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## 第45話:『新たなる翼、そして』
「――よし、背部メインプラグの絶縁処理、完了! リン、サテライトシステムの回路遮断(シャットダウン)シールドを被せるぞ!」
「了解! エネルギーの逆流、完全にゼロを確認。サテライト・コントロールの基盤はそのまま休眠状態(フリーズ)で残して……これで、あの忌まわしい月からの電波は二度とこの機体には届かないわ!」
ガドルフの工房の地下ドックは、昼も夜もない文字通りの「戦場」と化していた。
ゼストの整備班とガドルフ達が入り乱れ、飛び交う激しい火花と、激しい金属の切削音がドックの壁に反響している。
中央に鎮座するプロト・ウイングエックス――『GXW-00-PR』は、今まさにその肉体を大きく作り替えられようとしていた。
かつて背中にそびえ立っていた、あの巨大なリフレクターの基部やサテライトキャノンの接続アームは、完全に解体されて床に転がっている。しかし、ゼロの強い希望により、機体のブレインである『ゼロ・システム』だけは取り外されることなく、コクピットの奥で静かに明滅を繰り返していた。あの未来予測の狂気は、ゼロが自らの意志でねじ伏せ、仲間のために使いこなすと誓ったからだ。そして、かつて大戦を終わらせかけた最強の戦略兵器『サテライトシステム』は、無理に撤去すれば機体の全OSが崩壊する危険性があったため、ガドルフの判断により、回路を完全に遮断・封印した状態で機体の奥底に眠らされることとなった。
「おい、小僧! 突っ立って見ておらんで、メトロポリスから命がけで剥ぎ取ってきたあの『超高密度マルチリンク・コンデンサ』をここに持ってこんか!」
キャットウォークの上から、ガドルフが拡声器越しにゼロを怒鳴りつける。
「分かってんだよ、ジジイ! 今、リンの姉ちゃんに最終チェックしてもらってたんだ!」
ゼロは、両手でずっしりと重い球体状のコンデンサユニットを抱え、ウイングエックスの背部へと続く足場を駆け上がった。
そこには、カイル、ジュード、セレスの三人も集まっていた。前回の激闘で左腕を失ったシャドウエッジも、隣のドックで急速補修を受けている。
「これだな、新入り。これが、お前の新しい『盾』と『翼』の心臓になるわけだ」
ジュードが包帯を巻いた腕をさすりながら、コンデンサを見つめる。
「ええ。サテライトの光を失った代わりに、あなたが手に入れる人間のための力……。ゼロ、絶対にルカス軍の計画を止めるわよ」
セレスが、真っ直ぐな瞳でゼロを見据えた。
「カイルのおっさん、ジュード、セレス……ありがとよ。みんなが繋いでくれたパーツだ。ジジイ! 頼むぜ!」
ゼロがコンデンサをドックの固定アームにセットすると、ガドルフはフンと鼻を鳴らし、職人の顔になってコンソールを叩いた。
「よし、全班、最終組み立て(アセンブル)に入るぞ! 大型ホイスト、背部マルチプル・ディバイダーのフレームを吊り上げろ! 結合と同時に、コンデンサの変調パルスを同期させるんじゃ!」
重厚な機械音が響き、霧の街の地下で眠っていた大型の複合兵装――『ディバイダー』の漆黒のプロトタイプ・フレームがゆっくりと下降してくる。それは、サテライトシステムという天の光に頼るのではなく、機体内の全エネルギーを効率的に循環させ、爆発的な推進力と、鉄壁の防御、そして複数の標的を同時に一掃するマルチロックビーム砲『ハモニカ砲』へと瞬時に変形する、純粋な技術の結晶だった。
溶接の青白い閃光が、ウイングエックスの新しい背中を、そしてゼロの決意に満ちた横顔を激しく照らし出していた。
ドックの喧騒から少し離れた、ゼストの居住区へと続く静かな通路。
その窓辺に、ノアは一人で佇み、暗い霧の向こうを見つめていた。その手には、ミラが先ほど差し入れてくれた、まだ温かいスープのカップが握られている。
「……ノア。ここにいたのね」
ミラが、静かに歩み寄ってきた。
「……何の用よ。私はもう、あなたたちにルカス軍の計画(世界調律計画)のことは全部話したわ。これ以上、絞り出せる情報なんて何もないけれど」
ノアは相変わらず冷たい口調で、しかし以前のような狂気や毒は消え、どこか寂しげな視線を落とした。
「ううん、情報の話じゃないの。ノア、体調はもう大丈夫? ずっとカプセルの中に閉じ込められて、無理な調整をされていたって、セレスさんから聞いたから……」
桜春遥朔🌸
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来華
