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「私を、よく見なさい……」
背けた私の顔に、彼が自らの顔をぐっと迫らせる。
「……この顔に、女性はみな取り込まれるのです。今まで、この私を拒もうとした女性など、一人もいませんでした……」
整って美しいその完璧さが、逆に憎らしくも映る。
まるで、それは──その美貌で人を誘惑しようとする悪魔そのものにも思えて、ふつふつと嫌悪感が湧き上がってくるようだった。
絡みつくような眼差しから、視線を外すと、
「なのにあなたは、私からそうやって目をそらそうとする……」
顎が持たれ、クッとまた向き合わされた。
「……君は、この私に虜にされたいとは思わないのですか?」
息がかかるくらい間近で、彼が低く囁く。
「……虜になんか、私は……」
目を合わせないようにして、下唇をぎゅっと噛み締め、必死でその誘惑に抗う。
「……どうしてでしょうね? どうしてあなたは、他の誰もがそうするように、私を受け入れようとはしないのか……」
彼が言いながら、唇に緩やかに吸い付いて、
「……知りたいのですよ、それがなぜなのか……」
つとまた唇を離すと、睫毛が触れ合う程の距離で、じっとこちらを見つめた。
「……君は、私に、何を見ているのです?」
まるで観察でもするように、つぶさに覗き込むその顔に、
「……悪魔……」
一言を告げる。
「悪魔…ですか……」
呟いて、「ふっ、くくっ…」と、彼が喉の奥で笑う。
「なぜ、私が悪魔だと言うのです? 誰も、私のことをそんな風には言いませんでしたよ……」
そうして、その笑みを引っ込めたかと思うと、
「私が本当に悪魔なら、あなたはどうするんですか?」
私の両肩を、不意に彼の両手が鷲掴んだ──。