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しばらく沈黙のまま、ふたりで雨音を聞いていた。
やがて、ざあざあという音が次第に小さくなり、軒先から覗く空が明るさを取り戻す。
「……止んできたな」
悠真が立ち上がり、傘を軽く揺らす。
咲も慌てて立ち上がり、鞄を抱き直した。
まだ胸の鼓動は落ち着かないまま。
「妹ちゃん、行こうか」
さりげなく差し出された傘に並んで歩き出す。
足元に残った雨水がキラキラと反射して、ふたりの影を長く伸ばしていた。
――この帰り道が、もう少しだけ続けばいいのに。
咲はそんなことを思いながら、濡れた道を踏みしめていた。