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朝方、薄暗い部屋の中。ネグはまた悪夢にうなされていた。
夢の中で――
あの声、あの手。すかーの顔が、怒鳴り声が、止まらない。
また殴られる。また、痛い。逃げても、どこにもいない。
「……やだ……やだ……やめて……」
夢の中で叫び続け、身体が震えているのが現実の世界にまで伝わっていた。
次の瞬間、ネグは目を開けた。息が吸えない。胸が痛い。視界がぼやける。
本当に呼吸ができない――。
「た、すけ……こきゅ、出来な……っ!」
隣で寝ていた夢魔とマモンの身体を必死に揺さぶりながら、か細い声でそう叫んだ。
2人はすぐに飛び起きた。
「ネグ! ネグ、大丈夫か!?」
「おい! 嘘だろ……? 落ち着け、ネグ! しっかりしろ!」
顔を真っ青にして、夢魔はネグの手を強く握り、マモンはすぐにレイを呼びに走る。
だが、ネグの過呼吸は収まるどころか、どんどんひどくなっていく。
手が痺れて、心臓がバクバクして、もう何が何だかわからない。
「たす、け……痛、く……や、だ…な、で……ッ、も、無理…ッ、消え、た、い……っ、ひっく、助け、て…っ、おねが、しま……なぐ、るのだけ…は…ッ、いた、いから…っ、ひっく、やめ、て……くだ、さ…ッ」
夢魔の上着を必死に掴んで震えるネグを、どうすることもできず、ただ声をかけ続けた。
そこへ、レイが駆け込んでくる。
ドアが乱暴に開かれた音と共に、レイがネグの肩を抱き寄せ、必死に声をかけた。
「もう安心だ! ネグ、大丈夫だから!! なぁ?! もう抱え込まなくていいから!」
レイの声は、いつもの飄々としたものじゃなく、心から必死だった。
ネグは震えながらも、レイの目を見て――ふっと力が抜ける。
「ひゅ、はっ、はっ、はっ、ほ、んと……? も、耐えなくて…い、い?」
「ああ……もういいんだ。耐えなくていい。」
その言葉に、ネグはふにゃっと笑った。
そして、泣き疲れたように、再び眠りについた。
レイはネグの髪を一度撫でてから、夢魔とマモンに目線を送り、そっと部屋を出る。
「悪い……今日はまだ寝てて構わない。」
その一言だけ残して、レイは扉を閉めた。
夢魔とマモンはネグを抱きしめたまま、またそっと眠りにつく。
──
朝。
夢魔とマモンが目を覚ますと、ネグの姿がベッドにない。
慌てて部屋を出ると――ベランダに立つネグの姿があった。
静かに外の空気を吸っているネグを見つけた瞬間、2人は胸を撫でおろした。
レイの声が部屋の中から響く。
「ネグー! 飯ー!」
その声に、ネグは振り返り、夢魔とマモンと目が合った。
ふにゃっと、申し訳なさそうな笑みを浮かべて――無言で部屋の中へ戻って行った。
朝食は静かだった。
ネグは少しずつご飯を食べながら、ふと小さな声で言った。
「だ、ぁさんは?」
レイはスプーンを置きながら、にやりと笑う。
「まだ寝てる〜」
ネグは小さく頷き、それからレイに耳打ち。
夢魔とマモンは不思議そうに見つめていると、ネグはスッと席を立ち、だぁの寝室へ。
しばらくして――
「うわあああああああ!!!!!!!!」
だぁの叫び声が響き渡った。
ネグはニヤニヤ顔で戻ってくる。
「……何したの?」
夢魔とマモンが同時に聞くと、ネグは小さな声で――
「秘密……」
それだけ呟いて、笑った。
その後すぐに、顔を真っ赤にしただぁが入ってきた。
「ネクが! 僕のズボンごとズラした!!」
部屋が一瞬静まり返り、次の瞬間、夢魔とマモンは爆笑した。
「……は?」「マジで……?」
ネグは再びニヤニヤと笑っていた。
レイは肩をすくめながら、
「まぁ、起きないやつが悪い。」
そうフォローを入れた。
だぁは顔を覆いながら、
「ええええええええええええ!!!!?????!?」
と叫び続けた。
──
昼頃。
3人が帰ることになり、ネグとレイが途中まで見送った。
最後に、3人は手を振った。
「バイバイ!」「またね!」
ネグは少し遅れて、小さく手を振り返し、
「……バイバイ」と呟いた。
そして、レイの手を引きながら、家へ戻って行った。
帰り道、3人は自然と笑顔で会話を続けていた。
ネグのあの表情が、嬉しくてたまらなかった。
──
しかし、その夜。
レイから電話がかかってきた。
「すまねぇ、戻ってきてくれ。」
緊張が走った。何事かとすぐに戻ると――
そこには、またパニック状態になっているネグの姿があった。