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「っ…ぁ…」
朝起きて最初に感じた下半身の気持ち悪さ。まさかと思い布団を捲れば赤色が一面に広がっていた。あー来ちゃった。
取り敢えずスウェット脱いで、下着替えて、脱いだ服全部洗濯機にぶちこんで、布団もシーツもひっぺがして、洗剤入れて、なんてしていれば俺の体力はもう無いに等しかった。
女であれば必ず、ほぼ毎月来るそれ。月経、またの名を生理。出血大サービス。人によってその辛さには個人差がある。俺はとにかく血の量が半端じゃない。それにお腹が痛い。ズキズキとリズムに乗っているかのように定期的に来る痛みに歯を食いしばる。
来ると思わなかった。もうちょい先だと思ってた。だからランドリーの会議を入れたのに。
他3人にはいつも生理が来たとか連絡を入れていないのだ。あー待ってどうしよう。
今日、何時もより、痛い、かも…
お腹を擦ってもどうにもならないその痛みが辛くて、苦しくて。溢れそうになる涙を必死で止める。
こんなうじうじしてたって変わらない。
そう考えた俺は重たい身体にムチを打って行動を始めた。
アイツらに心配なんてかけたくない。最年長だもん。女だからって、弱ってる姿見せたくない。
「っ…が、んばるっ…」
頬をぺちんと叩く。気が引き締まった気がした。
「あ、雲雀おはよう」
「お!奏斗やんおはよう!!」
時間より少し遅れてランドリーに入る。俺が遅刻をするのはもう慣れっこらしく、特におとがめの言葉もなかった。よっしゃラッキー。
せらおが俺の座る予定だった椅子を引く。お姫様扱いされてない?俺。
「もぉぉせらおそんなことせんでええのに…」
「えぇ?雲雀は俺らのお姫様じゃないの?」
「ちーがーう!!お姫様じゃない!!」
俺が地団駄を踏んでは頬を膨らます様子を見て、せらおはふふと笑っていた。きり、と痛むお腹が紛れた気がする。
お願い、このまま痛くない状態を続けて。俺の身体頼んだぞ。
神頼みみたいにそう心で呟いた。
なんて言ってはみたものの。そう簡単には上手く行かず。お腹が痛い。どろりと流れていく血の感触が気持ち悪い。
朝よりも痛いのだが。
前屈みになって必死にお腹を擦る。もう顔を上げられない。無理、痛い。しぬ…
「…雲雀、大丈夫?」
「だぁ、いじょーぶ…何も、なぃ…」
「何もない人は前屈みになってお腹擦らないよ。いい加減言ったら?」
「っ……ぃ、わない…すぐ治る……」
「貴方ねぇ…分かりましたよ。女性がそうなる場合って大体予想つきますから」
せらお、雲雀横にしてください。奏斗はあったかいもの用意すること。湯たんぽとかランドリーにあるはずです。
なんてテキパキした指示が耳を左から右に流れていく。あぁ、心配かけた。
本当はこうやって女性として優遇されるのが当たり前なんだろうけど。俺自身がそれを許さないのだ。ちゃんと男性の3人と肩を並べて歩きたいんだ。優遇されて、1人だけ後ろを歩くのが嫌なんだ。
せらおがごめんね、と呟いて俺を横にする。奏斗がランドリーの奥から湯たんぽを持ってきて俺に渡す。アキラはブランケットを持ってきて俺にかけた。あは、なんて後ろめたい笑いが溢れる。
「……雲雀…ねぇ、そういう日くらい甘えてきなよ。頼りなよ。俺、雲雀のそういうところ気に入らない」
「貴方、我慢強いのは良いんですけど、それを変な方向で発揮しないでください。こういう時は我々を頼るべきです」
せらおのあったかい手で俺の頭を撫でられる。照れてしまいふい、とそっぽを向いた。それでも助けてほしいのに変わりは無くて。きゅっとアキラの袖を握る。
「…せ、いり、きて…お腹、ぃたくて…」
「そんな所だろうと思いました。今度から頼ってくださいね」
「俺、お腹に良いもの作ってくるよ」
「…僕はしばらく雲雀のシフト無くそうかな」
思い思いに行動し始めた3人に目を見張る。奏斗はスマホを取り出して電話をし始め、セラフは1人キッチンへと向かって、アキラは俺の隣で本を読み始めた。
きりきりと痛いお腹を湯たんぽであっためる。甘えるようにアキラの手を握ると、ふっと微笑んで頭を撫でられた。
ランドリーにしては珍しくほとんど会話が聞こえない。でも変わらずあったかい。
…今度からは頼ってみようか。お姫様になるのも、案外悪くないかもしれない。