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あまね🍡💠
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十五年前――。
能力を利用した初めての悪質事件から数日。
街には再び穏やかな日常が戻っていた。
テレビでは能力を活かした新商品の特集。
街では能力を使って仕事をする人々。
「便利になったね。」
「事件はあったけど、一部の人だけでしょ。」
「能力が悪いわけじゃない。」
多くの人は、そう考えていた。
蓬莱は駅前を歩きながら、その会話を静かに聞いていた。
「まだ……。」
「誰も危険性を実感していない。」
-–
ニュース番組。
『能力を利用した事件を受け、政府は法整備について協議を開始しました。』
『現在、能力犯罪を想定した法律は整備されておらず、政府は新たな法制度の検討を進めています。』
画面には国会議事堂が映し出される。
蓬莱はテレビを見つめ、小さく呟いた。
「法律も……。」
「まだ追いついていない。」
-–
その日。
ZEROは地域の小学校で講演会を開いていた。
体育館には多くの児童と保護者が集まっている。
蓬莱は優しい表情で子どもたちを見渡した。
「今日は、能力について一緒に考えてみましょう。」
子どもたちは真剣に耳を傾ける。
能力を使った遊び。
能力を使った仕事。
能力の便利さ。
蓬莱は分かりやすく説明していく。
そして最後に言った。
「能力は、とても便利です。」
「でも。」
「便利だからこそ。」
「正しく使うことが、一番大切なんです。」
その時、一人の男の子が手を挙げた。
「はい。」
蓬莱が微笑む。
男の子は真っ直ぐ蓬莱を見つめた。
「能力があれば。」
「みんな幸せになれるんじゃないの?」
体育館が静まり返る。
蓬莱は少し考え、穏やかに答えた。
「能力だけでは幸せになれない。」
「一番大切なのは。」
「その力を使う人の心なんだ。」
男の子はゆっくり頷いた。
「心……。」
「うん。」
「ありがとう。」
蓬莱は笑顔で頷いた。
-–
同じ頃。
イコル・ヤーレン研究所。
博士は政府関係者との会議に出席していた。
「能力事故。」
「能力犯罪。」
「今後も増える可能性があります。」
会議室が静まり返る。
博士は真っ直ぐ前を見つめる。
「だからこそ。」
「能力教育を義務教育へ組み込むべきです。」
一人の議員が尋ねる。
「学校で能力を教える、と?」
博士は頷いた。
「はい。」
「薬を投与するだけでは終わりではありません。」
「能力と共に生きる責任も。」
「子どもの頃から学ぶ必要があります。」
会議室の空気が少し変わった。
-–
講演会終了後。
詩織は資料を片付けていた。
そこへ義一が近付く。
「お疲れさまでした。」
詩織は笑顔で振り返る。
「今日は警備まで、本当にありがとうございました。」
義一は少し照れたように笑う。
「いえ。」
「無事に終わって安心しました。」
少しだけ沈黙が流れる。
義一は荷物を持ち上げた。
「駅まで送りましょうか。」
詩織は少し驚いた後、優しく微笑んだ。
「ありがとうございます。」
二人はゆっくり歩き始めた。
-–
夜。
ZERO本部。
メンバーたちは今日の講演会について話し合っていた。
「子どもたちは真剣でしたね。」
「少しずつ伝わっている気がします。」
皆が前向きな言葉を口にする。
蓬莱も笑顔で頷いた。
「きっと。」
「少しずつ変わっていきます。」
その言葉にメンバーたちは安心した表情を浮かべた。
-–
会議が終わる。
一人になった蓬莱は机の上に置かれた新聞を手に取る。
『能力犯罪』
『法整備の遅れ』
『放火事件』
同じ言葉が何度も目に入る。
その様子を、詩織だけが静かに見つめていた。
「蓬莱さん……。」
蓬莱は気付くと、いつもの笑顔を見せた。
「大丈夫ですよ。」
「少し考え事をしていただけです。」
詩織はそれ以上何も聞かなかった。
-–
その頃。
政府庁舎。
能力犯罪についての会議が続いていた。
一人の官僚が資料を机へ置く。
「教育だけでは限界があります。」
別の官僚が頷く。
「能力犯罪へ対応する専門組織も必要でしょう。」
部屋が静まり返る。
議長がゆっくり口を開いた。
「まずは。」
「準備室を立ち上げましょう。」
誰も異論はなかった。
能力社会は、新たな時代へ進み始めていた。
-–
その夜遅く。
蓬莱の携帯電話が鳴る。
「……はい。」
電話の向こうから、ZEROメンバーの焦った声が聞こえた。
「蓬莱さん!」
「また……。」
「能力を悪用した事件が起きました!」
蓬莱の表情が少しだけ曇る。
「……今回は。」
「何があったんですか。」
電話の向こうで、重苦しい沈黙が流れる。
「能力者同士の口論が発展して……。」
「能力を使ってしまったそうです。」
「一人が重傷です。」
蓬莱は静かに目を閉じた。
「……そうですか。」
電話を切る。
詩織が静かに尋ねる。
「また事件ですか……?」
蓬莱はゆっくり頷いた。
「今度は。」
「能力者同士の喧嘩でした。」
「能力の種類は関係ない……。」
「ついに。」
「人を傷付けるために能力を使う時代が始まってしまった。」
窓の外では、能力を使って楽しそうに遊ぶ子どもたちの笑い声が聞こえていた。
その笑顔を見つめながら、蓬莱は小さく呟く。
「まだ……。」
「間に合う。」
そう信じたい。
そう願いたい。
しかし。
現実は、その願いよりも早く動き始めていた。
第60話へ続く
コメント
1件
お疲れ様です!第59話読み終えたよ〜😭💕 今回、蓬莱が小学校で子どもたちに「能力の使い方」を伝えてるところ、すごくグッときた…。「能力だけじゃ幸せになれない、大切なのは使う人の心」っていう問いかけが深すぎる…!!✨一方で、現実では能力者同士のケンカで重傷者が出てて、そのギャップが切なかったよ…。蓬莱が「まだ間に合う」って信じたい表情で窓の外の笑い声聴いてるところ、胸がぎゅっとなった…🥺 次回も楽しみにしてるね!!🔥