首を横に振った。
「断る。リヴァイ、君の指導は必要だ。だが、君の**『庇護欲』**が、彼女の成長を妨げる。君は、彼女が傷つくことを極度に恐れている。強さを引き出す訓練と、君の私的な感情を、君は完全に切り離せない」
リヴァイの目が鋭くなる。「団長、それは、あなたが**『サクラの知識』を最優先し、彼女を危険に晒すこと**を前提としているからだろう!」
「そうだ」エルヴィンは、一切の動揺なく認めた。「彼女の強さは、人類の未来を左右する。だが、彼女の**『異世界からの知識』**も、この世界の謎を解く上で必要不可欠だ。彼女は、戦いの道具であると同時に、情報の宝庫でもある」
エルヴィンは、サクラの戦闘能力はリヴァイに任せつつも、彼女の頭脳を最大限に活用し、自らが指揮する情報収集と戦略立案の場に彼女を留めておきたいのだ。
「結論として、サクラの訓練は、私とハンジ、そして君の三者で共同監督する。君の体術指導は最優先するが、私の指揮の下、彼女には壁外での**『情報の収集と判断』**という役割を、重点的に担わせる。彼女の力は、切り込み隊長としてだけではなく、戦略の核として使うべきだ」
新たな感情:溺愛と畏怖
リヴァイは、不満そうに舌打ちをした。彼は、サクラの安全を何よりも優先したい。しかし、サクラが持つ力を、エルヴィンが人類のために最大限に活用しようとしている事実を、否定することはできなかった。
「…チッ。分かった。だが、団長。もしあなたの『戦略』とやらで、あの子の身に危険が及ぶようなことがあれば、俺はあなただろうと容赦はしない」
リヴァイの言葉には、強い警告が込められていた。彼のサクラへの感情は、もはや「手のかかる可愛らしい少女」への溺愛ではなく、「人類の宝」に対する畏怖と、それを守り抜くという強い使命感に変わっていた。
エルヴィンは、その警告を受け入れたように微笑んだ。
「ありがとう、リヴァイ。君のサクラへの感情は、私たちに必要なものだ。これで、サクラの安全と、人類の未来、どちらも確保できる道筋が立った」
二人は、サクラというたった一人の少女の、想像を絶する才能と、その存在の重みが、今後の調査兵団の、そして人類の運命を大きく変えていくことを確信したのだった。