テラーノベル
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私の顔も見たくない、と言った遥香は私に何も言いつけなくなったばかりでなく、奥様を通して部屋に食事を運ぶように広瀬さんに命じた。
「広瀬さんの手間を増やしてしまいましたね…すみません」
「ううん、ワゴンごと置いておくだけだから簡単なことよ。ちょっとこの前のは、遥香様が言い過ぎだから顔を合わせづらいってこともあるんじゃない?」
ワゴンを下げて来た広瀬さんから、空いたお皿を受け取って片付けをする。
遥香はここに来ないだけで、自分の部屋からこの夏限定コスメの投稿をしたり、奥様と出掛けたり、普通の生活をしている。
ただ、私と顔を合わせないだけ。
「それにしても、ドレスの色でパーティーに参加出来ないなんて、お茶会の着物のルールとか結婚式参列のマナーのように一般常識ではないところで困るのね」
「驚きですよね。でもそういうことを楽しめる方たちの集まりなのでしょうか?」
「それは言えてる。問題の大門様のお写真、見た?」
「はい、お嬢さんの投稿ですよね?」
「そう」
食洗器をセットする私と、冷蔵庫チェックする広瀬さんは視線を合わせて
「あれだけドレスのリメイクを頑張ったので、探してみたらすぐにヒットしました」
「私も気になって探したの。会場が明るい雰囲気で、皆さんのドレスも素敵だったわ。でも、桑名さんのリメイクドレスが本当によく出来ていたわよね」
「ありがとうございます。遥香様にお話を聞いたので、あの投稿動画で大門様がすぐ分かりました」
「うん。イギリスのロイヤルかと思うくらいのロイヤルブルー」
「お似合いでしたね」
と話をしたほど、大門様の奥様は長身にシンプルなドレスを……シンプルさがロイヤルブルーを強調するかと思うくらいのドレスを着ておられた。
そして昼休みに【奴隷家政婦】アカウントのフォロワー数が、遥香のアカウントと並んだのを確認した日の夜。
今夜は、ご主人様と篤久様、そして以前にも会ったことのある篤久様の叔父様の3人がゆっくりと夕食を楽しんでおられる。
じっと聞くつもりはないけれど、聞こえてしまう話題の中心は、叔父様が出張に行かれていて大きな契約をしたことのようだった。
「ありがとう。やっぱり、これは美味しい」
「ありがとうございます」
空いた器を下げに行くと、篤久様があの酢の物を食べながら私にそう言った……直後
「あなた、篤久さん。素晴らしいお知らせですわ」
「ビッグニュースよ」
と大きな声で、奥様と遥香がダイニングにやって来た。
珍しい……というか私が来てからは初めてだ。
ここで皆さんが揃うのは……
「今でないといけないことですか?食事中、しかも客がいる」
「他人ではないので、むしろ同時にお伝えしたいお知らせです」
斜めに顎を動かす会釈のようなものを、叔父様に向けた奥様に隠れるように私は下がる。
遥香と会わない方がいいかもしれないから。
「お兄様のお見合いが決定したわ」
へっ……?
「そんなもの、誰も頼んでいません」
「そうだね。私も承知していないが?」
篤久様とご主人様の淡々とした声がキッチンまで聞こえ、広瀬さんはキッチンの一番ダイニング側にピタッと張り付いて、耳をダンボにした。
コメント
5件
どこぞのご令嬢ではなく真奈美ちゃん? まさか真奈美ちゃんがお見合い相手? あれらの考えることだからあれなんだけど…なにか、は?みたいな理由。
へっナニを勝手に!! わたしももちろん、壁耳よ〰
うわー!そう出てきたのか〜あれら!!! ①真奈美ちゃんを完全無視、辞めさせられないため。 ②真奈美ちゃんを庇った篤久様に矛先を向けて、真奈美ちゃんから遠ざけようとしている? ご主人様がなんて言うか楽しみでしょうがない! 私はそのままそこにいるわ!!!😆