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本の中に入ってしまった里奈は、全てを知った。もちろん、彩の目的も。
「…もうすぐ。月が出てくる頃ね。始めるとしましょうか…」
(どうしよう…このままじゃ確実にやばいことが起こる。でも止める方法がない。そうだ、誰か…霜月さんは今遠くにいるって言ってたし…琴葉。琴葉!)
「まぁまぁ焦らずに。あなたはここで見ているといいわ。…ちょっと揺れるかもしれないけれど」
「揺れる?」
どういうことなんだろう…と里奈は疑問を抱いた。ふふ、と彩は笑う。
彩は真っ赤に染まった水晶を手に取り、何やら呪文を唱え始めた。
「さぁ、私はこの時を待っていた!」
パリン!!
水晶が彩の手の中で割れる。破片が飛び散り、跡形もなくなる。
「ふぅ…」
彩は目を閉じ、何かを祈りながら、窓の外を見つめる。
「“壊れなさい“」
「!!」
里奈はものすごい魔力を感じた。
次の瞬間。
「わっ!?」
グラグラと地面が揺れ始めた。地震だろう。震度7はくだらなそうな揺れが、一帯を襲う。
「物理的に結界を壊せる、といったら地震しかないでしょう?」
「…!」
「わっ!何これ!すっごい揺れてるんだけどっ!?」
「私の占いではこんなことは予想できなかったわ」
「あんたの占いは詐欺でしょっ!」
「わっ!なんだこれ!…まさか…」
本部にいた霜月。どうやらそちらの方にも揺れは届いているらしく、慌ただしい。
そして現世。日本。
「地震です、地震です。強い揺れに警戒してください」
「わっ、なにこれ…スマホの音うるっさ!いやそれよりやばくね?地震…」
こちらも揺れているよう。
「ふふふ…」
『緊急招集、緊急招集!!この揺れは災いの魔女、彩によるものと仮定する!いますぐ止めにいけ!』
「彩は結界を壊そうとしているのかもしれない!いそいで結界を確認してこい!紅真!いけ!」
「承知しました!」
「霜月は彩のもとへ!いますぐ!」
「はい!」
空は紅い何かに包まれ、異様な雰囲気を纏う。おそらく、もうすぐ二つの世界の間がなくなろうとしている…
「ふふふ、混乱しているようね。刺すならここ…」
「ちょっと待ってください!」
「ん?」
「今すぐやめましょう!このままじゃ、二つの世界が壊れちゃ…」
「あら、じゃああなたは向こうの世界の両親や友達に、2度と会えなくなってもいいの?」
「それは…」
「彩!!」
霜月が叫んだ。どうやら到着したようだ。急いできたようで、息も荒い。
「あら。速いじゃない。こんなに早く来るとは思ってなかった」
「今すぐ止めろ!」
「嫌よ。まだ完全に結界は破壊できていないし…」
「結界が崩壊すれば、何が起こるかわからない!」
「私はずっとここから出たかったの。そのために魔力も貯めてきた。そんなの、いまさらやめるわけないでしょう?」
「あんな魔力、一度に使えば命も…」
「心配してくれてるの?」
「…ひとまず、里奈は安全な場所へ…」
「でも…」
「危険だ。いいから」
「はい…」
「あら。私とやろうっての?」
「そうだ。組織の妖怪として、何がなんでも彩を止める。止めてみせる」
「前もそんなことを言われたわね。いいわ、さぁ、やりましょう。本気で」
「…!」
こうして二人の戦いが幕を開けた。