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ポンデリング
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「……あいつ、余計なことを。……ねえ、ミラ。私には分からないのよ。なんであなたたちは、そんなに必死になれるの? あのゼロって男も、ウイングエックスなんていう呪われた機体にわざわざ新しいパーツを組み込んで、また戦場に戻ろうとしてる。ルカス(あの男)の力は絶対よ。世界は一度、あの圧倒的な火力で綺麗に焼き払われて、管理されるべきなのよ。人間なんて、放っておけば裏切り合って、傷つけ合うだけなんだから……」
ノアの身体が、微かに震えていた。彼女が受けてきた「調整」という名の精神的虐待、そして敗北したことでルカス軍に捨てられたという絶対的な孤独が、彼女の心を縛り付けていた。
「確かに、人間は間違えるし、傷つけ合うこともあるかもしれない。……でもね、ノア。ゼロは一人で戦っているんじゃないの。カイルさんも、ジュードさんも、セレスさんも、みんなが傷つきながらも、ゼロのためにパーツを繋いでくれた。……私も、みんなと一緒に、誰も泣かないで済む未来へ進みたい。だから、世界を諦めたくないの」
ミラの真っ直ぐで温かい言葉が、ノアの凍りついた心にゆっくりと染み込んでいく。ノアはスープの温もりを感じながら、しばらく黙っていたが、やがて、何かを断ち切るように深く息を吐き、ミラの方を振り返った。その瞳には、今までにない明確な『強い意志』が宿っていた。
「……ミラ。私を、ルカス軍の暗号通信が傍受できる、ゼストの無線室へ連れて行きなさい」
「えっ……? ノア、それって……」
「勘違いしないで。あなたたちの仲間に魂を売ったわけじゃないわ。ただ……あの男が、私を道具として扱い、壊れたからとゴミのように捨てたあのルカスが、私の知っているすべてを使って世界を綺麗に管理しようなんて……そんなの、絶対に気に入らない。私のプライドが許さないのよ」
ノアは自嘲気味に、しかし不敵に微笑んだ。
「ルカス軍の次の狙い、そして計画の第一段階となる中継基地の座標……私の頭の中にあるアクセスコードを使えば、ゼストのシステムで確実に弾き出せるわ。……ルカスの鼻を明かしてやるのよ。ミラ、あなたたちの『絆』とやらが、あの絶対的なシステムに通用するのかどうか、私が特等席で見極めてあげる」
「ノア……! うん、ありがとう……!」
ミラは嬉しそうに微笑み、ノアの小さな手をそっと握りしめた。ノアは少し顔を赤くして「離しなさいよ」と呟いたが、その手を振り払うことはしなかった。
ドックに、一際大きな重金属の駆動音が響き渡る。
ウイングエックスの背部に、強固にマウントされたマルチプル・ディバイダー。そのハモニカ状のシャッターが、ゼロのコンソール入力に従って、ガシャイン!と滑らかに開閉を終えた。
「――全システム、オールグリーン! コンデンサの出力同期率、98.2%! ガドルフのじいさん、やったぜ……!」
リンが歓声を上げる。
ハッチから身を乗り出したゼロは、かつての呪われた白銀の翼ではなく、背中に力強い『盾と推力』を宿らせた愛機を見上げ、不敵に笑った。
「蘇ったぜ……! これが、俺たちのガンダムウイングエックス・ディバイダーだ!!」
**次回予告**
ノアの決死のハッキングにより、ルカス軍の『世界調律計画』の第1ポイントが判明する。
牙を剥く絶対的な管理システムを止めるため、ゼストは霧の工房を飛び立ち、決戦の地へ向かい出す。
だが、その進路を阻むように、現れた新たなる敵が空を埋め尽くす。
「ウイングエックス・ディバイダー、ゼロ! 行くぜぇぇ!!」
サテライトの光なき荒野に、今、新たなビームの嵐が吹き荒れる!
次回、『故郷への進路、荒野の強襲』
**「未来を調律させてたまるかよ! この盾(ツバサ)で、世界をこじ開ける!!」**
コメント
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第45話、読み終わりました……! ウイングエックスがサテライトキャノンから“ディバイダー”へ生まれ変わる瞬間、すごく熱かったです🔥 呪われた力に頼らず、仲間が繋いだパーツで進化するところがグッときました。 ノアの「プライドが許さない」っていう拗らせ方も、ああいう裏返しの強さは好きだなあ。ミラの優しさにちょっとずつ解れてるのも尊い…。 次の決戦、行くぞゼロ!って応援したくなりました✨