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その後フェイトは淡々と話し続けたのであった。
三回前のループで彼らが誰に助けを求め如何に世界を救う協力を申し出たのかを。
その凡(おおよ)そを掻い摘んでお話しよう。
最初の滅びを見た彼等古代神達は、前述の通りに思ったそうだ。
――――こりゃ、自分達だけじゃどうしようもないだろう……
と。
そして、最初に思い至ったのが新しき神々の中でも魔神達、特に話し合おうとすれば一応話せるバアルだったらしい。
こんな事になるとは思いもしなかったために、気楽に人類に接触してはいらぬ知恵ばかり与えてきたアスタロトは、自分達で成敗したばかりで復活にはかなりの時間が掛かるだろうと思われたし、よしんば復活を早めたとしても怒り捲って話にならないだろうと判断したからだそうだ。
バアルにしてもニムロド時代バベルの塔を建造しようとした際に酷い目に合わせた事はアスタロトと同じだが、幸い長い時間が過ぎている事から怒りが消えていると思ったと言う。
レグバとメット・カフーの五人はヘルヘイムに赴くとアルテミスとイーチに事情を話したそうだ。
内容に納得した二人は五人を神殿迄通し、門番のヒュドラも世界の一大事だと理解して門を開けてくれたらしい。
至極順調に進んでいたのだが、神殿内では勝手が違ったと言う。
五人がニムロド時代のバアルに雷を落とした張本人だと知ったハミルカルは話も聞かずに襲い掛かって来たそうだ。
ハンニバルとハスドルバルの兄弟の力は強大で従える戦士型悪魔達の猛攻の前に、五人は撤退を余儀なくされてしまったと言う。
その後も何度か説得に赴いたそうだが、猛り狂うハミルカルは一切取り合おうとせぬまま時間は流れ、最初の破滅と同じように今から二年先で地球の生命は絶滅してしまったそうである。
ここまで聞いた善悪がハミルカルを横目で睨み付けながら言った。
「おい、ハミルカル…… おまいのせいで貴重な一回が無駄になったってよ! 何やってるのでござるか? せめて話だけでも聞いてバアル本人の意思位確認しなければ駄目でござろ?」
「は、はい、面目ない…… って今回は無かったんですよね? そのくだり…… 身に覚えもないのに怒られるのって不思議な気分ですよ?」
ハミルカルの声に何か思い当たったコユキがフェイトに聞いた。
「そう言えばレグバやオハバリさん、カーリーさん達って時間が戻った時に前の時間の記憶とかってどうなるの? 未来の記憶みたいな感じで覚えているのかな、それとも一旦リセットされるとか、は、覚えていてやり直してるんだから無いか?」
「いや忘れてますよ、何か不思議な感覚は有るんですけどね、ずっと既視感、デジャヴの中にいるような感じでしてね、カーリーだけは過去を観察する要領で前の回、つまり戻った時点の未来も見えるみたいでして、彼女が最後一緒だった我々五人に説明して回ってくれて、初めて私達は危機の回避を始めるんですよ、いつも同じです、多分ですが」
「なるほどねん、繰り返してるとは言っても自覚出来ているのはカーリーさんだけなのね、それも過去を観察して初めてわかるのか…… 過去を見て未来を知るって言うとなんかSFチックじゃないの、出来る女性って感じで素敵だわん」
フェイトは頷いて続けた。
「はい、確かにカーリーの力は我々六柱の中でも飛び抜けています、アムリタを飲んだせいで実体がない事を除けば技の多彩さ、広範な知識、優れた洞察力による深慮遠謀(しんりょえんぼう)の的確さ、どれをとっても大精霊や精霊王たちに君臨する精霊神の名に恥じぬ実力者ですよ、その上昼夜と融合した事で今や実体まで手に入れたのですから魔神や魔獣の王達と比べても勝る事は有っても劣ることは無いでしょうね」
ガネーシャとスカンダだけでなく赤べこのウトゥック、ラマシュトゥも胸を張って嬉しそうにしている。
シヴァは恥ずかしいのかそっぽを向いている、シャイなんだな。
フェイトは更に言葉を続けたのである。
「彼女のお陰で二回前の戦略を練る事も可能になったのです、彼女は三回前の滅びを迎えた後、肉体が消え失せたイーチとアルテミスの魔核に触っていたのです、彼女は触れた者や物に関係した記憶には深く潜る事が可能なのです、アルテミスの記憶には自分の兄弟たちが四千年前ニブルヘイムでルキフェルに再び仕えた事、イーチの記憶にはオルクスとモラクスが二千年前のダキアでルキフェルの代弁者と代行者として顕現していた事が知れたのです」