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「本当に……私はダメな女ですね」
「どうしてダメなの? ダメだとすれば、一時期でも菜々子に気が行ってしまったことは確かだから……本当に最低なのはフラフラした僕だよ」
「そんなことないです。私、一弥先輩のことがずっと好きで。でも、一弥先輩は菜々子先輩が好きで……。そんな時に本宮さんが現れて。私、今、正直、一弥先輩が好きなのか、本宮さんが好きなのか、本当にわからないんです。それが本音です。本当にごめんなさい」
こんなことを大好きな一弥先輩にストレートに話している自分が信じられない。
「僕を好きでいてくれたなんて……すごく嬉しい。本当に嬉しいよ。なのに僕はちゃんと決めれなくて菜々子に告白してしまった。僕こそ本当に……バカだよね」
「一弥先輩……」
「でも、今は菜々子に未練はないし、恭香ちゃんしか見てないんだ。まあその分、僕は余計に最低なのかも知れないね」
私のことを好きでいてくれたなんて、それだけで奇跡だ。
こんなことがあるなんて……
「恭香ちゃんが誰を好きかまだ決められないのに、こんなことしたらずるいかな? でも、本宮君じゃなくて……僕と付き合ってほしいと思ってる」
「一弥先輩……」
「僕じゃ……ダメかな?」
一弥先輩の顔が、さらに目の前まで迫ってきた。
あと数ミリで先輩のくちびるが私の唇に触れてしまう……
「やめてっ」
気がついたら、私は一弥先輩を突き飛ばしていた。
先輩は私のせいでそのまま会議室の壁に背中をぶつけた。
「ご、ごめん……なさい。私……」
「僕が悪い。ごめん、こんなことして……本当に……ごめん」
先輩に謝らせるなんて、どうしてなのか自分でもわからない。
こんなに好きで、胸が熱くなってるのに。
このまま一弥先輩と付き合ってしまえばいいのに、なのに今度は朋也さんの顔が私の頭の中に浮かんでしまった。
あの時のことがフラッシュバックしてくる。
もう、嫌だ。
あまりにも優柔不断な自分に心底腹が立った。
私は、いたたまれずに部屋を飛び出した。
大好きだった先輩が、せっかく好きだと言ってくれたのに……
奇跡が起こったのに……私は本当にバカだ。
肩を落とし、ミーティングルームに戻ったら、梨花ちゃんがいた。
「あっ、恭香先輩~」
そう言いながら、笑顔で私の前に駆け寄ってきた。
ちょっと……ドキドキする。
何を……言われるの?
「恭香先輩。さっきはありがとうございました」
「えっ?」
「一弥先輩と2人で私にいろいろ優しくアドバイスしてくれて……。付き合うんですか? 私、応援しませんよ。恭香先輩みたいな人が、あんなイケメンと付き合うなんて、正直笑いものですから。身の程知らずです」
こんなにキツいセリフを笑顔で言える梨花ちゃんがよくわからない。
「一弥先輩と付き合うとか……そんな話しにはなってないから。確かに付き合ったとしたら身の程知らず……だよね。私も梨花ちゃんみたいに可愛い女の子だったら良かったのにね」
「一弥先輩に好きだって言われて調子に乗らないで下さいね。本当にみんなに笑われますよ。これは可愛い後輩からの親切なアドバイスです。せいぜい恥をかかないように気をつけてくださいね」
梨花ちゃんはニヤッと笑った。
そう言われても、私は私。
このままの私でずっと生きてきたんだ。
まるで自分の人生を否定されているようで、とてもショックだった。
でも、一弥先輩と朋也さんに告白されたことは、夢じゃない現実……
もちろんまだ信じられないけど、これはいったいどういうことなのだろう?
頑張っていれば絶対に良いことがある――
そう信じて真面目に生きてきたご褒美なのだろうか?
だけれど、いつまでも甘えて曖昧にしていたら、そのうち2人ともに愛想つかされて嫌われてしまう。
いったい私は……
どうすればいいのだろう。