「おとうさま!このお花は、はるじゃないと咲かないの?」
「あぁ。少し先は長いが、咲いた時は一緒に見ような。」
元貴が見せてくれた人物と思わしき隣に、小さい女の子がいた。口振り的に娘だろうか。フリルがついたふわふわとした服を着ていてまさにお嬢様という言葉が似合う。
愛おしそうに娘の頭を撫でる姿に心の中の憎悪が顔を出す。涼ちゃんを奪っておいて、こんなに呑気に生きているなんて。
「ちょ、押すなって…!」
整えられた低木の後ろに身を隠していると、後ろから様子を伺おうとする元貴にぐいぐいと押される。あまり大きい声を出せないため、小声で注意すると微かに舌打ちが聞こえた。
「…ちっ、俺も見たいのに…。」
「じゃあこっち来て、位置交換しよ、っ!?」
仕方なく場所を譲ってあげようと屈んでいた腰をあげると同時に、バランスを崩した元貴が俺の腕を掴む。釣られて足を縺れさせた身体が地面に投げ出された。
「誰だ!?!?」
その瞬間、男の警戒する声が響き渡る。
「ばか若井!!!早く立って!」
低木から姿を現した元貴が俺の腕を掴み起き上がらせてくれる。元はと言えば元貴のせいなんだけど。
「百合乃、下がってなさい。」
娘を庇うように前に出てくる男に、今まで積み上げてきた怒りが爆発しそうになる。涼ちゃんを奪った憎い人物が目の前にいる、ただその事実だけでも感情の制御が効かなくなると言うのに。
「お前らは何なんだ!!!」
威勢よく叫ぶ男に、怒りを含んだ地を這うような低い声で元貴が呟く。
「は……?何それ、冗談でしょ?あれだけ嗅ぎ回っておいて俺達のこと知らないとか。」
思い当たる節があるのか、男の目が見開かれる。
「まさかお前らは」
冷や汗を垂らす男が言い終わるよりも早く、隣にいた元貴が男へと掴みかかった。強い衝撃で後ろへと倒れた身体に馬乗りになって、首に手をかけようとした元貴を制止する。
「まだダメだよ、元貴。俺たちと同じように苦しんで貰わなきゃ。」
誰も守る人が居なくなった娘へと歩みを進める。小さくて震えている身体はきっと脆い。目の前で大切なものを失う苦しさは想像を絶するだろう。それは俺らがよく分かっている。だから、味わせる。
「ダメだ!!!娘に手を出すな!!!!」
恐怖を浮かばせていた男の瞳が焦りに変わるのが分かった。そんな風に叫ばれては、こっちが悪者みたいに見えてしまう。これは悪でも善でもない。やられたことを返すだけだ。
「…っ、そんな目で俺のこと見ないでよ。でも仕方ないよね、君のお父さんがしたことだから。」
軽く押しただけで地面に倒れ込む小さな身体を押さえつけ、仰向けにさせる。恐怖でとめどなく溢れる涙が地面の色を変えていく。
「なんで、っ?おとうさまは、なにも悪いことしないよ…!」
まだ世の中を知らない頭では分からないのも仕方はない。それとも、この子には何も話していなかったのだろうか。汚いことを知らずに今まで育ってきたのなら尚更、殺しがいがある。
鞄から取り出したナイフを両手で強く握りしめ、娘の心臓へと刃先を向ける。
「痛いのは1回だけ、ね。」
そう呟きナイフを振り上げる。その瞬間、男の叫び声が耳に入った。
「娘に心臓を移植したんだ!!!!!!」
コメント
4件
ふえええ! ほんとに、、、もしかしてのもしかしてだけど、、、 心臓の持ち主、、、、、 いいとこなのにいいい! 正座して待っておきます👍
その移植した元の心臓の持ち主ってまさか⋯⋯!?いいとこで読めない。続きに期待です♪