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「久しぶり~、ララちゃん! 探したよ~。前のお店、突然辞めちゃってさ、僕スンゴクさみしかたの。ララちゃんに逢いたくてたまらなかったんだ!」
そのお客様は、ララが働いていた前の店で、熱烈なララのファンで有名だった人だ。
しかし……ララが前回お店を辞めたきっかけはこの人、高梨さんであった。60代の男性だ。
なんとララは彼に結婚を申し込まれたのだ。薄暗い店内でよく見えなかったゆえ、彼はあるものにスマホのライトをかざしてララに見せた。
それは高梨さんの戸籍謄本だった。
その時「それと……ララちゃん、このお手紙、帰ったら読んで欲しいな」と封筒と戸籍謄本とを共に強引に手渡された。
ララはゾッとした。
確かに嬢に本気で恋をしてしまう男性は居る事だろう。それは何ら責められるような事ではない。
が、しかし、高梨さんの場合『本気』を証明する最上級の『行動』に出た。プロポーズだ。
帰宅し、ララが目の当たりにした手紙には……こんな事が書かれていた。
『 ああ、愛おしい、素敵な僕ちんのララ姫よ! 僕という王子と一緒になるさだめだ。わかるね? ララちゃん。僕は〇〇会社(誰もが知っている大企業)の上層部の人間だ。ララちゃんの面倒を生涯に渡ってみ続けるよ。ララちゃんは僕のものだ! だから、あんなお店に居てはいけない。お姫様はお城でおとなしく僕ちんの帰りを待つのが最高の暮らし方だ。僕ちんの月給は少ない時で800万円だよ、多い時で1000万さ。お金、欲しいでしょ。何でも買ってあげるよ。ララちゃん、だから僕ちんの言う事をききなさい。お店を辞めるまで僕ちんは通い続けるからね。お金は捨てるほどあるんだ。どうだい? 素敵だろう。ララちゃんもお金を捨ててみたいだろう? 僕ちんにはお手伝いさんがいるから、家事なんてなーんにもしなくていいんだよ。ララちゃんの白魚のような手を汚す訳には行かないからね。僕ちんが守り通してあげるよ。結婚しようね。ハネムーンは何処がいいかい? ララ姫の好きな国へ連れて行ってあげるよ。毎晩一緒にネンネしようね。僕ちん、優しいよ? さあ……返事をしておくれ。僕ちんの可愛いベイビー。 愛を込めて。僕ちんのララ姫ちゃまへ! 』
ララは不気味に思った。が、性格的に生真面目な所のある彼女は、こういうのをテキトーにいなせない。まぁしかし、ここまでくるとどんな嬢でも恐ろしがる事だろう。軽々しくいなせやしないだろう。
手紙を読んだあくる日、当時のお店の店長にすぐに相談した。
「あたしから嫌だとはっきり言うのは難しいので、店長からそういった行為はやめるように、高梨さんに話してく下さい」とお願いしたのだ。
しかしその店長は、悪い意味でいい加減……。
「何、それぐらい! 嬢として、そこまで惚れられてるんだから喜ばなきゃ」だなんて返して来た。
ララは(無理!)と思い「店長、今すぐあたしお店辞めます!」と言い残し、お店を去ったのだった。
その問題となった高梨さんが、どうやって嗅ぎ付けたのかララの目の前に再び現れた。
「本当に久しぶり~、ララちゃん。相変わらず綺麗だね~。僕はどう? どんな感じ?」
ゲ! ゲゲゲ! し、しかしお仕事だ。
「あ、高梨さん、いつも素敵でいらっしゃいますね!」
ララは、頑張ってねちっこいお客様のおしゃべりに付き合った。
「ララちゃんさ~、突然前のお店、辞めちゃったでしょ。も~僕ちゃん、あれからというもの抜け殻になっちゃってたの。死んでるみたいに生きてた。僕ちんにとったらララちゃんがすべてだからね!」
「あ、ありがとうございます」
さすがの高梨さんも、プロポーズは諦めてくれたのか、例の手紙や戸籍謄本の話などはしてこなかった。
けれど、その日高梨さんは3回も延長をされた。ララは泣きそうだった。申し訳ないけど気色悪い。
(あたしを探し当てて、ここまで追いかけてくるなんて……)
「ララちゃんは素晴らしいね~。きっとここでも人気ナンバーワンだろう?」
「あ、はい。お陰様で」
「これからはね、僕が延長延長延長! ってね、僕専属になれば良いよ! ふふふ。社長の僕ちゃんの特権さ。好きに時間もお金も使えちゃうの!」
「ハ……ィ」
「かっわいいな~……。ララちゃんはちょっぴり影があるところが魅力的だよ」
(ハ、あたし他のお客様の前では太陽のように明るいんですけど)
「相変わらずお酒は飲まないのかい?」
「ええ、ずっと飲んでいません」
「そ――――ぅいうところも、とっても清楚で素敵なの! 僕ちゃん好みなの!」
時間が来て、一度ブースを離れる。
「お客様、延長だそうです」
その時店長がララを気にした。
「ああ、あのお客様が初めから『ララちゃんをギリギリまで延長よろしく』と言われているけど……ララちゃん? 顔色が悪いよ。体調良くないの? 無理しちゃだめだよ。大丈夫?」
「あ、はい。店長、大丈夫です」
(うっわあ――――――! マジ? 高梨さん、あたしの上がり直前までいる気だ……仕事仕事! お・し・ご・と!)
懸命に自身に言い聞かせるララ。