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🎼🍍🦈 @こさめ宅
こさめ、捨てられた____?
2年以上付き合ってきた恋人の家に行ったら、誰もいなくて。
ご近所さんに聞いたら最近引っ越しちゃったって。
こさめ、聞いてないし。電話しても繋がらないし。
メールも既読無視。そのうち既読にすらならなくなった。
一緒に住もうって言ったじゃん。
結婚も視野にいれてくれてそうだったし、プロポーズしてくれるかなって期待してるころだったのに…
なんで…っ?
唖然としたまま家に帰ってきて、なにもできないまま夜になってしまった。
気を紛らわせたくてとりあえずつけていたテレビの内容もまったく覚えていないし、面白くもない。
食事はかろうじてとったけど…
こさめはこれから、どうやって生きていけばいいの…?
ぴんぽーん
急に鳴ったインターホンにびくっとしてしまう。
こんなときに誰だよ、と思いながらテレビを消して玄関に向かった。
ずっとついていた音が消えると、いきなり静かで、それはそれで心細い。
「はい」
「あっこさめ!ごめんね急に」
「らんくん…」
ドアを開けると、少し頬が赤くなったらんくんと、いるまくん。それから、らんくんに抱えられたなつくん。
みんなをみた瞬間、見慣れた顔ぶれになぜか安心して、彼が用件を言う前に涙が溢れてきてしまった。
「ちょ、こさめ!?どうしたっ?」
「らんくっ…」
明らかに焦った声色のらんくんがこちらに手を伸ばす。おいで、ってことだろうか。
なんとなく頼りたくなって一歩踏み出そうとしたところで、すっと長い指先が頬に触れた。
「なつくん…?」
「こさめ、なかないで…」
口があんまり回ってないから、たぶん酔ってるなつくんだった。そのまま、らんくんを離れた彼に抱き寄せられる。
酔っているせいでいつもよりもやわらかい表情と高くなった体温が、いまはすごく心地良い。
「こさめ。なにがあったか…話聞くよ?」
らんくんが心配そうな顔で言ってくれる。
いるまくんもその横で頷いてくれてる。
けど、そのときなつくんがふたりを振り返った。
「おれがはなしきく」
その言い方とむすっとした表情があまりにもちっちゃい子みたいで。
泣いていたのも忘れて、思わず3人で吹き出してしまった。
いるまくんが苦笑しながらなつくんの肩を軽く叩く。
「まあ…なつ、今酔ってるし。明日には忘れてると思うから、話しやすいんじゃね?ついでになつの世話も頼むわ」
たしかにと思った。
こんなに酔ってる今のなつくんなら…話せるかも。
聞いてるか聞いてないか微妙なところだもん。
「じゃあなつくん、泊めるね」
こさめがそう言うと、らんくんといるまくんが揃って頷き、なにかあったら言って、と言いながら離れていった。
「なつくーん、おきてー」
ふたりを見送ってドアを閉めながら、未だにこさめに抱きついたままのなつくんに呼びかける。
鍵をかけてなつくんに向き直ると___
ぱっちり目を開けてこさめをみつめる彼と目が合った。
「…え、?」
え、なに、酔ってるんじゃなかったの?と心の中で突っ込みながら戸惑っていると、なつくんが真面目な顔でこさめの頬を両手で包んできた。
「こさめ」
その掠れ気味だけど優しい声で名前を呼ばれるだけで、一気に涙が押し寄せてくる。
「なつく…っ」
今度はこさめからぎゅっとしがみついた。
なつくんはぽんぽんとこさめの背中をさすりながら、ゆっくりリビングまで手を引いてくれた。
「で、どしたの?」
すっかり酔いが醒めていつも通りのなつくんが隣に腰かけながら首を傾げる。
たぶん、明日まで覚えてるんだろうから迷ったけど。
少しずつ、話すことにした。
ぜんぶを話し終わったあと、こさめはひとつため息をつき、ごめんねと微笑んでみせる。
