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「…といっても…水晶の魔力を使ったとはいえ、彩。戦う魔力残ってるのか…?」
「…たぶん。まぁ。あるとは思うけど…」
「大丈夫なのか?」
「う、うん、まぁ…」
一戦交える前に、二人は魔力の心配をしていた。力を使いすぎて、倒れてしまわないか、または、命に関わることが…
「いや、僕側としては戦う前に魔力切れた方が助かるんだけど…」
「どうでもいいでしょう、はやく、やるわよ」
「はいはい」
空は赤黒く、まだ少し地面が揺れているような感覚。
「霜月。あなたにはこれぐらいで充分よ」
「!」
彩がひょいと霜月を転ばせる。
「はぁ…氷雨」
突如彩に向かって大量の氷の矢が飛んでくる。
彩はそれを避けつつ、魔法を使っていく。
「霜月。あなたは私を抑え込めればいいんでしょ?なんで凍らせないわけ?」
「…それは昔、焼かれたからな…」
「あぁ、そんなこともあったっけ…」
昔のことを思い出しながら、二人は数十分戦い続けた。
もちろん周りは氷が散乱したり、焼け野原になったりと後始末が大変な状態になっているのだが…
「はぁ…そろそろ終わりに…」
「…きた」
「?」
次の瞬間、バリン、と音がして、赤黒い空が砕け散った。
「…!結界が…」
「そう。あくまでも私の目的は結界を壊すこと。そして、今壊れた。完全に。現世と隠世はつながった。昔みたいにね!」
「まずいことを…してくれたな、まったく…取り返しがつかない」
「そうね。私も壊せはするけど直せはしない。というか、どうやって作るんだか…?」
「それはあの本に書いてあったじゃないか。彩は最初から…」
空から何かが落ちてきた。彩は下がる。二人の間に、距離が、ある。落下物は現世からのようで、飛行機のようなものだった。
「もう、これを使うしかなさそうだな…なるべく使いたくはなかったが…」
「相打ちかしら?嫌いじゃないわ」
「…白魔」
「うっ!」
あたり一面が吹雪により視界が阻まれ、パキパキと氷の音が響く。だんだんと手が悴んで、まるで凍っているかのような感覚…!
「せめて、里奈だけは…現世へ返してあげたかったんだけどなぁ…」
吹雪が消えたあと。彩は氷の矢があちこちに刺さり、致命傷を負っていた。いくら妖怪とはいえ、治せるほどの傷ではない。
「はぁ…霜月、やってくれたじゃないの…」
「もうだめだな。彩も、その傷じゃ助からない。隠世は崩壊寸前。現世も大混乱。結界も…」
「ごめんって…あ、里奈は…」
「里奈はここに…」
「彩さん…!」
「ふふ…私は、あなたを現世に帰したあと、自分の魔力全てを贄に捧げ、扉を閉じる予定だったんだけれど…あなたは帰りたくないみたいね…」
「帰りたいです、帰りたいですけど…でも…」
「里奈。君は現世に戻るのが幸せだと思う。僕からもそれを勧める」
「…はい!」
里奈は、現世に戻ることを決意した。
「さぁ、元の世界へお帰り…」
「はい!ほんとにほんとに、ありがとうございました!琴葉、絶対に忘れないからね!」
「うん!またいつか、あえたらいいね!」
と、約束を交わし、里奈は現世へと帰っていった…
「彩。魔力を全て捧げるということは、人間になるということ。それでも…」
「あら?命は助かるってこと?じゃあ…私も…」
「現世へ。何年振りか?帰るのは」
「忘れちゃったわよ…」
彩は、ふっと目を閉じた。
次回、最終回。