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こんにちは〜
まだ寒い日が続くので、暖かくして下さいね
叶『』 葛葉【】
6月◯日
僕と葛葉が出会って今年で1年が経ちます。
最近になって葛葉も僕と会うのが楽しいと言ってくれて嬉しい。
僕はもうすっかり体が動かなくなってしまって、これを書くことも少し疎かになってしまった。
今日は僕の我儘で葛葉に車椅子を押してもらいながら海に行った。
僕は体が弱かったから外に出たこともあまり無かったから、凄く楽しかった。
一度は言ってみたかった海に初めてできた友達と来れるなんて…
葛葉は僕が海に行きたいと伝えたら【安静にしとけよ、まぁ別に叶が行きたいなら良いけどよ…】なんて、二つ返事で答えてくれた。
最近葛葉は、僕のことを心配そうにする事が増えた気がする。
僕の気の所為なら良いんだけど…
◯月30日
暑さも本格的になってきた。
葛葉は暑いのが苦手らしい…
最近葛葉に、『葛葉、その髪の毛熱くない?』なんて言ったら【確かに、切るか…】って。
あんな綺麗な髪を切るんだ…少し勿体ない気もするが、葛葉は不器用だから、髪を結う事もあまり得意では無さそう。
僕がもう少し動けたら、葛葉の髪を結う事もできたかも知れないのに…
7月◯日
今日は葛葉に大事な話があると言って、葛葉を縁側に呼び出した。
葛葉、不思議そうにするでも無く、僕の言いたいことを見据えたような目つきで僕を見てきたから、少し怯んだ。
話したのは、僕の余命の事。
いつ話そうかと思っている内にこんな時期になってしまった。葛葉は黙っていたけれど、泣かなかったから少し助かった。
葛葉が泣くのは見たくなかったから、葛葉が泣かないのなら僕は安心してあちらへ行けそう。
◯月5日
今日は葛葉と花火を見た。僕の”友達とやりたい事”に入っていたから、葛葉と見れて嬉しい。
もう手があまり動かない。痛みがないから余計に辛い…
もうあの美しい白い髪に櫛を入れることすら叶わ無い。
7月◯日
今日は葛葉来なかった。多分明日が僕の誕生日だと伝えたせいで、変な気を使わせたのかも知れない。
贈り物より、葛葉と過ごせる方が幸せなのに…
7月7日
とうとうこの日がやってきてしまった。
今日は葛葉が来てくれた。
贈り物の中にはロトに良く似た猫が刺繍されている手ぬぐいだった。
2人で縁側に座って短冊とお餅を食べた。余命の事を思い出したのか、葛葉は僕を悲しそうな目で見る。
葛葉にこんな顔をさせてしまった。でも、いつ見ても葛葉の赤い瞳は綺麗だ。
短冊に書いたことは葛葉には内緒だ。
『(葛葉が幸せで有りますように)』なんて見られてしまったら、葛葉が照れちゃうから。
今日は最後だから、頑張って書いた。
大丈夫、僕は怖くないから。
……
バッサリ切った白い髪に、彼奴が美しいと言ってくれた赤い瞳を潤ませて…
足元で息もなく寝ている彼の手にはあの手ぬぐいが握られている。
俺が叶の日記の最後のページを開いた時、
カサリと何かが落ちた音がした。
そこにあったのはクシャクシャに丸められた赤色の短冊。
俺はそれを拾い上げてガサガサと開く。
【何だよ…何が怖くないだっ…っ何度俺に嘘を付けば気が済むんだよ…叶…】
シワの付いた赤い短冊。そこに書いてあったのは、叶の最後の願いだった。
絶対に”叶わ無い”その願いは、昔のあいつらの決まり文句の様で。
ポタポタと短冊に滲む涙は、赤に沈んでほんのりとインクを溶かす。
『”死にたくない”』
これが叶の最後の願い。
俺が一番聞きたくなかった言葉だ。
『僕の名前は叶です。叶わ無いと書いて”叶”。いい名前でしょう?』
コメント
2件
最高すぎるよ! あーちゃま天才すぎないか?