重い話になってしまったのはほんとに申し訳ない。
途中かなり泣いたし。なんて言ってるかわからなかっただろうし。
それでも、一度も遮らずに話を聞いてくれたのってすごくありがたい。
「そいつ、最低だな。世間体とか気にしてこさめを守る覚悟決まらなくて、でも別れを切り出せなかったみたいなかんじじゃね…普通に殺したい。たぶん罪にならん」
「えぇぇぇっ!?ちょ、ぜったいだめやろ!」
「ふははっ笑」
とんでもない発言に驚いて必死に止めるこさめを見て笑うなつくん。
冗談だよと言いながら緩く抱き寄せてくれる。
なつくんの肩に顔を埋めるように支えてくれてるから彼の表情は見えないけど、真剣さが滲んだ声が頭上から聞こえた。
「こさめがそいつのこと、すごい好きだったの知ってるからさ。ほんとに許せない。まじで。…まだ好きなん?」
「…たぶん好き…なのかな。ショックが大きすぎてまだ気持ちの整理つかないからわかんないけど…」
そっか、と短く呟いたなつくんが抱きしめる力を強めた。それからゆっくり頭を動かして、ちょうどこさめの耳に吐息がかかるくらいのところまで近くなった。
「そいつのことは忘れなくてもいい。けど、その分だけ辛いだろ。だからさ…今だけは頭の中俺でいっぱいにしてよ。そしたら、楽でしょ?」
「え?どういう……ん!?」
耳元で響いた直後、首筋のあたりに温もりを感じた。
最初は戸惑ったけど、そのやわらかい感覚で口付けだってわかった頃には、つーっと顎まで舌先が這っていて、そのまま頬にキスが落とされた。
じわじわと触れられたところから熱くなってくる。
ゆっくり顔をあげたなつくんがじっとこさめを見つめて、切なげに微笑んだ。
「赤いよ?」
「だってなつくん、そんな…」
「…ねぇ、いいよね。こっちみて?」
「え、なにが…」
恥ずかしくなって視線をそらしたこさめの顎を軽く持ち上げて、目線を合わせてくる。
それがなんとなく、逃げられなくて。
されるままでいると___
いつの間にか、唇どうしが触れ合っていた。
一度ぱちりと瞬きをした。
それで、その状況を理解した瞬間、さっきのなんて比にならないくらい顔が熱くなってくるのが自分でわかった。
けど、触れた温度があったかくて、ぜんぶ包み込んでくれるようで。
不思議と安心できて、心地良い。
「やっぱり酔ってるの…?//」
「かも笑 ほら、いっしょに寝よ?」
「…うん」
いたずらっぽく笑ったなつくんに手を引かれながら、その後ろ姿を見上げる。
“なんで口にもキスしたの?”
“こさめのためにどうしてここまで?”
ただ「なんで?」で頭の中がいっぱいになって離れない___
促されるままに布団に入ると、思ったよりも近い距離に思わず身体が強張る。
あんなことされたあと、こんな近くになんて普通、いられない。
動揺してるのに気づかれたくなくて、なつくんに背を向けた。
「なんでそっち向いちゃうの」
「だってそんな、向かいあってなんて…」
「いーじゃん」
そっとおなかの辺りに腕が回った。
身動きが取りにくいくらいの最低限の力が込められていて、まるで逃がさないって言われてるみたい。
「こさめ、身体強張ってる。緊張してんの?笑」
「誰のせいだよ…」
くすりと笑う声が聞こえる。
顔をみなくてもわかる。
なつくん、いまぜったい満足げな顔してる。
「もう俺のことしか考えられない?」
耳元で低く囁かれて、びくりと身体が震えた。
なつくんの思い通りになってるのがなんとなく癪だけど、まあその通りなので大人しくこくりと頷く。
「それでいいよ。…おやすみ、こさめ」
最後のひとことが耳に甘く響く。
首元にかかる吐息がくすぐったい。
動きにくいから、彼の腕も邪魔だ。
でも
“いまはまだ、離れたくないかも___”