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劣等生。
僕が一番分かってる。
二本線で試験の成績が良い訳でもなく、一番とは言わなくとも勉強も魔法も均等にできるようなこともなく、筋肉で全てを解決出来る訳でもない。ましてや最年少で神格者になれる器などある訳がなかった。
なんで僕は存在しているのだろうか。
なんて、普段は考えない。普段。考えていたら間違いなくぶっ飛ばされるだろう。グーパンで。
では何故今そんな事を考えているのか。
目の前に強大な敵がいるからだ。
自分たち人間よりも遥かに大きく、力も強い。
負け。圧倒的な力の差。
自分ではどうにも出来ないという絶望が胸を占める。先程述べたような心強い友人が隣に居てくれたらどんなに良かっただろう。よりによって僕なんかがここに一人だけだ。
目の前の魔物が拳を振り上げる。
生命の危機を感じ本能的に避ける。が、どうやら無駄なようだ。地面が変形し、ナイフのような鋭利な形になって襲ってくる。
「ひっ…」
情けない声が上がり、涙がとめどなく溢れる。そんな自分に酷く失望する。
必死に杖を振り基礎魔法を唱える。
勿論相手には痛くも痒くもないようで動きが鈍ることは微塵もなかった。
それでも唱え続ける。自分の生命の為に。自分の名誉の為に。
杖を振り聞き馴染みのある人のが多いであろう魔法を唱える。
「パルチザン」
何も起きる訳が無い。そもそも兄の固有魔法など自分が使えるはずなかった。
それでも、もうどうしようもなかった。
鋭利な岩は僕の身体を突き、赫く染め上げた。鉄の匂いがベタベタと纏わりつく。生ぬるい液体が服に染みる。
ついに限界が来てしまったようだ。
魔力不足。声が出ない。視界が霞む。
嗚呼、もう終わりか。などと落ちかけている脳みそで言葉を紡ぐ。
最後にもう一回会いたかったな。
それは重力魔法の彼でもなく、この世のイケメンを恨む彼でもなく、愛が重すぎる彼女でもなく、才能と努力に溢れている兄でもない、
「フィンくん、」
爆発音が聞こえ、大きな地震が起きる。
待ち望んでいた彼は杖を持たずにそこに立っている。筋肉とシュークリームを愛し、神に愛された男。
「マッシュくんっ!!」